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第513話 どこかの誰かの、勇者の話
しおりを挟む意味がわからなかった
どこにいるかもわからない山の中の夜だったはず
・・・だというのに、いつの間にか、建物の中で色んな人がいた
薬物でおかしくなっているわけではない
頭を打ったか?可能性はある、かも知れない
いや、■で頭を撃たれて、幻を見ているのかもしれない
「**** *** ** ****?」
「*** ***** ***」
「******** ********* *****!」
「■■■、僕は頭を撃たれたのかもしれない」
「いいえ、■■■■、私にも何語を話してるかわからない人達が見えてるわ」
■もある、手斧も、ナイフもある
バイクに飛び乗って二人で逃げようとしたが、古い鎧を着た人たちがすぐに門の前に出てきて、何かを言いながら困り顔でこちらになにかいってきている
「***** **** ****」
「****** ********」
「退きなさい!ぶっ放すわよ!!?」
■■■が■を向けても全く警戒していない
槍を持っているがこちらに向けるでもなく、門は開けないんだと交差させている
むしろ困り顔で待ってくれと言っているようだ
なんなんだこいつら・・・■■■だけは守らないと
「***** *********** ********お待ち下さい勇者様!」
「「は?」」
ブツブツいっていた女性がいきなり喋り始めた
「喋れるならさっさと話しなさいよ!!?ほらっ!!こいつらどけて!危ないわよ!!!??」
「待ってください!まずは話を!貴方達も槍を下ろしなさい」
「「はっ」」
「あなた方はディチォーの世界の方のようですね?ようこそ、異世界の勇者様方、まずはお茶でもいかがでしょうか?」
・・・僕たちは、古い物語の世界にでも入り込んでしまったらしい
アーサー王の出てくる物語では竜や精霊や魔法使いが出てくる
古い物語には妖精や精霊が居て・・・ここはそんな世界らしい
兜を外した兵士は犬や猫、鳥っぽい・・明らかに僕たちの常識とはかけ離れた人達がいる
「どこから話したものか・・落ち着いて話を聞いていただきたいのですが?」
「えっと、間違いであるのなら元の場所に返してほしいんですが」
「申し訳ありません、召喚の儀式は神や精霊が『魔王を倒せる可能性のある者』を召喚するもので我々が選んで召喚しているわけではないのです」
「召喚の話は良いから帰れる方法は?」
「・・・・・それは・・・我々は神に命じられて召喚するだけ、招くことはできても別の世界に戻すような魔法はないのです」
「そんなっ」
いきなり意味の分からない世界に呼び出されてすぐに「はいそうですか」と納得できるものではない
「■■■■・・でもそれもいいんじゃない?向こうだと、ほら、あれだったし」
「あ、あぁ、でも、それは・・・」
たしかに■■■容疑で追われていたような僕らだ、仕方ないかもしれないし、こちらの世界のほうが良いかもしれない
しかし別の国、別の場所での一からのスタートはそれだけで大変だ
話せないから、通貨が違うから、仕事がないから、人種が違うからと苦労する
■■■には苦労をしてほしくはない
「それに、私は■■■■がいればそれでいい、他には何もいらないの」
「■■■!」
「■■■■」
思わず席に座らず、僕の横に立っている■■■を抱きしめてしまった
「こほん、お二人の関係はわかりましたがお話を聞いてくださいませ」
「じゃあここで聞くわ」
「・・・・・」
貴族の少女のようなこの場を取り仕切るドレス姿の人に話を聞いていく
出されたお茶には手を付けないし、■■■は興奮して僕の後ろで彼女を警戒していたが僕の膝の上に座った
いちゃつきたいわけではないだろう、■■■はなにかに警戒しているようだ
「無礼だぞ貴様ら!」
「おやめなさい!失礼しました!別の世界には別の世界の礼儀があるでしょう、話を聞いていただけるだけ良しとしませんと・・・」
「しかし姫様・・いえ、わかりました」
引いた兵士に少しホッとする・・まぁ、そんなマナーはないがそういう解釈も有るのか
この世界には魔王が、世界を破壊しようと出てくる悪魔がいるようだ
そしてこちらの神様はこちらの世界や別の世界のどこかにいる勇者を魔法で召喚する
神様や星、精霊の力を借りて、魔王を倒せる勇者を召喚する
「意味分かんないわ、こいつの頭いかれてんじゃないの?」
「■■■、まずは話を聞いてみよう」
麻薬の生産地にでも入り込んでしまって幻覚でも見ているという方が考えられる
意味は分からないが言語の魔法をかけられたりして、言われるがまま彼らの言う神様たちに見てもらった
元の世界に帰るにしても精霊や神様の導きが必要であるしこの世界で生きていくにしても、なにかの力を授かることが出来るのは大切らしい
僕が授かったのは運命の神と力の神の加護で、■■■は霊神という霊と対話できる神様から加護を授かっていた
連れて行かれたキラキラした部屋で、僕は入った瞬間に気を失った
何か誰かと話した気がする、覚えていないが加護をもらえたらしい
部屋で見えない誰かと話す■■■も無事だった
僕が勇者で、■■■はおまけらしい
「勇者様!わたくしと結婚してくださいませ!!」
「俺と結婚しよう!な!大貴族である」
「勇者様・・わたくし、良き妻になりますよ」
「我が領地はミスリルの産地、きっと貴方様のお力になりますわ」
あっという間に女性が集まり結婚を申し込まれた
「なにいってんのよ!?■■■■は私の旦那よ!!ほら!散れ散れ!!」
「■■■様、こちらの世界では加護を授かった人が結婚相手が10や20いるのは当然のことなのです、おふたりともわたくしと結婚いたしませんか?ヤーグル家は侯爵の地位を持った大貴族であります」
「待って私とも結婚って何よ!!?」
「結婚に、男女は関係ないでしょう?■■■■様にも、ほら、結婚を申し込む男達がおります」
「や、やめなさい!!!」
僕の周りの男達はそういうことだったのか?!
マ■■が反射的に胸から■を取り出して撃とうとしている
流石にそれはダメだと抑えた
王様に何を言われても、僕たちは一緒でそれ以上はいらないと言ったが
「ふぉっふぉっふぉ、愛に年齢は関係なく、性別も関係ないというであろう?止めるのも無粋というもの・・・■■■よ、我が正室に向かい入れたいがいかがか?」
「嫌よ!」
「無礼だぞ!」
「フレーグル王の求婚に対してなんという・・・!!」
「ひっ捕らえてしまえ!!」
だめだ話にならない
「<彼女は僕の妻だ!!僕の妻を傷つけるものは許さない!!!>」
「おぉ勇者様、礼を失したのは儂の方でしたな、謝罪いたしましょう・・・フレーデン・ザーベルクはあなた様方を歓迎いたします」
なにかが僕から放出された、気がする
全身に尋常じゃない力がみなぎった、これが魔法?
それから大変だった
■■■とは着替えやトイレで別れた隙にすら貴族共は群がってくる
本当に嫌になってくる
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僕も■■■と疲れ切ってしまった
「私、浮気とか許さないからね」
「もちろん、僕も無理だよ、■■■、君を愛してる」
「うん、なら良いわよ」
■■とは別の意味での逃亡生活が始まってしまった
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