上 下
23 / 38

23話 おい、あれほど加減しろって言ったよな?

しおりを挟む
「はぁぁぁぁっ、ねみぃな。」

俺は早朝一人起きていた。
理由は簡単、組織に呼ばれたからだ。
多分魔力増強剤をパクってきた件のお咎めかな。

「あらアレスさん、今日は随分早いですね。」

「ヘレナか、いつもこの時間に起きているのか?」

「ええ、大体いつもこの時間に。」

「それはご苦労なことで。」

「こんなに早く起きたということは今日は何か御用がおありで?」

「ああ、ちょっと組織に呼ばれていてな。」

「なるほど、そういうことですか。」

「なんか浮かない顔してるけど、どうかしたのか?」

「いえ、気にしないでください。お気をつけて。」

「ああ、行ってくる。」



ヘレナ『せっかく2人きりでしたのに.....。』



・・・・・・・・・・・・・・・・・


「入るぞ~。」

ドアを開けてボスのいる部屋に入る。

「アレスか、なぜ呼ばれたかわかっているな?」

「ああ、魔力増強剤の件だろ?」

「ん?魔力増強剤?何のことだ?今回呼んだのは四天王の一人ミラヴォーネについてだ。」

ああ、そっちね。
てっきり怒られるもんだと思ってたわ。

「レイから聞いたぞ、勇者パーティーを鍛えてたらしいな。ミラヴォーネに備えての事だろう?」

「ああ、あいつらにはレベルが伴ってなかったからな。あのままでは何もできずに死んでいただろう。」

今回の訓練でそれなりに戦えるようになったから易々と殺されたりはないだろう。

「ふむ、とはいっても彼女達には実戦経験が足りない気がするが.....そこはどうするつもりだ?」

「一応訓練で実戦方式の戦いは行ったが、正直まだ浅いな。やはり俺が相手をするのはあまりいい手段とは言えない。」

私情を持ち込んでまた負けたりしたらどんなことをさせられるか......
考えるだけで恐ろしい。

「うーむ、ではこういうのはどうだ?」

俺はボスに耳打ちされる。
なるほどな、悪くない方法だ。
そうとなれば早速.....

俺は準備を終えて屋敷に戻った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ただいまー。」

「あらアレスさんお帰りになられたのですね。」

「アレス君か、おかえり。」

「あんたどこに行ってたのよ。」

「ちょっと野暮用でな。それよりもたまには羽を伸ばしにどこか出かけないか?」

俺はそれとなくみんなを屋敷から出そうとする。

「たしかにたまにはどこかに出かけたいですね。」

「そうだな、戦闘ばかりでは疲れがたまるしな。」

「まあ、あんたがどうしてもっていうなら行ってあげてもいいけど。」

「頼む、アリサお前がいないとダメなんだ。」

「ちょっ、な、なに言ってるのよ!ま、まあそこまで言うなら行ってあげる。」

俺達は支度をして屋敷の外に出た。




アリサ『急に何なのよ.....もう.....。』



・・・・・・・・・・・・・・・・・


屋敷を出ていざ街に繰り出そうとしたその時.....

「見つけた。」

そこにはレイがいた。

「おう、レイか、こんなところで何をして.....。」

ドスン!

「なっ、なにを......。」

バタッ

「ごめんアレス。」

「いや、ナイスだ。後は頼んだぞ。」

「任せて。」

俺は倒れて意識を失ったふりをする。

「君は......確か【紅】の......。」

「ちょっと、あんたアレスの仲間なんでしょ?何してるのよ?」

「みなさん、気を付けてください!」

「アレスには死んでもらった。私はもう【紅】の人間じゃない。ただの殺し屋。あなた達を殺しに来た。」

いや、まあ俺生きてるけどね?
とりあえず水中用無呼吸魔法を使って.....

「そんな!本当だ....アレス君が息をしていない......。」

「あんた、なんてことを!アレスの事好きじゃなかったの!?」

「好き、大好き。だから今回この仕事を受けた。」

「アレスさんが.....。」

「みんな、アレス君の分まで私達でどうにかするぞ!」

「あんたの目を覚まさせてあげる!」

「絶対に許しません!」

「ここに蘇生薬がある。これを奪ってアレスにのませられたらあなたたちの勝ち。」

うん、まあ、ただのウォレンジジュイスなんだけどね。

「『コンポジィムァジィック、ウィンドサンドウォール』!」

ふむ、サンドウォールに風魔法をのせてサンドウォールを強化し、容易に消し飛ばされないようにしたか。
俺との戦いで学んだな。
だが....

「甘い。」

「きゃっ!」

レイの攻撃(風圧バージョン)はしっかりアリサをとらえる。
あいつは殺意を基に戦うからな。
目くらましは通じない。

「まだまだよ!『重力操作』!」

「行くぞ!『グラビティスラッシュ』!」

良い連携だ。
立て直しも早い。
しかし....

グァン!

「アレスの時の方が重かった。これなら余裕。」

「くそっ、効いていないのか!?ヘレナ!身体強化魔法だ!」

「わかりました!この者達に祝福を、『身体強化』!」

使いどころが遅かったな。
もう少し早めに使うべきだった。

「『神速』!」

ここで神速を使うか。
なるほど、身体強化魔法は術者の魔力量に依存する。
『神速』を使うために温存しておいたのか。

「......なら私も使う。」

『神速』

ガァン!ギィン!グィン!


