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家出少女 佐藤こころ
第3話 ハムカツサンドがおいしい理由
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「まぁ、今日はハムカツサンド食べながら話しましょ。ソースは少なめだから本来のおいしさではないけれど。そこそこ食べれる」
「私こんなところでご飯食べるような余分なお金は……」
「知ってる。こういう時は、そこに座ってる葉山のじいさんが自分の注文したメニューを半分分けてくれるの。あのじいさんの奢りだから、量は少ないけど食べるといいわ」
葉山のじいさんは少女にヒラヒラと手を振り、少女は軽く会釈した。
お歳暮でもらったボンレスハム、なんで今日に限っていつものスーパーで買うペラッペラのハムではなく、お歳暮でもらうような上等なハムがあるって知ってたんだか。
毎回、葉山のじいさんは冷蔵庫の中身を見透かすかのように、一番いいメニューをズバリと選ぶ。私の昼食と夕食用だったのに。
でも、客が頼めば提供するいわゆるラッキーメニューが今日はハムカツサンドだから頼まれた以上提供せざるを得ない。
大奮発して2cmほどに切ったハムを卵液にくぐらせ、小麦粉、パン粉の順で準備する下ごしらえが終わるころにはその間に温めておいた油を入れたフライパンがいい温度になっている。
パン粉の残りをぱらっとおとしてジュワっと音がたったら。
ハムカツをはねないようにゆっくりといれるとジュワッといい音を立てる。
揚げている間に、パンにはバターを塗り一度トーストしておく。レタスを2枚飾り程度に挟む用に準備した後はソース作りだ。
とんかつソースにウスターソース少々を混ぜる。もう一つマヨネーズに辛子を入れて辛しマヨを作る。
ここまで準備できたら、一度フライパンからハムカツを引き上げて、油の温度を上げ二度上げする。
カラッとさせるためにはこのめんどくさい工程は外せない。
トーストの上にカラリと上がった厚切りのハムカツ。その上に特製ソースとマヨネーズをこれでもかとかけて……あっ、いけない。今日はソース少なめだったけどかけちゃったものはしょうがない。
レタスを2枚乗せでパンでサンドする。
このカットが一番大事だ。
ザクっと1回三角になるようにきれば完成である。
付け合わせのトマトなんかはない。
ハムカツサンドと頼まれればハムカツサンドだけを提供するのが喫茶アジフライ流なのだ。
通常の皿ではなく、こんなとき用の普段より小さめの皿に一つずつ盛りつけて、一つを葉山のじいさんに。
もう一つは今回のお客である少女のテーブルに置く。
食べながら話をしない主義の私は少女が食べ終わるのを待つ。
どうせ客なんかこの時間もう他にこないのだから。
「お行儀よくかじらないのがおいしく食べるコツ」
葉山のじいさんがよけいなことを言う。
でも、それにならって少女が大きな口をあけてハムカツサンドにかぶりついた。
ザクっとした音がこちらまで聞こえる。
指にソースがついてしまったのをなめとって最後の一口まで無言で一気に食べる様は見ていて気持ちがいい。
お冷を最後に一気に飲み干したのをみて、話を始めることにした。
「このハムカツ代はあそこにいるじいさんがあなたの悩み相談している内容を聞く代金みたいなものだから。ところであなたの名前は?」
腹が膨れたことで安心したのかもしれない。
ポツポツと話し始めた。
「佐藤こころです」
「歳は?」
「13歳」
アジフライのマークが入ったペーパーナプキンにサラサラとその情報を書いていく。
「あなた本当についてるよココによってさ」
「さっきから何なんですか?」
ムッとした顔と口調に切り替わる。
「私こんなところでご飯食べるような余分なお金は……」
「知ってる。こういう時は、そこに座ってる葉山のじいさんが自分の注文したメニューを半分分けてくれるの。あのじいさんの奢りだから、量は少ないけど食べるといいわ」
葉山のじいさんは少女にヒラヒラと手を振り、少女は軽く会釈した。
お歳暮でもらったボンレスハム、なんで今日に限っていつものスーパーで買うペラッペラのハムではなく、お歳暮でもらうような上等なハムがあるって知ってたんだか。
毎回、葉山のじいさんは冷蔵庫の中身を見透かすかのように、一番いいメニューをズバリと選ぶ。私の昼食と夕食用だったのに。
でも、客が頼めば提供するいわゆるラッキーメニューが今日はハムカツサンドだから頼まれた以上提供せざるを得ない。
大奮発して2cmほどに切ったハムを卵液にくぐらせ、小麦粉、パン粉の順で準備する下ごしらえが終わるころにはその間に温めておいた油を入れたフライパンがいい温度になっている。
パン粉の残りをぱらっとおとしてジュワっと音がたったら。
ハムカツをはねないようにゆっくりといれるとジュワッといい音を立てる。
揚げている間に、パンにはバターを塗り一度トーストしておく。レタスを2枚飾り程度に挟む用に準備した後はソース作りだ。
とんかつソースにウスターソース少々を混ぜる。もう一つマヨネーズに辛子を入れて辛しマヨを作る。
ここまで準備できたら、一度フライパンからハムカツを引き上げて、油の温度を上げ二度上げする。
カラッとさせるためにはこのめんどくさい工程は外せない。
トーストの上にカラリと上がった厚切りのハムカツ。その上に特製ソースとマヨネーズをこれでもかとかけて……あっ、いけない。今日はソース少なめだったけどかけちゃったものはしょうがない。
レタスを2枚乗せでパンでサンドする。
このカットが一番大事だ。
ザクっと1回三角になるようにきれば完成である。
付け合わせのトマトなんかはない。
ハムカツサンドと頼まれればハムカツサンドだけを提供するのが喫茶アジフライ流なのだ。
通常の皿ではなく、こんなとき用の普段より小さめの皿に一つずつ盛りつけて、一つを葉山のじいさんに。
もう一つは今回のお客である少女のテーブルに置く。
食べながら話をしない主義の私は少女が食べ終わるのを待つ。
どうせ客なんかこの時間もう他にこないのだから。
「お行儀よくかじらないのがおいしく食べるコツ」
葉山のじいさんがよけいなことを言う。
でも、それにならって少女が大きな口をあけてハムカツサンドにかぶりついた。
ザクっとした音がこちらまで聞こえる。
指にソースがついてしまったのをなめとって最後の一口まで無言で一気に食べる様は見ていて気持ちがいい。
お冷を最後に一気に飲み干したのをみて、話を始めることにした。
「このハムカツ代はあそこにいるじいさんがあなたの悩み相談している内容を聞く代金みたいなものだから。ところであなたの名前は?」
腹が膨れたことで安心したのかもしれない。
ポツポツと話し始めた。
「佐藤こころです」
「歳は?」
「13歳」
アジフライのマークが入ったペーパーナプキンにサラサラとその情報を書いていく。
「あなた本当についてるよココによってさ」
「さっきから何なんですか?」
ムッとした顔と口調に切り替わる。
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