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家出少女 佐藤こころ
第2話 アイスコーヒーを頼む理由
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雨脚が強くなり、バスは行ってしまった。
バス停に先ほどの一人の少女を残して。
「では、本業の始まりだな。いや~これがあるからこの寂びれたこの喫茶に通うのが止められない」
キラキラとした顔になる葉山のじいさん。
「追加注文してください」
ドンっとメニューをカウンターに乗せる。
「もちろん、本業開始ならコーヒーだけじゃ居座らない居座らない。ハムカツサンド、ハムは厚めでソースは今日は少なめで。検診に引っかかっちまってさ。塩分高いのはちょっと控えないといけないんだよ」
注文を告げると、葉山のじいさんは朝食はいらないっていう連絡を奥さんにラインで送りだす。
茫然と立ってる彼女にドアを開け声をかける。
「冷えますよ、どうぞ」
タオルを差し出すと先ほどの席にトボトボと少女は行き座った。
「どうして家出ってわかったんですか」
私をまっすぐと見つめ、少女は質問した。
「あなたみたいなのが定期的にここにはくるの。この辺で見たことがない子ということは、この街に住んでるわけではないでしょ。
そんな大きな鞄を持っているにも関わらず、始発のバスを利用するのに、わざわざ最寄りのバス停ではなくこんな辺鄙なバス停を選んだのは人目につかないため。
喫茶店に入ったのもバス停で待っている姿を万が一誰か知っている人間に見られるのを避けたい心理から。
喫茶店に人目を避けるように入ったものの、これから家出をするんだ資金は大事にしたいところ。だからこの店で一番安いネスカ……アイスブレンドコーヒーを選んだ。違いますか?」
ついつい、この喫茶最大の秘密ネスカフェをばらしてしまうところだった。
次々と私の口は彼女の様子から推理したことが出てくる。
これは私の昔からの悪い癖である。
普段は無口で無愛想な癖に、こんなときだけ無駄に饒舌となってしまうのだ。
「あってます」
私の推理を一通り聞き少女は驚愕の表情を浮かべた後、肯定した。
「私、勇気を出してずっと準備してきたのにどうしてあんな言葉かけたんですか?」
「あんな言葉。あぁ、家出が失敗するってことね」
すっかり推理の世界に入っていた私は彼女の言葉の意味をしばらく考えてようやく理解した。
「お金だって随分前から貯めてたし、今日だってそう。人の少ないこのバス停までわざわざ歩いてきたの。もう少しであのバスにさえ乗ってしまえば家出できていたかもしれないのに」
今回の家出という決断はこの少女にとっては重大なことでずっと前から準備してきたのだろう。
「家出をする理由はいろいろあると思うわ。あなたが家出したい理由は私にはわからない。でも一つだけ家出するにあたって絶対に気をつけないといけないことがある。あなたそれをわかってないでしょ?」
注文をしない客は喫茶アジフライの客ではない。
エプロンを外すと、私は少女の前の席にドカッと座り、眼鏡をはずし一つにくくった髪をほどく。
すると、喫茶アジフライのさえない女亭主の顔から第三者いわく好奇心に目をワクワクと光らせた目を引く相談屋のしのぶとなる。
「ここまで誰にも見られなかったし。東京まで行けばきっと見つからなかった……」
少女は絵空事を語る。
「仕方ないから教えておくわ。家出するにあたって絶対に気をつけないといけないことはただ一つ」
少女は私をみた。
『家出は絶対に1回で成功させないといけない』
「何よそれ。そんなの当たり前のことじゃない」
当たり前かつ、家出の絶対的ルールの前に少女は頬を上気させ怒りで声を荒げた。
偉そうに言うのがそんなことなのかと言わんばかりだ。
「そう、当り前。でもあなたはその一番大事な当たり前のことができないから呼びとめたの。一度失敗したらどうなると思う? 相手も馬鹿じゃない。次はそう安々と逃げれなくなる。だから家出は」
私の口角が自信ありげに上がるのが自分でもわかる。
迷いのあった彼女の瞳が私を見つめる。
『絶対に1回で成功させないといけない』
少女の瞳が私がいい切ったことで自信がなくなり揺らぐ。
この客もらいました。
「どうして、私が失敗するって決めつけるの?」
「それは簡単、未成年でしょ」
「何? 警察にでも通報するつもり?」
