栞の魚と人魚姫

月兎もえ

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人魚姫

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目を開けるとそこは、海の中だった。
「私、確か魚に飲み込まれたんじゃ・・・」ん??自分の手を見ると、明らかに自分の手ではなかった。その代わり、小さな黒く縁取られたオレンジ色のヒレが動いていた。全身を見てみると、間違いなく私、 ではなかった。
「魚じゃん!!私魚じゃん!!」
魚に食べられて魚になったってこと?意味わかんないわ!どうしよう、どうしよう、頭も体もグルグル回る。
「みちるー!」私を呼ぶ声がした。
「だれ??どこにいるの?」
「みちるー!」海の底の方から聞こえる。だんだん声が近づいてきている。可愛らしく、優しい女の子のような声だった。
「みちる!」その声の人は綺麗な金髪をしていて、海の色ような青い瞳をしていた。そして、足ではなく、桜貝色の尾ひれが付いていた。
「人魚・・・」
人魚は首を傾げた。
「当然でしょ。何を言ってるの?毎日見てるじゃない。」
いやいや、初めて見ました。
「それより、みちる!今日はパーティーの準備が終わったら、私のお支度を手伝ってくれるって言ったじゃない。忘れちゃったの?」人魚は悲しそうに俯いた。
どうやら私は、偶然にも「みちる」という名前が一緒の魚になってしまったらしい。人魚に、私は絵本の中に入ってしまって、実は私は人間のみちるです、なんて言っても信じてもらえないし、頭がおかしくなったと思われそうだ。とりあえず、話を合わせよう。
「ごめんなさい。」私が謝ると、人魚は顔をあげて、「まぁ、いいわ。」と許してくれた。
「それじゃあお城に戻りましょう。おばあちゃんも待ってるわ。」
私は頷いた。お城に行くってことは、この子は召使いか、お姫様なのかな?もし、本当にここが絵本の中の世界なら、人魚姫の可能性が高い。
私は人魚の後をついて、潜っていった。
犬かきしか泳げない私が、こんなに深くまで泳げるなんて、魚ってすごいなぁ。なんて呑気に思いながら、底の見えない海の中をどんどん進んで行った。
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