星月の蝶

碧猫 

文字の大きさ
上 下
1 / 42
0章 星が選ぶ始まりの未来

プロローグ 星月の御巫と黄金蝶

しおりを挟む

 この世界は、歪んでいる。世界は少しずつ歪んでいっていた。それが、顕著に出ているのが、だ。

      **********

 古く、ボロボロの家。少女は、そこで暮らしていた。

「ふきゃ⁉︎」

 少女の家には、石や短剣が飛んでくる事が日常茶飯事だ。

 現在、世界の守護を任されている種族、神獣から正式に御巫と認められた、エクシェフィーの御巫夫婦。

 その血縁者である少女だが、神獣が定めた御巫の素質が見られないという理由で、冷遇されている。

「みゃきゃ⁉︎」

 短剣の刃が、少女の頬を掠める。石で壊された壁から飛んできたようだ。

「ふぁぁ……」

 安全な場所などない少女は、眠くても寝る事ができない。うとうとしながらも、起きている。

「エレ、朝飯持ってきた」

「みゅ。おはよ」

 少女の家に来る、先端が銀髪の青黒髪の少年。

 彼は、本来であれば、少女の片割れとして御巫になっていた。少女の家族のようなものだ。

「いつもありがと」

「気にすんな。俺にとって、エレは可愛い妹のようなものなんだ。遠慮せず、頼ってくれ」

「うん」

 青黒髪の少年が、少女の頬に触れる。

「また怪我してる」

 血が出ている頬を、青黒髪の少年が、ぺろっと舐めた。高位吸血種である青黒髪の少年が舐めた傷は、治っている。

「ありがと」

「眠そうだな。これ食べて少ししたら寝ろ。俺が側にいるから」

「うん」

 少女が朝食を食べている間に、青黒髪の少年が片付けをする。

「今日からは、しばらく一緒にいれると思う」

「うん。ゼロが作ってくれるお弁当が一番」

「それは作り甲斐があるな」

「ごめん。会議期間終わったから、やっと外出許されたんだ」

「お疲れ様、フォル」

 少女と青黒髪の少年が話していると、青緑髪の少年が、急いで家を訪れた。

「ここは我ら神獣の地だ!」

「御巫様の汚点は出てけ!」

「御巫様に変わって、我々が制裁を与えてやる!」

 家の外が騒がしい。また、少女を追い出そうと、神獣達が集まっているようだ。

「……ちょっと外行ってくる」

 青緑髪の少年が、外へ出ようとした時、外から聞こえた声に立ち止まった。

「貴様ら何をしてる。ここは俺とフォルで本家から買った別荘だ。勝手に入ってくるな!」

「げっ⁉︎黄金蝶様⁉︎」

「黄金蝶様には敵わない。出直すぞ!」

「二度とくるな!」

 神獣達が逃げるのが、家の中から見える。

「大丈夫だったか?いきなり大声が聞こえて怖かっただろう」

「ううん。ありがと、ルーにぃ。それと、そこ入り口じゃないから」

 緑髪の青年が、壊れている壁から家へ入る。
 
「忘れてるようだが、ここがドアのあった入り口だ。それより、家の修繕をしなくてはな。力仕事であれば任せろ」

「修繕しても、またおんなじ事になるだけだろ。もっと、他の対策を考えないと」

「……ありがと。でも、こんなにいっぱい迷惑ばかりかけられないよ。私、何もできていないのに」

 少女は、申し訳なさそうに俯いてそう言った。

「だから気にしなくて良いって」

「でも……」

「何も目的はないから、そうやってずっと悩んでいるんだよ。少しは自分のやりたい事でも考えてみたら?」

「そんなの、ないよ。私は、こうして家があるだけで十分だから」

 こうして暮らしているうちに、少女は何も望まなくなった。少女は、全てを諦めた目をしている。

「そうだな……なら、御巫を目指してみるのはどう?あんな役割を持つ御巫じゃない。本来の御巫に」

「えっ」

 少女は、目を見開き、顔を上げた。

「でも、私」

「言い方が悪かったか。僕の番になってよ。この歪みを元に戻さないといけないから、道は遠いだろうけど。その時が来たら、僕は、君らを星月の御巫として選びたいんだ。もちろん、強制はしないよ。その歪みを正して、元の御巫の役目を全うできるようにするなんて、今は夢物語だ。御巫になりたいと思っても、遠い未来を信じられないなら、断った方が良いだろう」

 断っても良い。その選択肢を出してくれているが、少女の答えはきっと、記憶にないほど昔から決まっている。
 だが、今はそれを決断できない。

「まぁ、すぐに答えを出すのは難しいかな。とりあえず、結婚式やってみない?どんな感じなのかって。御巫になるって事はそういう事だから。それから決めるっていうのはどうかな?」

