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第566話 遠い一人の孤独と悔恨
しおりを挟む魔王との戦いは苦しい戦いで・・・仲間全員失って、自分ひとりが生き残った
『この戦いが終わったら俺の故郷に来てくれよな!旨い酒を飲ませてやるぜ!』
ここまで辛い戦いでも、戦うだけの理由があった
『うちの族長に紹介したい、うちの国でも妻子ともども豪勢に暮らさせると約束しよう!』
■■■とのこれからの生活
『死にたくねぇ・・・・・・だけど、今やらなきゃ、な、俺のことは歌に残してくれよな・・・さぁ行けぇっ!!』
■■■との子供のため
『貴方のことが好きだった・・生まれ・・・変われたら・・・嫁にして・・・よ・・・・・・ね・・・・・・・』
そして仲間たちが心の支えだった・・・
身体がバラバラのものもいるが、全員こんなところには置いていけない
死ねばアンデッドになるかもしれないし、僕には見えなくてもまだこの身体に魂が残っているか、なにかの魔法で仮死状態かもしれない
34人、全員連れて行く
なぁに、もう敵はいない
力もある
なにせ、僕が授かったのは力の神様の加護だ
涙が勝手に出てきてしまう
立ち止まってはいられない
帰るんだ
帰らなきゃならない
利害関係のある仲間だったそれでも旅を通じて、彼らは同朋になった
家族で、無二の友人だった
皆で励ましあったし、彼らだって人で、悩みもあれば泣き言もいっていた
僕も無傷で勝てたわけじゃない、魔王は強い化け物だった
足が酷く痛むが歩みを止めることは出来ない
顔ぐらいは知っている軍の部下の死体もあったがこれ以上は無理だ
仲間たちとの約束だ、■■■との生活で、絶対に幸せになって見せる
そのために歩いて、歩いて歩いて、途中、人の領域の神殿で皆を背から降ろした
加護を得られていないものでも信仰している神はそれぞれいたし全員の故郷を知っているわけではない
丁重に葬ることを約束させ、■■■のもとに歩いて帰る
思えばこのとき、気付くべきだった
―――――ずっと、■■■から手紙が来ていなかったことを・・・・・・・
戦勝のパレードの歓声の中迎え入れられた
子供の頃に見たような知っているような何百人もいるパレードではない
僕が足を引きずって帰っているだけ
それに貴族たちがついてくる
怪我はしたがはやく無事な姿を見せて■■■を安心させたい
だけどさすが魔王の攻撃、なかなかに治りが悪い
「勇者様ぁっ!!」
「ありがとうございます!!!」
「「「キャー!!!!」」」
すごい盛り上がりだ
人類の勝利なのだから当然かも知れない
僕も仲間の死は悲しいが、何も成し遂げられなかったわけじゃない
きっとこの世界にとって本当に価値のある死で、生き方だったはずだ
早く■■■の顔が見たい
民には泣いて喜ぶものもいる、その場で膝を折って祈るものもいる
花を撒いてくれる人達が居て、大通りを歩く
足を引きずっているのは少し見栄えは悪いがそれでも彼らにとって僕は英雄だ
田舎の神官では治しきれなかったがここでなら治るかな
機獣に乗って帰るという手もあったが貴族の機獣なんて借りてもいつ帰れるかわからなかったしパーティだの何だのやたらと引き留めようとしてくる
仲間たちが一人も帰れなかったが仲間にもちゃんと自分の力で帰ったと見てほしい
・・・華やかな凱旋のはずだ、ただなぜか、悲しい顔をこちらに向けてきているものも居た
「すいません勇者様っ!!魔族が~~」
「~~~~!!~~~~~~~!!!!~~~~・・・~~~・・・・」
「~~!~~~~!!~~・・・・・・」
何を、言っているのかわからない
なんで、■■■が寝ているのかわからない
なんで、なんで■■■が冷たくなってしまっているのか
―――――・・・・・わからない
ただただ深い後悔があった
帰ってきたがそこに彼女は居ない、仲間も居ない
気がつけば時間が経っていて、何があったのか、やっと人の言ってることがわかった
■■■は、出産の前に魔族によって毒を飲まされて、お腹の子共々死んでしまった
そうだ、願いが叶うかは分からないが、神様に願うことができる
生き返らせてもらえないか?
「ぜひ我が国の豊穣と繁栄を願っていただければと勇者殿には願います」
「・・・・・」
首を折りそうになるのをこらえて、何も答えず、この国の聖域に向かう
山の奥深く、神聖な空気のするそこで神と会った
「<勇者よ、魔王の打倒ご苦労さまです>」
「神様!おねがいします!■■■をっ!■■■と僕たちの子を生き返らせてはもらえないでしょうかっ!!!どうか、どうかおねがいします!!!!」
無茶なことをいっている自覚はある
だけど、旅の最中、色んな話を聞けた
『悲恋の末に死んだ男女が生き返って幸せになった話』
『勇者が魔王を倒して、伴侶を蘇らせた話』
『海で死んだ王子が人魚と夫婦になった話』
『死をはねのけて、永久に踊り続けている貴族がいるという話』
死をはねのけるお話は多くあった
「<それは・・出来ません>」
「僕の旅は彼女と子のためのものだった!2人が居ないと、僕は生きていく意味がないんだ、おねがいします!おねがいしますっ!!」
「<死者をよみがえらせるのは、不可能なのです>」
「おねがい、します」
お話はお話かもしれない
ただそれでも、そうやってすがることしか出来ない
諦められない、彼女の居ない世界なんて、耐えられない
「<しかし、最後のお別れぐらいはできるでしょう>」
振り返ると、■■■がいた
いつもと変わらぬ■■■、いやお腹も大きくて、思った通りの姿だった
ただ、透けている
<ごめんなさい、■■■■、先に死んでしまって・・・>
「■■■!ごめん、ごめんよ・・!君が大変な時に、僕は君の側に居られなかった・・・」
魔王なんて知ったことじゃなかった、行くんじゃなかった、側にいるべきだった
ずっと一緒にいればよかった
頬にわずかに感じる小さな手、ただ僕には抱きしめられない
抱きしめてしまえば・・・・消えて無くなってしまいそうだ
<泣かないで・・■■■■、私は、この選択肢は間違ってなかったと思うわ>
「でも、君も僕たちの子供も死んでしまった!!ごめん・・ごめん・・・愛してる、お願い逝かないでくれ・・・・・」
<■■■■、私も愛してるわ・・心の底から、誰よりも・・・だけど、ただ運が悪かった、仕方ないのよ>
どうしようもないことだとしても、願わずにはいられない
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