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第537話 卑怯者をぶん殴るための預言者
しおりを挟む「<おじゃじゃじゃじゃじゃ!!>」
「やめ、やめろー!?」
エゼル姉貴がいつものように阿呆になった
たまに加護の反動で、神の眷属に身体を渡す姉貴
異世界の食品を食べ尽くし、デカブツに「脱ーげ!脱ーげ!」と騒いで追いかけながら服を脱がせようと服を少しずつ切り裂いている
まだ血が足りないのか足取りの怪しいデカブツの服を粉微塵にしていった・・
うん、まぁ、仕方ない
敵地で暴れるよりもマシだろう
この前なんかいきなり神殿に攻め込んで聖騎士を全員打ち倒して「<余の顔はこんなに酷くない>」とか言いながら神殿の像をぶった切ってた、神官に追いかけ回された
エゼル姉貴は強いけど加護による反動が酷い
目が見えなくなっていることと、たまにこうやって加護を与えてくれた武神ムラザエに仕えていた使徒やその家族の霊が姉貴の体を使う
悪事や人を傷つけることは殆ど無いけど・・・ぅーん
本来はこの加護によって古代からの技術を学ぶのだけど姉貴は既に学ぶこともないしな
「オラ、さっさと描けよ」
「・・・・・はい」
今はそれよりもデカブツの妹から情報を引き出す
敵は何人で、何処で、いつ頃、どんな武器でどんな魔法や加護でヨウスケを殺そうとしているのか?
ヨウスケが死なないためにも休む暇を与えずに描かせていく
紙を用意させて、我儘も許さず
この女も加護の影響か、寝ていても起きていてもずっと未来を見続けている
ビクビクと挙動不審だがそれら全てを完璧に覚えているそうだし、ちょうどいいから椅子に縛り付けたまま
敵の主犯は3人
俺が殴りそこねた卑怯者は『残虐王子』『迫る恐怖』『恐怖王』と名高い、数人いる魔族王、コーヴァニアフ
武器を傀儡のように操ってじわりじわりと恐怖を与えて殺すという逸話が幾つもあった
俺と同じような黒い肌のダークエルフの名前はガルーシャ、そしてフレンと呼ばれる老人
他には神官のような衣類のものが見えて大量のアンデッドが雪崩のように現れることもある
巨大な何かが落ちてきて、よく見えない
始まりはとにかくヨウスケが目か顔、もしくは頸を切り落とされる
「だから、もっと詳しくって言ってんだろ、役立たずの穀潰し」
「ひ、酷いです」
この女、ザウスキアの王族で神殿に引きこもっていたそうだがデカブツが助けてからもわがまま放題
なんとか軍で戦況の改善を予言させていたのだが酷いものだった
「こんな食事、口にはあいません、作り直してきてくださいます?」
机にあった食い物をひとくち食べ、口を布で拭って・・その布を食い物に投げるようにかぶせた
「ケテス、ここは戦場でこれ以上の料理はない」
「お兄様、しかし王族として私達が良いものを食べねば示しがつきません」
困ったような顔をしてデカブツに文句を言う、デカブツの妹
「そこのあなたマラミラス地方のデラディグを用意なさい、ヨクの茶もね」
一応デカブツにはこいつは使えるという話も聞いていたから同じ部屋で休んでいた俺とエゼル姉貴
こいつは戦えないし守る必要があると言うから一緒の部屋にいただけだったのだが俺を指さしてなんか用意しろって言ってくる
「デカブツ、なんだこいつ?殴ってもいいか?」
一応聞いておく
「まって、待ってください・・・こいつは未来を予言できる、きっとこの戦争で役に立つはずだから」
「なんですの?この奴隷は?どうかなさいましたか、お兄様?」
一瞬呆けてしまった
あれ?俺を奴隷扱いするのか?
そういえばこいつも額に目があるし亜人ではあるが、亜人を奴隷として区別するザウスキアの王族
「もう口を閉じて喋るなお前」
出来の悪い兄弟の問題というのは人種関係なくどこにでもいるのだろう
呆れてものも言えなかったがフィル姉貴が帰ってきた
「周りに魔族や敵の気配はなかった」
「おかえりなさい」
エゼル姉貴が出迎えて魔導具でエゼル姉貴の肉球を拭った
俺はフィル姉貴用の絨毯を収納袋から取り出して床に敷いた
フィル姉貴はとてもきれい好きである
「・・・!きゃー!!?魔獣です!!だれか!さっさと穢らわしい魔獣を
パァんっ・・
俺の拳がこいつの腹を殴る前に、エゼル姉貴がデカブツの妹の頬を平手で打った
「貴方は罪を犯しました」
「な、奴隷ふぜ
パァん!