「……みゅ……するの」

「じゃあ、準備しようか。本家に行って、服を着替えてとか」

「みゅ。行ってきますなの」

 少女達は、家を出て、本家へ向かった。

      **********

 本家の子息は、少女を保護している。少女が本家へと足を踏み入れたとしても、何も言わない。それどころか、少女を歓迎する。

「良く来たな。結婚式を開きたいと連絡が来て、急いで用意した。似合うと良いのだが」

「オルにぃ様が選んだなら大丈夫だよ。エレのドレスの方も頼んで良いかな?僕は自分の方の準備しないとだから」

「分かった。エレ、向こうで着替える」

「みゅ。任せたの」

 少女は、ドレスに着替えるため、本家の長男について行った。

      **********

 ドレスに着替え、いよいよ結婚式。と言っても、結婚式の体験だ。

「黄金蝶の結婚式をやる。段取りは知っているか?」

「知らない」

「指示通り動けば良い。あとは、あの二人に任せておけば」

「みぃ。ありがと、オルにぃ」

 少女は、本家の長男にエスコートされて登場する。

「……」

 会場(代わりの部屋)へ入ると、正装姿の二人に目を奪われた。

「綺麗だよ。僕らのお姫様」

「似合ってる」

「二人も、すてき、なの」

 少女は、恥ずかしがりながら、そう言った。

 少年達が、少女に手を差し伸べる。

「このくらいの作法は知ってるかな?」

「うん」

 少女は、二人の指の先にちょこんと触れる。

「星の御巫、エンジェリルナレージェ・ミュニャ・エクシェフィーは、月の御巫、ゼーシェリオンジェロー・ミュド・ロジェンドと共に、黄金蝶、フォル・リアス・ヴァリジェーシル様に身も心も捧げ、寄り添う事を誓います」

「月の御巫、ゼーシェリオンジェロー・ミュド・ロジェンドは、星の御巫、エンジェリルナレーゼ・ミュニャ・エクシェフィーと共に、黄金蝶、フォル・リアス・ヴァリジェーシル様に身も心も捧げ、寄り添う事を誓います」

「黄金蝶、フォル・リアス・ヴァリジェーシルは、星の御巫、エンジェリルナレージェ・ミュニャ・エクシェフィーと、月の御巫、ゼーシェリオンジェロー・ミュド・ロジェンドを自らの御巫とし、永遠の愛を与える事を誓います」

 本当の結婚式でしかできない儀式がここであるが、今回は体験という事で、その儀式を省いた。

「では、これより、最後の儀、記憶絆の儀を行う」

「みゅ?」

「記憶絆は、長く一緒にいるほど強く光る。結婚には、一定の強さにならないとなんだ。強い分には良いんだけどね」

 本来の御巫は、神獣のレア種、黄金蝶と寄り添う事を許された相手。だが、正式に結婚できるまでには、一定期間一緒にいたという事実がなければならない。

 それを証明するのがこの、記憶絆の儀だ。

 少女達は、特殊な魔法の道具に手をかざす。すると、光は、部屋を覆い尽くしてもまだ足りないくらいになった。

「みゅ?これ、良いって事なの?ていうか……みゅ」

「……」

「……」

 記憶絆の儀は、稀に、忘れた記憶を呼び覚ますという効果が発動する。

 少女達は、忘れていたはずの記憶が蘇った。

「どうした?儀式はこれで終わりだが、披露宴が残っている」

「……うん」

「……」

「披露宴行くの。二人とも早くして」

 少女は、少年達を引っ張り、披露宴へ向かった。

      **********

 披露宴は本番にとっておくようにと、会場に着いて終了だ。

「……エレ、御巫の話だけど」

「昔がそうであっても、今は認められないの。だめって言われるの。そんな中、隠れているなんてや。私達、絶対に御巫になってみせる。それで、誰にも邪魔されないらぶ生活にしてみせるから。ついでに、みんなに世界を破壊させない。で、みんなで一緒にいるの」

