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《番外編》わんわんプール
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「キャウン!」
水をかけられて、俺はブルブルと身体を揺すって水気を飛ばした。
「ははっ、楽しいな」
俺は、犬オッケーのプールに来ている。
犬じゃないけど、ストレスがたまるとポメになってしまう体質の俺は、念のため犬オッケーのプールを調べておいたのだが、ちょうど忙しい時期と重なって、まさかのデートの日にポメになってしまった。
それでも一緒に行くと言ってくれた春永に連れられ、俺はプールを満喫していた。
あご乗せ浮き輪、楽だなぁ。
「ワンちゃんかわいいですね」
声をかけられ俺はドヤッた。だろだろ。かわいいだろ。犬の俺はちょっと自己肯定感が高い。だってポメかわいいもの。
ところが、声をかけてきた女の子たちは、春永の方しか見ていない。
これは、逆ナンというやつでは。
「えー、お兄さんなんてお名前なんですかぁ?」
「ワンちゃんはかわいいけど、お兄さんはイケメンですね」
春永は営業スマイルを浮かべて、ちょっと左の眉を寄せて、当たり障りなく受け答えしている。
ふと、自分が流されていることに気づいた。
どんどん春永たちから離れて行っている。ヤバイ。ここは流れるプールなの?
春永が、そんな俺に気づいて、なぜか青ざめて慌てる。
「大丈夫ー!」
春永にそう声をかけて、俺は気づいた。
もしかして、俺戻ってる。
見れば、着用義務だった犬用オムツ一丁でプールを流れる男がひとり……恥ずかしいじゃん。
適当に受け答えしていた女の子たちに、ハッキリ拒絶の言葉を告げた春永がプールの水をかき分けてこっちに来る。ビシャビシャになった脱ぎにくそうなラッシュガードを無理矢理脱いで、春永は俺に巻きつけた。
そして、ひと息つくと、俺におでこを寄せた。
「焦ったー」
俺は頷いた。ホントにな。焦るわ。ていうか、ラッシュガードくらいじゃ犬用オムツ一丁の不安感は消えないわ。せめてもの救いは犬用オムツがオムツオムツしてなくてちょっとファンシーだったことと、ゴム仕様で伸びるようになっていたことくらいか。
「やばい、服持ってきてない」
「大変じゃん」
何だかおかしくなって、俺と春永は顔を見合わせてクスクス笑った。
水をかけられて、俺はブルブルと身体を揺すって水気を飛ばした。
「ははっ、楽しいな」
俺は、犬オッケーのプールに来ている。
犬じゃないけど、ストレスがたまるとポメになってしまう体質の俺は、念のため犬オッケーのプールを調べておいたのだが、ちょうど忙しい時期と重なって、まさかのデートの日にポメになってしまった。
それでも一緒に行くと言ってくれた春永に連れられ、俺はプールを満喫していた。
あご乗せ浮き輪、楽だなぁ。
「ワンちゃんかわいいですね」
声をかけられ俺はドヤッた。だろだろ。かわいいだろ。犬の俺はちょっと自己肯定感が高い。だってポメかわいいもの。
ところが、声をかけてきた女の子たちは、春永の方しか見ていない。
これは、逆ナンというやつでは。
「えー、お兄さんなんてお名前なんですかぁ?」
「ワンちゃんはかわいいけど、お兄さんはイケメンですね」
春永は営業スマイルを浮かべて、ちょっと左の眉を寄せて、当たり障りなく受け答えしている。
ふと、自分が流されていることに気づいた。
どんどん春永たちから離れて行っている。ヤバイ。ここは流れるプールなの?
春永が、そんな俺に気づいて、なぜか青ざめて慌てる。
「大丈夫ー!」
春永にそう声をかけて、俺は気づいた。
もしかして、俺戻ってる。
見れば、着用義務だった犬用オムツ一丁でプールを流れる男がひとり……恥ずかしいじゃん。
適当に受け答えしていた女の子たちに、ハッキリ拒絶の言葉を告げた春永がプールの水をかき分けてこっちに来る。ビシャビシャになった脱ぎにくそうなラッシュガードを無理矢理脱いで、春永は俺に巻きつけた。
そして、ひと息つくと、俺におでこを寄せた。
「焦ったー」
俺は頷いた。ホントにな。焦るわ。ていうか、ラッシュガードくらいじゃ犬用オムツ一丁の不安感は消えないわ。せめてもの救いは犬用オムツがオムツオムツしてなくてちょっとファンシーだったことと、ゴム仕様で伸びるようになっていたことくらいか。
「やばい、服持ってきてない」
「大変じゃん」
何だかおかしくなって、俺と春永は顔を見合わせてクスクス笑った。
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