(仮)世界の名を持つ姫

碧猫 

文字の大きさ
16 / 32

謎な孵化

しおりを挟む

 試飲会の食器選びをするエレなの。イヴィが候補を出してくれているから、エレがその中から選ぶ。とっても簡単なお手伝いなの。

 まず一つ目は、真っ白いシンプルな食器。ちょっと味気ない気もするの。でも、今回の試飲会がどんな感じなのかっていうのがあると思う。それに合わせて、食器も選ぶの。

 ここについてからそう決めたの。

「ゼロ、試飲会はどんな感じなの?」

「楽しく?柔らかく飲みやすいを重視した紅茶の試飲」

「ふみゅ」

 次は会場の装飾とかを見るの。会場の雰囲気も大事だと思うから。

 雰囲気は、ちょっぴり可愛らしい。でもシンプル。可愛らしいシンプル。白とピンクと空色。

 なら、食器もそれで合わせるの。

 という事で、食器選びに戻るの。

 一つ目の、真っ白いシンプルな食器は、今回の雰囲気よりシンプルすぎるの。だから、またの機会にご参加くださいなの。

 二つ目は、派手な花柄。黄色の食器。もっと派手な雰囲気だったら、これで良かったと思うけど、今回は雰囲気に合わないから、またの機会にご参加くださいなの。

 三つ目は、薄い空色の食器。金色の線が入っている。底が薄いピンク。こ、これは、今回の雰囲気に良いと思うの。今回はこの子で決まりました。

 他の子も、雰囲気に合わなかっただけなので、気を落とさず、またの機会にご参加ください。

「これなの」

「承知しました」

「エレシェフィール、次はお菓子選んでくれ」

 紅茶のお供なら、エレはケーキ一択なの。ケーキの中でも、フルーツタルト。

「フルーツタルトなの」

「本当に好きだな」

「ゼロの手作りなの」

 ゼロはお菓子作りが得意なの。お料理自体も得意なの。

 だから、とっても楽しみ。

「これ以外にお手伝いがあるの?」

「エレシェフィールが手伝える事はこのくらいだな。ここまで距離あるから、少し休憩してけ。紅茶淹れるから」

「ふみゅ」

 フォルを待たせてるから、早く帰りたいけど、途中で疲れて歩けなくならないように、休憩は大事なの。

 エレは、ひと休憩してから、フォルのところへ帰るの。

      **********

 フォルのところ帰れたのは、夜なの。もう眠い。

「おかえり」

「ただいまなの。眠い。フォル、寝たい。おやすみ。でも、お風呂……フォル、入れて」

 眠くて動きたくない。

「えっ……それは一人で」

「ゼロは呆れながらやってくれるの」

「……わ、分かった」

「フォル、無理なら断って良いぞ。本当に眠い時のエレシェフィールは、とことん何もせず甘えてくるから」

 ゼロがなんだか、エレを悪く言ってる気がするの。でも、眠いから気にしない。眠い時って、何も考えたくないの。

「……やるよ。エレシェフィールの世話、いつもゼロに任せっきりだから。でも、ゼロ、一緒じゃだめ?」

「良いけど、俺いて何か変わんのか?俺に任せるなら、変わるが」

「できなかったら手伝ってもらうかもだけど、全部任せはしないよ。ゼロと一緒が良いのは、手伝ってもらえるとかじゃなくて、一人だと……その……」

「……昔の事か?」

 昔?