「そうだな。もう、みんながあんな悲しい顔しなくて済むように、エレが失敗した時に怯えずに済むように。そうなれる世界を作る……って、流石に夢見過ぎか」

 記憶絆の儀で、忘れていたはずの記憶が蘇ったからこそ、少女と青黒髪の少年は、ゴールの見えない、果てしなく遠い道を選んだ。

 奇跡でも起きない限りは達成できなさそうなその選択を、少女達は、笑顔で答えた。

「良いと思うの。どれだけおっきな事でも、やりたいって思わないと始まらないし、できるって思ってがんばる事が一番意味あると思うの。それで、救われる人もいると思うの」

「うん。そうだね。僕も協力する。の一人として。君らを想う一人として」

 三人で手を重ねる。少女達種の持つ魔力の指輪が姿を見せる。

「心は常に、君らと共に」

「みゅ。常にゼロとフォルと共に」

「エレとフォルと共に」

 指輪が淡い光を出した。

 これから先、何があろうと、心は繋がっている。それを誓う儀。

「でも、どうするの?私達、神獣さん達を敵に回すって事になるよ?しかも表立って」

「なんとかなるでしょ。今考えなくても。というか、種族に関しては隠していれば良いだけだよ」

「そうだな。エレが御巫になるって事で敵に回していると思うが」

「誰を敵に回すかより、どうやって今回の世界で生きるか考えない?下手に動いて、バレないように。それと、以前の世界を知る協力者も欲しいとこだ」

「それなら原初の樹が良いの。それに、同族のみんなも」

「これから知り合った誰かとか、今知り合っている誰かとかにも、いずれは話せると良いな。それで受け入れて欲しいけど、難しいか」

 少女達の記憶に関する話は、今を生きる人々にとっては、到底信じられないような話。それを受け入れてくれるともなれば、相当少女達を信用している相手か、それを初めから知っている相手だけだろう。

「……オルにぃ様なら、信じてはくれるだろうね。今は話せないけど」

「オルにぃにも立場があるからな。こんな話を聞けば、本家の長男として対処しなければならなくなるだろうな」

「うん。僕もオルにぃ様もそんな事望まないと思う。他のにぃ様達も、立場上無理そうかな。ルーは……」

 青緑髪の少年が、言葉を切って俯いた。

「そんな事で関係が崩れるのはないと思うけど、それが怖いなら言わなくて良いと思うの。それに、今言っても、巻き込まれるだけだから。フォルは、初めてできた友達って呼べる相手を大事にしてあげて?」

「うん。ありがと」

「エレって、時々素の時でも*姫出てくるよな」

「むぅ。なんだか馬鹿にされてる気分なの。エレは*姫なんだから、当然……みゃ⁉︎私は、*姫なんだから当然なの」

 少女は、腰に手を当てて、怒っているというのを見せて、そう言った。

「あっ、でも、ゼムとフィルに話す分には賛成だよ。二人共、同族なんだから」

「ゼムの方は弟の俺に任せろ」

「なら、フィルの方は任せて。僕も、弟として、フィルにはちゃんと話すよ」

「お願いなの。フィルは、終焉の兵器を知っているから、もしかしたら覚えているかもしれないけど。っていうのは良いとして。エレ、これからたくさん、仲間増やして、みんながあんな悲しい顔をしない未来を作るの。もう、世界を破壊して後悔させないから。今度こそ*姫としての使命から逃げない」

 これは、遠い昔の話。

 少女、エンジェリアは、数多に存在する世界の同時破壊を防ぐ姫。そして、幾度となく転生を繰り返すが、決して変わる事なく、青黒髪の少年、ゼーシェリオンと一緒に、青緑髪の少年、フォルとその兄を、深く、深く愛している。

 そんなエンジェリア達は、御巫とその相手の黄金蝶に選ばれるかどうか。歪んでいるこの世界を元に戻せるのか。

 それは単なる通過点に過ぎない。

 過程が違えど、幾度となく繰り返してきた結末と始まり。全世界の崩壊と創世。
 その原因となる終焉の種。

 これは、幾度となく続いた結末を変える、少女達を描く物語。

 歩みと想いが繋いだ、大きな奇跡の物語。

 その奇跡は、この先も、幾度とない転生を繰り返した。転生前の記憶を全て失い、十六年経っても戻らない、そんな回へと続く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(仮)世界の名を持つ姫

碧猫 
恋愛
エレシェフィール。世界の名前。 その名前を与えられた姫は、世界を守るという使命がある。 具体的には、世界が滅びる可能性となるのは、終焉の王達と呼ばれている。その王達が、世界を滅ぼさないようにする事。 エレシェフィールは、終焉の王達と仲を深めようと、毎日のように誰かしらに会いに行っていたが、毎回門前払い。会ってくれる王はいなかった。 唯一、会ってくれるのは、エレシェフィールの世話をするゼーシェミロアールと、その兄だけ。 一番危険とされる王に最後に会いに行く事にしていた。その日まで、それは変わらなかった。 教育と言われつけられたアザだらけの身体を隠しながら、一番危険な王会った。 王は、幼い日の記憶のないエレシェフィールは知らない、婚約者。 その王との出会いがきっかけで、愛を理解できないエレシェフィールは、全ての王達と向き合い、ただ一人の王に溺愛される事となった。

白い結婚をめぐる二年の攻防

藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」 「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」 「え、いやその」  父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。  だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。    妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。 ※ なろうにも投稿しています。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

処理中です...