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8. 甘えて ※
しおりを挟む「ダメになっていいんだ。犬になってもいいから」
犬になったら、話もできない。
犬になりたくない。
俺も、たかはしを抱きしめたい。
甘やかして、甘えたい。
俺はたかはしにギューッと抱きついた。
「たかはし……」
俺の動きに泡風呂の泡がわた菓子みたいにふわっと波打つ。
ふわふわして見えるのに、たかはしと触れる肌の間で消える泡はお互いの肌を滑らせる。
俺の勢いに飛び散った泡が顔についていたのか、たかはしが指先で俺のおでこをそっとなぞった。
ギュッと抱きついたせいでたかはしの股間に自分を擦りつけるみたいな体勢になってしまったが、たかはしに触れているとふわっと気持ちが軽くなっていく。
たかはしが俺を見つめながら悪戯っぽく腰を揺らす。
「ん……」
お互いのものが擦れあって、泡が揺れて、ふわっと俺も泡になるんじゃないかなって思った。
「のぼせるから、流してあがろうな」
たかはしが俺の頭をなでて言う。いつまでもなでて欲しくて、俺は目をつぶってたかはしの手のひらに頭を擦りつけた。
「も、お前本当に……」
たかはしは、何かを言いかけて、ぐっと口をつぐむと、風呂の栓を抜いて俺の頭にシャワーをかけて、洗い流していく。泡が消えると、お互いの主張したものが明らかになって、俺はたかはしのそれに手をかけた。バキバキに主張して張っているたかはしのものは、凶悪そうなのにツルッとしていて、何だか凄く美味しそうに見えた。
俺は誘われるようにたかはしのものに手を這わせて、口を開けた。
「ストップ!」
急にたかはしが声を上げて、俺はハッとした。食べようとしていた。口に入れて、舐めたら甘そうな気がして。
「いや、そんな風にされたら嬉しくて暴発するからだめ」
だめって、何だ。かわいいな。
「暴発しても、いいのに。俺もたかはしを甘やかしたいのに」
たかはしは首を振った。
「それより、遠野の中に入りたい……」
俺はそのたかはしの真剣な目にゴクリと息を飲んだ。熱を帯びた視線が俺に注ぐと、俺の背中を電気が駆け巡った。
「ま、……っえ?」
何もしていないのに、一瞬電気がショートしたみたいに、目の前が弾けて、俺は果てていた。
え、何で。
たかはしは、俺の背中に手を回して、俺の背中をなでる。
「え、何で……え?」
たかはしの触れたところがビリビリして、全身を電気が走る。嘘だ。何かに感電したみたいにしびれて、そのままじゃ息ができない気がして、たかはしの唇に助けを求めて唇で触れる。たかはしは唇で応えてくれる。更に深く、吸いついた後で、舌が俺を呼ぶ。
いつの間にか、たかはしの手は尻に回ってぐっと俺をたかはしの方に引き寄せたかと思うと、ぬるっとした感触が尻にかかった。
「中、解していい?」
たかはしが穴の周りをぬるぬるした液体を塗るように触る。
「うん……」
俺は頷いていた。たかはしの舌が俺の舌と絡まり、深く繋がりながら、たかはしの指がぬるっとした液体の力を借りて、案外スルッと入り込んでくる。中にぬるぬるした液体を塗り込めるように入った指がぐるっと回り、思ったよりも痛くも気持ち悪くもなくて、指先が角度を変えようと曲がるのが、何だか気持ち良くて、声が漏れてしまう。
「……んふっ……はっ……」
いつの間にか指が増えて、ぬるっとした液体がどんどん塗り込められて、ぐちゅぐちゅと音が響く。
ヤバイ、気持ちいい。
飛びそうな意識の中で、俺は思った。
──たかはしの、名前って何?
気づくと俺は風呂を出てベッドにいた。
たかはしが俺の髪を優しく撫でていて、その距離感に心臓がはねた。
途中で意識がなくなった俺をベッドに寝かせて、たかはしは俺を待っていたのかなと思ったら、何だか胸を通り越して背中がこそばゆかった。
「……あのさ、名前……」
俺はたかはしに言った。
「春……、あのさ、春、なんていうの? 名前教えて。俺のことも、名前、呼んで。誠って」
たかはしの喉仏が揺れた。
「まこと……」
俺は頷いた。
「……はる……」
俺が、名前を呼ぼうとすると、たかはしは俺を撫でながら、言う。
「春永。春夏秋冬の春に永遠の永で春永。鷹橋春永……」
「はるなが……」
俺は、たかはしの言葉を繰り返す。
──春永。
今まで、名前も知らないでいたのに、甘やかしてくれた。
俺も、春永を甘やかしたい。
「はるなが、さっきの続きするんだよな?」
俺は、春永のモノが萎えていないのを確認する。
「俺も、春永に俺の中に来て欲しい。春永を甘やかしたい」
せいいっぱい真面目な顔をして春永の目を見て言ったけど、伝わったかどうかわからない。
ただ、春永に折れそうなくらい抱きしめられて、キスされて、さっきぐちゅぐちゅかき回されたところにまた指を入れられて、飛びそうになる意識をぐっと留めていると、春永が手早く自分のモノにコンドームをつける。
俺にまたキスをしながら、「力を抜いて」と囁いて、そのまま俺の耳をベロリと舐めた。
俺は春永が犬になっちゃったんじゃないかと驚いて春永を見ようとすると、またキスをされて、唇を甘噛みされながら、グッと春永のモノが俺の中に挿ってきた。
「ふっ……うっ……」
そのめちゃくちゃ凄い圧迫感に力を入れて押し戻してしまいそうになり、俺は息を吐く。
「上手上手……」
春永が、俺の背中をトントン叩く。俺の力が抜けてくるのがわかったのか、ちょっとずつ抜き差ししながら春永が奥に進んでくる。
「はるながぁ……」
俺が呼ぶと、俺の手を握ってくれる。その手を握りしめて、俺は圧迫感を逃した。
俺の力が抜けた瞬間、グッと入った春永のモノがトンッと当たったところから、ゾワゾワと波のように気持ちよさが押し寄せて、俺はグッと目をつぶった。
何だこれ。
「まこと……ちょっと動くよ」
俺が気持ちよくなったのがわかったのか、春永は俺に宣言すると、抜き差しを始めた。
春永が動くたびに「うっ」と小さい声が出てしまう。痛みとかじゃなくて、何だかふわふわして、春永が俺の中で動いてるのを感じるたびに、ゾクゾクして呼吸が乱れて、春永のカリが抜けきらずに引っかかるのも、奥に当たるのも、途中で止まるのも、全部快感に繋がってるんじゃないかって思うくらい、気持ちいい。
「抜けそうなとこ、凄い気持ちぃ……奥も……何か気持ちいぃ……」
「俺も、誠の中気持ちいいよ、ありがと」
ありがと、と言われて、俺は何だか感情が爆発して春永をもっと抱きしめたくて、ギュッと背中に手を回す。力を入れて抱きしめると自然に繋がりが深くなって、俺はぐずぐずに気持ちよくなってしまう。
ダメだ、気持ちよくなっちゃって、何も伝えられない。
「すっ……好き! 俺もありがとっ……! んっ……んんっ!」
伝えようと口を開いたけど、半分以上上手く言えないまま、俺はまた気がつけば精を放っていた。
「好きだっ! 好きだよっ!」
春永は、そう言いながら果てたようだった。ゴム越しのその感触はよくわからなかったけど、春永も気持ちよかったなら良かったな、と思いながら、俺は「好き」の余韻に目を閉じた。
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