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15. 縁とは不思議なもので
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気分転換にと横峯が誘ってくれたデートだったが、ここで働きたいなと高大は思った。
そう横峯に言うと、苦笑いされる。
「将来ここで結婚式したいなって思って欲しかったんだけど……働きたい、ねぇ……」
チラチラと、働いているスタッフたちを見ながら、横峯はうなる。
「まあ、オメガの社長がやってるってだけあって、変なやつはいなそうだね。ただ、変な客はいないわけじゃなさそうだからなー……」
心配そうに高大を見る横峯に、高大は眉を下げた。
「いや、そんな俺だって変なやつに絡まれてばっかりじゃないよ……今まで全然そんなことなかったし。あそこの面接官が外れだっただけで……」
「そうだろうけど……一応ね」
困り顔の高大の口の中に横峯が茶色いプチフールを突っ込む。
「ん! うま!!」
チョコレートの味のプチフールはかわいくて美味しい。隣にはまた違う形と色が並んでいる。高大は、さっきまでのことを忘れたかのように一個ずつプチフールを試食していく。
「うまっ!」
どこがどうおいしいとは言えないが、甘さもちょうど良くて次々食べてしまう。
「全部うまい! どれが一番好きかなって思ったけど、どれもうまい!!」
絶賛した高大のそばでクスリと笑う人がいて、高大は口をつぐんだ。
「すみません。おかわいらしい反応でしたので……」
その人はスラリと背が高く骨太そうな体格で、纏うオーラが芸能人かなと思うくらいだった。
一瞬、横峯がピリッとした空気になり、高大を引き寄せた。
「そんなに警戒しなくても……」
苦笑いをしてその人は名刺を差し出してきた。
「パティスリー……ジャドレララバント??」
名刺は横書きで、横文字が並んでいる。
Patisserie j'adore la lavande
Patissier 佐野享
そう書いてある名刺を見ながら首をかしげている高大に、笑いながらその人が自己紹介した。
「Patisseriej'adore la lavandeです。佐野享と申します」
「へぇー……あ、もしかしてこのケーキ!!」
佐野は肯定するようににっこり笑った。
「全部おいしくて、ほんとうにすごいなって話してて」
「ありがとうございます」
ちらっと佐野が横峯にも視線をやり、高大は慌てて自己紹介する。
「鈴木高大です。こっちは横峯大輔……」
横峯は自己紹介する高大を複雑そうに見ている。
「お二人は番になられて……ご結婚される??」
結婚式場に見学に来ているのだから、普通はそうに決まっているのだが、そこまですぐにうんと言えず高大は横峯を見た。
「ええ、いずれ」
堂々と答える横峯は、未だに警戒を解いていない。高大はおろおろしながら、佐野を見ていた。
横峯は警戒しているが、高大には温かいまなざしに見えて、笑顔を返した。すると、高大を引き寄せた腕が強くなる。
「ハハッ、そんなに警戒しなくても、私は一途ですから。番以外に邪な感情は抱きませんよ」
朗らかな態度は崩さないで、佐野は「これもオススメです」と差し出してくる。
プチシューはかわいくて、口に入れるとフワッと香って中からカスタードが出てくる。
「うまっ!」
高大は、ピリピリした横峯の口にもプチシューを突っ込む。
「ん! ……うまい……」
横峯がうなる。
「結婚式ではプチシューのタワーが人気なんですよ。クロカンブッシュって言って、高く積んだシューのひとつひとつに感謝の気持ちが込められてるんです」
高大は感心したようにプチシューのタワーを眺める。フルーツも飾りつけられていて、見た目にもとても華やかなのに、なぜか派手なだけではなく慎ましくも見える。
そのクロカンブッシュに糸のように飴が絡んでいて、鳥の巣のようになっている。
「オメガの巣作りのイメージです」
笑みを深くして佐野は言う。それはそれは幸せそうに。いつの間にか横峯の顔も緩んでいる。
「私にも番がいまして。巣作りしてもらえた嬉しさをウエディングケーキに表したいと思って作りました」
そう言われてもう一度クロカンブッシュを見ると、飴にはキラキラとアラザンなどがくっついていて、フルーツの他にナッツなども散らばっている。
「アレルギーの方たちに対応する意味でも、飾っているところからの取り分け以外にもプチシューを用意しています」
視線に気づいたのか佐野が説明してくれる。