・・・・・・・・・・・・・・・・


「レイ、勇者パーティーの相手をしてやってほしい。」

「それはアレスに関係があること?」

「ああ、今後の俺(がいかに楽できるか)に関係のあることだ。」

「わかった。やる。」

「ただし、実力の半分、つまり本気で戦うのはなしで。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「加減難しい.....。」

「っ!隙ができた!ヘレナ!」

「承知しました!『ライトニングコンパ―ジェンス』!」

「何をする気?」

「よそ見していていいのかしら?『ウッドソイルオブシタクル』!」

ほう、アリサのやつ複合魔法をものにしたな。
土と木での拘束、レイなら余裕で抜けられるだろうが....
加減しろって言っちゃったしなあ。

「!?なにこれ。」

「今よ!セリス!」

「セリスさん!」

「はぁぁぁっ!『ライトニンググラビティスラッシュ』!」

聖剣に光属性の力をのせた一撃、見事だ。

ガギィン!

この辺でいいだろう。
どれどれ、起き上がるとする....

『影纏い』

ヒュン

レイの剣がセリスの首元にあてられる。
いや、『あてられる』、じゃなくて....
加減しろって言ったよな?
『影纏い』なんて俺でも最近使ってねえぞ?

「これで私の勝ち。」 

「くそっ、ここまでか.....。」

「悔しい....。」

「わたくしにはもうできることが.....。」

「私の勝ち、つまりアレスは私のもの。」

『ん?』

「おおい!なんで勝手にお前のものになってんだよ!」

「アレス君!?」

「あんた、生きて!?」

「アレスさん、無事だったんですね!」

「なあ、レイ、加減しろって言ったよな?」

「殺気に反応してつい加減を忘れちゃった。」

『ちゃった』じゃねえよ!
やっぱりこいつに任せるんじゃなくて、ミアにお願いすればよかった.....

「はぁ、まあ、みんな気付いているとは思うが、これは模擬的な実戦だ。レイにはお願いしてきてもらった。」

「そ、そういうことだったのか....。」

「なるほど、いきなりアレスさんがやられてびっくりしました。」

「でもあんた、仕事って言ってたじゃないの。」

「アレスからの仕事。それだけ。」

「はあ、心配して損したわ。」

「まあよかったじゃないか。」

「そうですね、結果的には良かったです。」

うんうん、本当によかったなあ。

「私が勝った。アレス、報酬は?」

ん?報酬?

「いや、そんな約束してないんだが?」

「報酬くれないと私泣いちゃう。」

いやお前そういうキャラじゃねえだろ。

『ジトー』

なんでみんなしてそんな目で見るのかね。
アリサはいつものことだけど、ヘレナは目が笑ってないし、セリスに関してはなんか無言の圧力が......

「わかったよ、今度なんか奢る。それでどうだ?」

「......わかった。それでいい。」

まあ、とにかくこれにて模擬実戦完了っと。
とりま今度、ミアに相談乗ってもらおう。








セリス『私はもしかして、嫉妬していたのか?』



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

[完結]勇者の旅の裏側で

八月森
ファンタジー
神官の少女リュイスは、神殿から預かったある依頼と共に冒険者の宿〈剣の継承亭〉を訪れ、そこで、店内の喧騒の中で一人眠っていた女剣士アレニエと出会う。                                      起き抜けに暴漢を叩きのめしたアレニエに衝撃を受けたリュイスは、衝動のままに懇願する。               「私と一緒に……勇者さまを助けてください!」                                        「………………はい?」                                                   『旅半ばで魔王の側近に襲われ、命を落とす』と予見された勇者を、陰から救い出す。それが、リュイスの持ち込んだ依頼だった。                                                       依頼を受諾したアレニエはリュイスと共に、勇者死亡予定現場に向かって旅立つ。                             旅を通じて、彼女たちは少しずつその距離を縮めていく。                                          しかし二人は、お互いに、人には言えない秘密を抱えていた。                                         人々の希望の象徴として、表舞台を歩む勇者の旅路。その陰に、一組の剣士と神官の姿が見え隠れしていたことは、あまり知られていない。                                                これは二人の少女が、勇者の旅を裏側で支えながら、自身の居場所を見つける物語。                            ・1章には勇者は出てきません。                                                     ・本編の視点は基本的にアレニエかリュイス。その他のキャラ視点の場合は幕間になります。                    ・短い場面転換は―――― 長い場面転換は*** 視点切替は◆◇◆◇◆ で区切っています。                    ・小説家になろう、カクヨム、ハーメルンにも掲載しています。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」 万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。 地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。 これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。 彼女なしの独身に平凡な年収。 これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。 2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。 「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」 誕生日を迎えた夜。 突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。 「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」 女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。 しかし、降り立って彼はすぐに気づく。 女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。 これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。

女男の世界

キョウキョウ
ライト文芸
 仕事の帰りに通るいつもの道、いつもと同じ時間に歩いてると背後から何かの気配。気づいた時には脇腹を刺されて生涯を閉じてしまった佐藤優。  再び目を開いたとき、彼の身体は何故か若返っていた。学生時代に戻っていた。しかも、記憶にある世界とは違う、極端に男性が少なく女性が多い歪な世界。  男女比が異なる世界で違った常識、全く別の知識に四苦八苦する優。  彼は、この価値観の違うこの世界でどう生きていくだろうか。 ※過去に小説家になろう等で公開していたものと同じ内容です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...