コンビニ店員たかはしが俺を雑に扱いながら甘やかしてくれる

松本カナエ

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7. 甘やかされて ※

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「あれっ、勃ってるよ……」

 たかはしが、俺の足の間で元気になってしまっている部分に目ざとく気づいてしまった。
 それどころか、手を伸ばして、俺のソコを撫でた。

「ひぁっ!」

 驚いて、大きな声が出てしまい、ビックリした俺は、たかはしにまたがるような姿勢から、たかはしの身体の上に腰を落としてしまう。体重がかかったので、たかはしは重かっただろうと思ったのに、俺の体重の乗った反動で身体を起こし、逆に俺が転げてしまった。

「ここもかわいがって撫でてあげようか?」

「えっ……?」

 俺の頭が、その言葉の意味を一瞬では理解出来ず、フリーズする。

「こうやって……」

 たかはしは手を動かし、俺のモノを優しく握ると上下に動かす。

「えっ……えっ?」

 さっき舌から降りて来たゾクゾクが、今度は背中を伝って上に上がって来る。

「んっ……」

 待て待て待って、何だこれ。
 疲れてて忙しかったから、ずっと自慰もしてなかった。
 付き合った女の子も、積極的な子じゃなかったから、こんな他人に触られるなんて初めてで、自分で触るより気持ちいいけど、それがたかはしで、俺はどうしていいかわからず、たかはしの手を止めようと動いた手はたかはしに届く前に固まってしまい、ゾワゾワと気持ちいいのが背中をビリビリ行ったり来たりして、どうしようもなくて、たかはしに縋った。

「や、ちょ……んっ……イク……ヤバイ……まっ……」

 助けを求めてたかはしの腕を掴む。

「まっ……待って……ん! たかはしっ!」

 たかはしを呼びながら、俺は果ててしまった。ビリビリと快感が身体中を電気のように駆け巡って、何か急に生きてるんだって実感してしまった。
 目尻が涙で溢れた。
 いや、たかはしの手でイきながらそんなこと考えて、何かもう、俺は変態を通り越している。
 犬になりたい……
 そう都合よく犬になるわけもなく、恐る恐るたかはしを見ると、たかはしは笑っていた。

「気持ち良かった? もっと甘えていいけど、どうする?」

 甘えるって、どうすればいいんだよ。
 俺は今の段階では犬になって穴にもぐりたい気分なんだけど。
 もっと甘えるって何だ。
 全裸のまま、俺は汗やら何やら色々まとわりついた体を丸め、タオルにもぐるように顔をうずめた。
 甘えていいのなら、ちょっとこのまま放っておいて欲しい。
 たかはしがフッと笑う微かな音が聞こえ、たかはしは俺に言った。

「頭かくして何とやらだな」

 同時に尻を撫でられて、瞬間的に背をのけぞらせた。

「あー、すまん。尻が隠れてないのが、気になって。犬みたいだな」

 あ、しまった。俺汗やら何やら色々汚れてるんだった。

「あっ、あっ、しまった……汚しちゃった……」

 やらかした、と頭にかぶったタオルをはいで、汚れたところをタオルでゴシゴシ拭いていると、たかはしと目が合った。

「よし! 風呂入るか!」

 たかはしは俺を犬の時のように持ち上げて、風呂に運ぼうとする。
 俺はもう犬じゃないから重いし、全裸だし、汚れてるのに。

「下ろせって、犬じゃないんだから」

 そういうと、たかはしは首を傾げて「あんまり変わらないけどな」と言った。

「それより、暴れると落ちるからな」

 そう言われて、俺はつい大人しくしてしまう。

「何で甘やかそうとするんだよ……」

 本当に困ってしまってつぶやくと、たかはしは「そうだなぁ」と考えるように一瞬間を置いて、

「好きだから、だろうな」

 そう、言った。

「好きだから、甘えて欲しいと思うし、いっぱい撫でたいんだろうな」

 それは、俺がかわいい犬だからでは。

「犬じゃなくなったけど……」

 おれの小さくなっていく声を拾って、たかはしは俺に「犬だからじゃないぞ」と言った。

「犬だから、かわいがって甘やかして撫でたいんじゃないぞ。お前だからだよ」

「っていっても、知り合ったばっかりじゃん……」

 たかはしとは、あの日会ったばかりで、最初に雑に扱われたのを俺はまだ覚えている。コンビニのビニール袋に入れられた。

「俺さ、あのコンビニオーナーと知り合いで二週間だけ入ってって言われて手伝ってたんだけど……」

 たかはしが話し始める。

「俺のシフトの最初の方で帰って来て、俺のシフトの最後の方で出勤してくの、気になってたんだよ……」

 風呂の浴槽に俺を下ろして、たかはしは俺の目の下をなぞった。

「ずっとクマ消えなくて、毎回栄養ドリンク買ってるくらいヘロヘロなのに、たまにタカイチの菓子を買ったらうれしそうにニコニコして、ため息ついてるのに、それでも買ったもの渡した時にありがとうございますって、疲れてるのにうっすら笑って返してくれて、甘やかしたいなって思ってたんだよ」