「通報? そんなことしないわ。あなたは喫茶アジフライの本業の大事なお客様になるの。通報なんかしない。あなたの家出私が成功させてあげる」
バス停に先ほどの一人の少女を残して。
「では、本業の始まりだな。いや~これがあるからこの寂びれたこの喫茶に通うのが止められない」
キラキラとした顔になる葉山のじいさん。
「追加注文してください」
ドンっとメニューをカウンターに乗せる。
「もちろん、本業開始ならコーヒーだけじゃ居座らない居座らない。ハムカツサンド、ハムは厚めでソースは今日は少なめで。検診に引っかかっちまってさ。塩分高いのはちょっと控えないといけないんだよ」
注文を告げると、葉山のじいさんは朝食はいらないっていう連絡を奥さんにラインで送りだす。
茫然と立ってる彼女にドアを開け声をかける。
「冷えますよ、どうぞ」
タオルを差し出すと先ほどの席にトボトボと少女は行き座った。
「どうして家出ってわかったんですか」
私をまっすぐと見つめ、少女は質問した。
「あなたみたいなのが定期的にここにはくるの。この辺で見たことがない子ということは、この街に住んでるわけではないでしょ。
そんな大きな鞄を持っているにも関わらず、始発のバスを利用するのに、わざわざ最寄りのバス停ではなくこんな辺鄙なバス停を選んだのは人目につかないため。
喫茶店に入ったのもバス停で待っている姿を万が一誰か知っている人間に見られるのを避けたい心理から。
喫茶店に人目を避けるように入ったものの、これから家出をするんだ資金は大事にしたいところ。だからこの店で一番安いネスカ……アイスブレンドコーヒーを選んだ。違いますか?」
ついつい、この喫茶最大の秘密ネスカフェをばらしてしまうところだった。
次々と私の口は彼女の様子から推理したことが出てくる。
これは私の昔からの悪い癖である。
普段は無口で無愛想な癖に、こんなときだけ無駄に饒舌となってしまうのだ。
「あってます」
私の推理を一通り聞き少女は驚愕の表情を浮かべた後、肯定した。
「私、勇気を出してずっと準備してきたのにどうしてあんな言葉かけたんですか?」
「あんな言葉。あぁ、家出が失敗するってことね」
すっかり推理の世界に入っていた私は彼女の言葉の意味をしばらく考えてようやく理解した。
「お金だって随分前から貯めてたし、今日だってそう。人の少ないこのバス停までわざわざ歩いてきたの。もう少しであのバスにさえ乗ってしまえば家出できていたかもしれないのに」
今回の家出という決断はこの少女にとっては重大なことでずっと前から準備してきたのだろう。
「家出をする理由はいろいろあると思うわ。あなたが家出したい理由は私にはわからない。でも一つだけ家出するにあたって絶対に気をつけないといけないことがある。あなたそれをわかってないでしょ?」
注文をしない客は喫茶アジフライの客ではない。
エプロンを外すと、私は少女の前の席にドカッと座り、眼鏡をはずし一つにくくった髪をほどく。
すると、喫茶アジフライのさえない女亭主の顔から第三者いわく好奇心に目をワクワクと光らせた目を引く相談屋のしのぶとなる。
「ここまで誰にも見られなかったし。東京まで行けばきっと見つからなかった……」
少女は絵空事を語る。
「仕方ないから教えておくわ。家出するにあたって絶対に気をつけないといけないことはただ一つ」
少女は私をみた。
『家出は絶対に1回で成功させないといけない』
「何よそれ。そんなの当たり前のことじゃない」
当たり前かつ、家出の絶対的ルールの前に少女は頬を上気させ怒りで声を荒げた。
偉そうに言うのがそんなことなのかと言わんばかりだ。
「そう、当り前。でもあなたはその一番大事な当たり前のことができないから呼びとめたの。一度失敗したらどうなると思う? 相手も馬鹿じゃない。次はそう安々と逃げれなくなる。だから家出は」
私の口角が自信ありげに上がるのが自分でもわかる。
迷いのあった彼女の瞳が私を見つめる。
『絶対に1回で成功させないといけない』
少女の瞳が私がいい切ったことで自信がなくなり揺らぐ。
この客もらいました。
「どうして、私が失敗するって決めつけるの?」
「それは簡単、未成年でしょ」
「何? 警察にでも通報するつもり?」
「通報? そんなことしないわ。あなたは喫茶アジフライの本業の大事なお客様になるの。通報なんかしない。あなたの家出私が成功させてあげる」
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