二つの世界を彷徨う銀の姫

碧猫 

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十一の世界 一の世界の学園

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 午前中のテストはまずまずといったところか。

 今は昼休み。いつものようにジシェンと一緒に過ごしている。

「シェフィルから何か聞いたのか?」
「はい。殿下とシェフィの事を少々」
「そうか。で、今日はシェフィルに弁当を作って貰ったと」

 やはり見れば分かるか。私が作ればもっとぐちゃぐちゃになっているからな。

「はい」
「シェフィルから連絡が来た。「プシェと同棲する事になった。二人っきりで毎日同じ屋根の下過ごすなんて緊張し過ぎて耐えられないよ。ジシェン、どうにかして」と」

 ……そんなに緊張していたのか。まさか、あの豪華な食事は

「何か変な事しなかったか?」
「えっと、昨日の夕食が豪華すぎた事でしょうか」
「緊張だろうな。済まない、俺の幼馴染が」
「いえ、夕食はいつも以上に美味しかったので得しかありませんでした」

 そう。私にとっては得以外はないんだ。だが、シェフィが無理してやっていないのか心配になるだけで。

「そうか……オプシェ、お前にはにはいっておかなければならない事がある」
「なんでしょうか?」
「俺は今日で学園を辞める。もう転校届も出しておいた」
「理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ああ。シェフィルと相談して向こうで暮らすように誘われたんだ」

 ジシェンは王族なのだが離れて大丈夫なのだろうか。こっちの世界の事は気になるが決めた事ならやめる気は無いだろう。

「こっちの事は心配しなくて良い。俺は王位継承権を持っていないからな」
「良いのですか?王族という身分を捨てても」
「その方が気楽だからな」
「そうですか」
「オプシェはどうするんだ?」

 こっちの世界へ行き来するにしても学園を続ける必要はそこまで感じていない。
 学園を辞めて片方だけ学園生活をしながら、時間がある時にこっちの世界へくるくらいがちょうど良いのかもしれない。

「学園は辞めます。その方が時間が取れるので」
「今まで朝から夜までずっと学園で授業受ける生活だからな」
「はい。なので片方だけ学園に通う事にします」
「俺も向こうに編入しようかな。シェフィルと一緒に騎士科で学ぶのも楽しそうだ」

 少し羨ましいな。私も騎士科に行ければ良いのだが、そんな剣の腕なんてない。護身術すらできないからな。

「オプシェ、退学届一人で出し行けるか?」
「えっと、分かりません」
「なら一緒に出しに行くか」
「急なのに大丈夫でしょうか」
「大丈夫だろ。俺も昨日出してきたし」

 それなら良いんだが。だが、用意するものすら何もできていないのに今日中に間に合うだろうか。

「じゃあ、これ」
「えっ」
「シェフィルがオプシェも辞めるかもしれないからって用意していた」

 これは準備が良すぎるだろう。そのおかげで準備に時間が取られずに済むんだが。
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