 ちょっと気になるの。

「ううん。普通に恥ずかしい。だって、初恋で、今もずっと好きな相手だよ?この年齢になっても、まだ平気なわけないから」

「ああ。そっちか。エレシェフィールを相手にするなら、そういうのは慣れねぇとだろうな」

「えぇ。ちょっと無理かも」

「ぴゅにゃ⁉︎ふぇぇぇん」

 フォルにきらわれたかも。フォルがエレをむりって言うの。きらわれたかも。

「……毎日でも一緒に入って良いです。エレシェフィールがそうしたいなら、そうさせてください」

「みゅ?なんか、エレが言わせてる感があるの」

「……そんな事ないよ。ほら、眠いなら、早く入って寝ようよ」

「今日は人肌が恋しい気分だから、ゼロとフォルとフィルと寝るの」

「フィルは今日帰って来れないって」

 それは仕方ないの。エレは、フィルは諦めることにするの。ゼロとフォルで我慢するの。

「じゃあ、ゼロとフォルで我慢するの」

「そうしてくれ。フォル、エレシェフィールを風呂入れよう」

「うん……」

 エレはお風呂入ってきてから、明日の朝までお休みなの。エレのお風呂は内緒なの。

      **********

 おはよ。エレは元気な朝なの。お隣にゼロとフォル。エレ何してこうなったんだろう。眠すぎて覚えてないの。

「おはよ……エレシェフィール」

「ふ、ふみゅ。お、おはよ。なの」

 エレ、きっと、眠くてここで寝ちゃっただけなんだと思うの。それ以外は何もないと思うの。きっとそうなの。そうだと信じたいの。

「ぷみゅ?なんだか生あったかいの」

「……なんで?」

「ふぇ?ふぇにゃぁ⁉︎にゃんで⁉︎」

 何もしてなかったのに。何もしてないのに生まれたの。二匹も生まれたの。

 深緑の小型龍は、きっとイヴィなの。桃色の小型龍はきっとリリフィンなの。今回本当に意味不明。エレは楽しく食器選びをしていただけなの。その後、フォルが寂しがっているって思って、エレも疲れてるって思って、すぐに帰ったの。
 帰った?フォルに会いに行った?

 なのに、朝起きたら、生まれてるの。本人いないのに生まれてるの。

 謎なの。とっても謎なの。この謎はどうやって解決すれば良いのか分かんないの。

「……また僕じゃない」

 フォルが拗ねそうなの。で、でも、エレは、エレにはどうする事もできないの。エレが、誰もを産みたいって言ってそうなるものでもないから。

 だから、そんな、残念そうな顔をされても、拗ねようとしていても、エレがどうする事もできないの。

 エレはどうすれば良いんだろう。どうすれば、フォルが笑顔になってくれるんだろう。

「エレシェフィール、次は名前どうするんだ?」

 ふにゃ⁉︎

 考えてなかったの。どうするか考えないと。生んだからには、大事にするの。可愛がるの。そのためにも、名前考えるの。

「ぴにぃときゅりゅ。二人とも、ご主人様に会いたいでしょ?会いに行って良いよ」

 きっとご主人様の側にいたいと思うの。だから、イヴィとリリフィンのところへ行かせてあげるの。その方が、人格形成だっけ?にも良い気がするの。

「フォル、今日も魔法研究するの。ゼロは忙しそうだから、二人で……ぷみゅぅ……三人の方が……」

 エレが安心するの。でも、フォルは、二人だけの方が良いかもしれないの。

「ゼロ、暇?」

「そうだな。俺が準備する分は終わってるから、エレシェフィールの相手してても大丈夫だ」

「……帰る?」

「今日まではいる。その方が良いだろ?」

「うん。その方が良い。なんならずっとでも良いよ。というか、この際みんなで一緒に暮らさない?その方がエレシェフィールも安心するんじゃないかな?」

 エレは……みんなと一緒の方が楽しいとは思うけど、安心は良く分かんない。でも、フォルと一緒にいるのは安心かも。

 フォルは、きっと見ていないとまた無理するから。だから、この際、誰かが必ず面倒見れるように、一緒に暮らすのもありなんじゃないかなって思うの。

 ……みゅ。良い事思いついちゃったの。

「ゼロ、エレが、みんなで一緒に暮らせるように言ってくるの。お家とお部屋の準備は、任せるの。ふっふっふ」

 エレが一人で言いに行けば、フォルに知らせずに、フォルの面倒見る隊を結成できるの。

「でも、迷子にならない?」

「みゅ⁉︎ふにゃぁ」

「りゅりゅに頼めば良いだろ。それなら迷子になる心配はないから」

「ふみゅ。りゅりゅにお願いするの。それで、みんなに言いに行くの。早速お出かけしてくるの。フォル、エレは遅くなっちゃうかもだけど、良い子でいるの」

「……うん」

 ちょっと寂しそうだけど、ゼロがいるから大丈夫だと思うの。

 という事で、エレはフォルのためにも、面倒見る隊を結成しに行くの。

 いってきます。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...