「素敵ですね」
心からそう思って、高大は言った。
佐野の笑みが深くなる。
「私も番も、あなた方がここで結婚式をやってくださったら大歓迎します」
そう横峯に言うと、苦笑いされる。
「将来ここで結婚式したいなって思って欲しかったんだけど……働きたい、ねぇ……」
チラチラと、働いているスタッフたちを見ながら、横峯はうなる。
「まあ、オメガの社長がやってるってだけあって、変なやつはいなそうだね。ただ、変な客はいないわけじゃなさそうだからなー……」
心配そうに高大を見る横峯に、高大は眉を下げた。
「いや、そんな俺だって変なやつに絡まれてばっかりじゃないよ……今まで全然そんなことなかったし。あそこの面接官が外れだっただけで……」
「そうだろうけど……一応ね」
困り顔の高大の口の中に横峯が茶色いプチフールを突っ込む。
「ん! うま!!」
チョコレートの味のプチフールはかわいくて美味しい。隣にはまた違う形と色が並んでいる。高大は、さっきまでのことを忘れたかのように一個ずつプチフールを試食していく。
「うまっ!」
どこがどうおいしいとは言えないが、甘さもちょうど良くて次々食べてしまう。
「全部うまい! どれが一番好きかなって思ったけど、どれもうまい!!」
絶賛した高大のそばでクスリと笑う人がいて、高大は口をつぐんだ。
「すみません。おかわいらしい反応でしたので……」
その人はスラリと背が高く骨太そうな体格で、纏うオーラが芸能人かなと思うくらいだった。
一瞬、横峯がピリッとした空気になり、高大を引き寄せた。
「そんなに警戒しなくても……」
苦笑いをしてその人は名刺を差し出してきた。
「パティスリー……ジャドレララバント??」
名刺は横書きで、横文字が並んでいる。
Patisserie j'adore la lavande
Patissier 佐野享
そう書いてある名刺を見ながら首をかしげている高大に、笑いながらその人が自己紹介した。
「Patisseriej'adore la lavandeです。佐野享と申します」
「へぇー……あ、もしかしてこのケーキ!!」
佐野は肯定するようににっこり笑った。
「全部おいしくて、ほんとうにすごいなって話してて」
「ありがとうございます」
ちらっと佐野が横峯にも視線をやり、高大は慌てて自己紹介する。
「鈴木高大です。こっちは横峯大輔……」
横峯は自己紹介する高大を複雑そうに見ている。
「お二人は番になられて……ご結婚される??」
結婚式場に見学に来ているのだから、普通はそうに決まっているのだが、そこまですぐにうんと言えず高大は横峯を見た。
「ええ、いずれ」
堂々と答える横峯は、未だに警戒を解いていない。高大はおろおろしながら、佐野を見ていた。
横峯は警戒しているが、高大には温かいまなざしに見えて、笑顔を返した。すると、高大を引き寄せた腕が強くなる。
「ハハッ、そんなに警戒しなくても、私は一途ですから。番以外に邪な感情は抱きませんよ」
朗らかな態度は崩さないで、佐野は「これもオススメです」と差し出してくる。
プチシューはかわいくて、口に入れるとフワッと香って中からカスタードが出てくる。
「うまっ!」
高大は、ピリピリした横峯の口にもプチシューを突っ込む。
「ん! ……うまい……」
横峯がうなる。
「結婚式ではプチシューのタワーが人気なんですよ。クロカンブッシュって言って、高く積んだシューのひとつひとつに感謝の気持ちが込められてるんです」
高大は感心したようにプチシューのタワーを眺める。フルーツも飾りつけられていて、見た目にもとても華やかなのに、なぜか派手なだけではなく慎ましくも見える。
そのクロカンブッシュに糸のように飴が絡んでいて、鳥の巣のようになっている。
「オメガの巣作りのイメージです」
笑みを深くして佐野は言う。それはそれは幸せそうに。いつの間にか横峯の顔も緩んでいる。
「私にも番がいまして。巣作りしてもらえた嬉しさをウエディングケーキに表したいと思って作りました」
そう言われてもう一度クロカンブッシュを見ると、飴にはキラキラとアラザンなどがくっついていて、フルーツの他にナッツなども散らばっている。
「アレルギーの方たちに対応する意味でも、飾っているところからの取り分け以外にもプチシューを用意しています」
視線に気づいたのか佐野が説明してくれる。
「素敵ですね」
心からそう思って、高大は言った。
佐野の笑みが深くなる。
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