俺だけじゃなくエゼル姉貴まで奴隷と言うかこいつ
エゼル姉貴はデカブツの妹に詰め寄った
「一つ、食べ物をゴミ扱いした」
「あんなごみ
パァん!!
「一つ、かわいいダリアを奴隷扱いした」
「え、エルフのしかも魔族よりの
パァン!!!
「一つ、フィルフェリア姉さまを魔獣呼ばわりした」
「ど、どう見たって獣じゃ
パ ァ ン!!!!
「や、やめ
パ ァ ン!!!!!
言葉を挟む度にエゼル姉貴は頬を平手でぶっている
当然手で守ろうとするがその手をぐいと退かして頬を打ち続けるエゼル姉貴
しかも段々と威力が上がっているが・・この女も神の強い加護があるからかかなり頑丈なようだ
<うちの可愛いダリアとエゼルを奴隷だなんて>
ぷんぷん怒っているおねーちゃんも俺の中から聞いてたみたいだ、一緒にこいつ殴る?
<いえ、エゼルが教育してくれているみたいですし>
「も、もうこれ以上は」
パ ァ ン !!
「また口を挟みましたね?」
パ ァ ン !!!
「・・・・・」
デカブツの妹だけあって頑丈そうだがもうこれで逆らわないだろう
もう何も言わなくてもエゼル姉貴は叩き続けていく
「すまん、洋介さんのためにもなるからこの辺で勘弁してやってくれ、このとおりだ」
「お兄様!?なんでエルフなんかに頭を下げているので!!?ごめんなさい、もう口答えしませ」
パ ァ ン !!!
デカブツが口を挟んだから一瞬手が止まったエゼル姉貴だったが振り上げられた平手を見て日和ったな・・・そろそろ屈服するかな?
こういうアホ貴族は反抗する気が無くなるまで教育しないと後が面倒だ
アダバンタスもそれがわかっているのだろう、割って入って止めるようなことはしない
「・・・・・」
「・・・・・」
ついついフィル姉貴とリリア姉貴と一緒に渋い顔をしてしまう
エゼル姉貴の腕力で殴られてよく首がもげないな
調整はしてるんだろうけどよくここまで逆らったよ、ちょっとだけ感心した
「こいつは世間知らずなんだ、役に立つから殺さないでくれ」
元は軍にいた仲間が世話をしていたようだけど我儘三昧で他の国の貴族を鞭で打って反感を買ったらしい
戦場でそんなことをして、このままじゃ殺されかねないと俺らのテントに来たデカブツの妹
どう見たって額にある眼球からこいつも亜人に近いだろうに
「アダバンタス、貴方は仲間ですが、貴方の妹は仲間ではない」
「こいつには後でしっかり叱るから、ここは俺の顔を立ててほしい」
「わかりました」
反抗する気はなくなったのか後で謝罪されたがそれでも暫く経つと俺らのことを忘れてしまう
加護の対価か・・・血縁者でもなければ人を覚えることが殆ど出来ないそうだ
しつこく教育しないとなかなか覚えることはないそうだがエゼル姉貴のことは僅かながらには記憶したようだ、さすがエゼル姉貴
エゼル姉貴の目が治らないようにこいつも治らないかもしれないな
最前線であるのにたびたび問題を起こすデカブツの妹には「このままだとこいつも殺されるんじゃねーかな?」と思ってたけど前線を離れてヨウスケの領地に連れていくことになった
貴族のアホどもは俺らに攻め込ませて自分らは無傷で中にはいって略奪したいって下衆な思いが透けて見えてうざったかったし―――いい機会かもしれない
途中で卑怯者を殺せなかったのは腹立たしく、自分を殴りたくなるが過ぎたことは仕方ない
ヨウスケの危機が迫っているとわかっているのならできることをしないといけない
この女は何度も忘れて、何度も問題を起こす
このヨウスケの領地は元難民が殆どで、ザウスキアは難民の扱いについて「使えそうな純人の難民以外は殺せ」って積極的に殺しにかかってきていた
ザウスキアの王族がいるというだけで殺されかねない
ここに辿り着く前に殺された家族だって居たはずで、さらにヨウスケと養子もしくは結婚して力が有り余っている
今だって部屋の外からこいつに向けられた殺気を感じる
同じ部屋でこいつを見ていないといけないのは苦痛だが、ヨウスケのためだ
「そこの、女、お茶がほしいわ、それと、なにこれ!?なんで縛られてるんですか!!?」
領民からこいつを守る必要もあるが俺も反射的に殴らないように気をつけないといけない
これも旦那を守る妻の役目、なのかなぁ・・
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