二つの世界を彷徨う銀の姫

碧猫 

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二十二の世界 掃除

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 ようやく長期休みだ。と言っても、家の掃除で忙しいのは変わりないのだが。

「シェフィ、雑巾持ってきたが何をすれば良い?」
「雑巾の使い方?それは」

 私の言い方の問題なのだろうか。シェフィに丁寧に雑巾の使い方を説明された。

「っていう感じかな」
「そうじゃなくて、どこを掃除するのかの話だ」
「床」
「分かった」
「掃除の仕方も?」
「雑巾で拭けば良いんだろう」

 そのくらい分かるだろう。なぜ、それを聞くんだ。

「……やってみて」
「ああ」

 普通にいつも通り雑巾で床を拭く。

「それで綺麗になっているとでも?」
「綺麗になっているのではないのか?」

 掃除しているのに汚くなるなんて事はないだろう。綺麗になっているはずだ。

 多分、きっと、そうであると信じたい。

「水で洗ってちゃんと絞る。雑巾が汚れるたびにやってよ」
「そんな面倒な事やらないといけないのか」
「面倒とか言わずにやって。ジシェは身長あるんだから高いところやって」
「……」
「まさかやり方分からないとか言わないよね?」
「……」

 そのまさかだと思う。ジシェンも今回は仲間か。

「プシェ、アルバム見つけた。とりあえず、記憶の手がかりになりそうなものはまとめておくね」
「助かる」

 シェフィがほぼ一人で掃除しているな。やろうとは思っているのだが、あまり力になれていないという感じがしている。

「シェフィ、床これで良いか?」
「うん。次はドアとか窓だね。はい、雑巾。窓は後でやっとくからドアやって」
「分かった」

 ドアも同じような要領でやれば良いのだろうか。

 ん?見知らぬ傷がある。昔の傷なのだろうか。

「シェフィ、ドアに傷がある」
「昔のプシェが遊んだのじゃない?」
「そうなのだろうか?全然覚えていない」

 記憶がないのだから当然と言えば当然なのだが、思い出す事もないのは少し残念だ。

「この部屋は終了。今日は終わりにする?」
「そうだな」
「じゃあアルバムタイム」

 それそんな楽しみか?

 シェフィとジシェンと一緒に昔のアルバムを開いた。

 やはり記憶にないものしかない。

「これ、初等部のプシェだ。ドレス可愛い」
「パーティでもしていたのか?」
「うん。プシェの誕生日パーティ。僕と一緒に踊ったんだよ」
「そうだったのか」
「プシェの踊り可愛かった。何度も足踏まれて痛かったけど」
「それは、すまない」

 踊りは今は苦手ではないのだが、昔は苦手だったんだな。

「それが原因で、プシェが頑張って練習してくれたから次の年には足踏まれなかったから良いけど」

 苦手ではないのはそういう理由だったのか。
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