 たかはしの話す内容が寝耳に水過ぎて、俺の頭からは多分はてなマークしか出てなかったと思う。そんな客、キモいだけじゃないか。なんで甘やかしたいに繋がるのかわからない。

「他のやつにはそんなこと思ったことない。だから、俺、好きなんだなって思ってたんだよ」

 どういうこと?
 俺はもう頭がついていかず、目の前がチカチカしてきた。
犬になるほどのストレスじゃないのか、こんなに混乱してるのに、俺は人間だ。
 いや、人間なんだけど。

「好きだよ」

 そっとたかはしが言った声は、風呂場に反響して俺の耳にいつまでも響いた。
 俺が聞き返そうとした瞬間シャワーが俺の頭にジャーッと全開でかかる。まだ水じゃん!
 冷たくてヒュッと首を引っ込めて、濡れた頭をつい力強く振ってしまう。
 犬の時の癖が抜けない。振ったところで水切れは良くない。

「ふはっ」

 たかはしは目尻にしわが寄るほどくしゃっとおかしそうに笑った。

「犬じゃないとか言いながら、行動が犬……!」

 悪かったな、つい、ぶるぶるっとやってしまった。
 笑われると、本気で恥ずかしい。

「本当に、かわいいなぁ……」

 しみじみつぶやく声に、ヒエッとなる。
 さっき、好きって言われたけど、好き同士でお風呂入るって、そういうことじゃん。
 男同士の経験などないどころか、女性とも全くお風呂に入った経験はない。そもそも、誰かと一緒にお風呂などというのは、銭湯以外じゃ小さい頃に親としかない。
 あ、いや、犬になってからは、ずっとたかはしに洗ってもらっていた。
 俺が目を白黒させるのをニコニコ見ていたたかはしは、俺の目の前で、服を脱ぎ始める。脱いだものから脱衣所に投げ、あっという間に全部脱いだ。

「ちょ、何で脱ぐんだよ……」

「えっ? 風呂入るから」

正論過ぎて何も言えない。
 たかはしは、風呂の栓を閉じて、大きなボトルの中の液体を浴槽に入れた。

「ほら、お前の大好きな泡風呂だぞー」

 犬の時に声をかけるみたいに言っている間にも、浴槽の中に流れるシャワーでお湯がどんどん泡立っていく。

「いや、そんなに好きなわけじゃ……」

 確かに、犬になって初めて泡風呂に入った時は、テンション上がって暴れて最後には泡飲み込んでゲホゲホしたけど、好きって思われてたのか。
 ええ?

「ほら、入ろ」

 たかはしは泡の中に浸かると俺の腕をそっと引く。
 犬の時みたいにたかはしの膝の上に座らされて、犬の時はたかはしの支えがなければ溺れそうなくらい深く感じたのに、今は凄く心許ないくらい浅く感じる。

「狭い……」

 俺がつぶやくとたかはしはまた目を細めた。何なんだもう。

「まあまあ、座って座って」

 たかはしに抱きかかえられて、泡につかる。
 背中に微妙に当たるたかはしの股間が今はめちゃめちゃ気になって、どうしたらいいかわからなくて、俺は浴槽で縮こまった。

「ほら、頭洗ってやるよ」

 顎をぐいっとされて頭を上向けにされると、頭がたかはしの胸に寄りかかる形になる。
 泡で頭をマッサージしながら、たかはしは楽しそうに鼻歌を歌っている。
 俺の好きなお菓子のCMソングだった。

「わたがしぱちぱちーキラキラのくもー」

 たかはしの鼻歌に合わせて、CMソングを歌う。風呂で歌うと響いて自分が上手になったように聞こえるのがいい。

「なあ」

 いつの間にか鼻歌がやんで、たかはしが俺をギュッと抱きしめた。

「なあ、俺にもっと甘えろよ……甘やかされてくれよ」

 そんな、切ない声で言われても、俺はどうしたらいいんだかわからない。
 でも、たかはしに抱きしめられると安心するし、ドキドキする。全く不快感はないし、身を委ねてしまいたい衝動すらある。

「こんなに甘やかしてもらって、俺これ以上甘やかされたらダメになっちゃうよ」
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