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8. 約束 ☆?
しおりを挟む洗濯機の前まで洗濯物を抱えて持ってきて、下ろす前に高大はもう一度深呼吸をした。
洗濯物から香るのは安心する匂いなのに、胸の奥の方がザワザワして、どこか落ち着かなくなる。
高大はふと気づく。
今日の面接が失敗だったということは、番う予定はなくてもいいのだと。
第一志望の会社以外は特に噂はなく、オメガ枠を埋めるためにオメガ大歓迎みたいなところもあった。
それでももう離れられないな、と高大は思った。
いつの間にか、横峯と一緒にいることが当たり前のように感じるようになっていた。
(欠点は洗濯物溜めちゃうことくらいだもんね……)
はーっと息をついて、高大は洗濯物を洗濯機に突っ込み始める。
白物はあまり多くないから、色柄物を洗ってしまおうと、白物を避けながら洗濯物を入れて、ふと手に取った下着を高大は見つめた。
直接肌につけるものだからだろうか、他のものよりも匂いが濃くて、思わず知らず顔を寄せて、匂いを確認した。
以前ヒートの時に交わった時のことが思い出されて、自然に身体が熱くなる。
本物は、もっと、濃い匂いだった。
高大は、そろっと自身の下履きを下ろす。
横峯の下着を握りしめ、ソロリと後ろに指を入れる。
「……っ、んっ……」
こんなところで、と思いながらも、今は一人だし少しだけ、と高大は指をぐちぐちと動かす。気持ちいいところに指が当たるようにと、目の前の洗濯物に顔をうずめて、指を根もとまで入れる。
「……ふっ……んっ……足りなっ……」
高大は前側にも手を伸ばし、後ろと一緒に弄る。前を扱けば簡単に快感を得られるが、後ろは物足りなくて、顔を洗濯物に埋めたまま、夢中になって両方弄る。
「……んっ……はっ……」
もうイク、と高大が動きを止めたその瞬間、洗面所のドアがガチャと開いた。
「ここにいたんだね。高大のスーツ、クリーニングに出しておいたからね。……え?」
「……っん……あ?」
高大はゆるゆると顔を上げ、横峯の驚いた顔と目が合い、あっと慌てて指を抜こうと動かした瞬間にイッてしまった。
「……っ……あっ、あーっ!! っああっー!!」
穴があったら入りたい気持ちで、手近の洗濯物をかき集めて下半身を隠すようにした高大を、横峯はもう一度現状把握しようと目を見開いたが、すぐにドアを一度閉め、見えなくなったかと思うと、またすぐにドアを開ける。
高大は頭が真っ白になっていて動けずに、頬を染め涙目で「ごめん」と言った。
横峯は巣作りして欲しくて服をためていたこともあり、高大の行動に目を細めて満足げに微笑んだ。そういう風に使って欲しかったから、何がごめんなのかわからなかった。
「横峯くん、あの、洗濯、しようと思ったんだけど……横峯くんの匂いが濃くて、その……ごめん……」
この間のヒートの時はすぐに洗濯されてしまったからと、その時よりもがっつり匂いをつけていたから、匂いにあてられたんだなと横峯は納得して、心の中でガッツポーズを取る。
だが、高大は羞恥から消えてしまいそうなほどか細い声でごめんをくり返す。
「今急いで洗濯機回すから、ちょっと待って……」
高大は慌てて服をかき集め、洗濯機に入れようとする。慌て過ぎて半ケツで、思わず横峯はそこにスッと手を伸ばした。
「ヒャッ……」
高大は声を上げ、真っ赤になる。
「別に洗濯は今じゃなくていいから。大丈夫だから、落ち着いて」
横峯のかける声は優しいが、手は尻をスルスルと撫で回している。
「すぐに洗濯してくれようとするけど、俺洗濯出来るからね。大丈夫なんだけど……」
横峯は困ったように眉を下げながら言う。
「俺……ごめん、横峯くんの家なのに……こんな……っていうか、横峯くん……手……何か……」
横峯が撫でていた尻の割れ目をなぞる。
「……っふぅん……」
高大の口から声が漏れるのを聞いて、横峯は高大を抱き寄せる。
「……横峯くんにも応援してもらったのに、面接ダメだったね……」
高大がそう言った途端、横峯の手がピタリと止まった。
高大が見上げると、顔からは表情が抜け落ちて怖い顔をしている。
「横峯くん??」
不安げな声で呼ばれて、横峯はやんわりと笑顔を作る。
「もう、早く番っちゃわないと心配だよね」
冗談を言うみたいに軽く番う話題を出した横峯の言葉に、今度は高大がビクリと固まる。
「その、横峯くん、そのことなんだけどね」
言い出しにくそうに高大は話し出す。その様子に、横峯は息を飲んで、高大を見守った。高大はぎゅっと目をつぶると、横峯をチラッと見て、それから小さな声で言う。
「次のヒートの時、噛んでくれないかな……って」
高大が恐る恐る言うか言わないかのうちに、高大の身体は横峯に力いっぱい抱きしめられる。
噛みつくようにキスをされ、そのまま、チョーカーの下の肩口をガブガブと甘噛みされる。
「いいの? 本当にいいの?」
横峯はうわ言のように高大に何度も聞く。
高大は何度も頷いた。
「約束だよ?」
高大の目をじっと見つめて、キラキラと目を輝かせて横峯が言う。
(こんな風に約束したら、ヒートが来るまでどうしたらいいかわからなくなりそう……)
まさか、横峯がこんなにも過剰なくらいの反応を返すとは思ってもいなかったので、高大の顔が熱くなった。
横峯の腕の中にいつまでもいたくて、高大はそのまま身を委ねた。
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