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第489話 大人(勇者)の対応
しおりを挟む「これはこれは領主 代 行 殿」
「何をしているんじゃ?いうてみるがよい」
「騒がせてしまい、申し訳ありません・・我が領地に居た領民が勝手にこちらに住んでいたようでしてな?少々折檻させていただきました」
「ふん、そっちのも、あんたのとこの領民だって言うのかい?」
鎖に繋がれている親子以外にも既に何人か、檻の付いた車に入れられていた
治してそう時間が経っていないのに既に何人か血を流して座り込んでいる
「もちろん!我が領地のものでございます!」
「なるほどね」
「いつの間にか脱走していた彼らを探していたのです!故にこの地を探らせようとしていたわけでも間諜として働かせていたでもありません・・・ここまで騒がせていまい申し訳ありません、代行殿には手間をかけてしまった謝罪として後ほど迷惑料をお渡ししましょう、いかがか?」
「そうかいそうかい!!で、その子らはどうなるんだい?」
「そうですねぇ・・杖刑の後、奴隷として永く民の下において見せしめにいたしましょうか?この親子であれば娼館に売っても良いかも知れませんねぇ」
人を人と思っていないような、嫌な顔をしている
杖刑は杖で打ち据える刑罰だ
棒で打つ鞭で打つなどと同じく、よくある刑罰
すでに何人か血を流している
「あんたさんはそれだけの地位に居るっていうのかい?」
「・・・何度か挨拶したと思いますが?」
少し顔をひくつかせた貴族
「わたしゃ見ての通りの年老いた婆さんじゃからの?物忘れがひどくなってたまらんわい」
「それはそれは・・私はベーデスト伯が長子、レジブ・ラーメルト・ヴェデルナ・ピス・ベーデスト、以後お見知りおきを」
「長くて覚えきれるか怪しいのぉ」
「・・・・・・お歳であれば仕方のないことです」
笑顔でセーセルリーに挨拶したレジブだが覚えられないと言われて笑顔がかたまった
詳しくは知らないけど貴族で、伯爵の長男ということはわかった
「・・・・で、どうされますか?代行殿?こちらも暇ではないのです、他領ゆえ略式ではありますが刑を続けてもよろしいでしょうか?」
「どうしましょうか?」
セーセルリーがこちらを向いてどうするか聞いてきた
他領の貴族相手に、代理の立場だときっと手を出しにくいよね
フードを脱いで杖を出し、前に出る
「ん、全員捕縛で、抵抗するなら痛い目にあわせていいよ」
「何だこのガキ・・・・勇者だと、馬鹿なっ!あれだけの数だぞ!?」
「此奴が領主様を馬鹿などと侮辱したぞ!捕らえるのじゃ!!」
「おっと・・こっちも仕事でね・・・金級サザンが相手をし・・るぉ・・・・・?」
どさどさっと音がして貴族の護衛が崩れ落ちた
彼らの首に小さな針が刺さっている
セーセルリーが常時使っている風の魔法に毒針を漂わせたようだ
金級の傭兵か、それとも狩人あたりか・・周りに何人も護衛が居たが皆すぐに毒に倒れた
「なっ、役立たずが!?わた、わたしはレジブ・ラーメ「―――・・・関係ないよ」なっ、なっ、なにぃっ!!?」
「貴様は僕の息子と娘になった人間を、僕の領地で打ち据えた」
「あ、あぁそれは誤解っで!?」
慌てる貴族だが・・・・・もう遅い
「僕の目の前で僕の娘を娼館に売るといい、僕の目の前で僕の代理に賄賂を支払おうとした・・・そうですよね?レアナー様」
「<そうですぅ、私は見てましたですぅ>」
「うぅう、あぁ、レ、レアナー神??!うぐぅっぐぐぐぐっ!!!??」
僕に杖を向けたがそのまま倒れてしまった
歯を食いしばって口の端から泡の混じったよだれを垂らしている
「セーセルリー?」
「毒針ですじゃ、どうしますかのぉ」
他の、意識を失って倒れた数人とは違って明らかに酷く苦しんでいる
白目で全身に力が入ったまま固まってるし・・死なない?
貴族の分だけ、少し毒が強くないかな?
「殺さずに尋問で」
「ひょほほほほ!流石我が幼父殿!!」
倒れた男たちに対し、いつの間にか集まっていた兵士たちが彼ら一行を結構強く捕縛していた
動けなくても動けないふりかもしれないしね
皆も僕が居ない間に彼らになにか嫌なことをされていたのか「動くな!お、抵抗したな!?」と言いつつも倒れた彼らに向かって蹴りを入れていた
「動かないでね?」
「はい、あのお父さん?でいいのでしょうか?」
倒れた貴族たちは任せていいとして・・・それよりも僕は鎖で繋がれた親子、親の方は頭を打たれている
鎖は聖剣で切り落とし、捕まった数人も含めて、彼らを治癒していく
「治療のときにも言ったけどそういうことだから、これからよろしくね?」
「はい・・はい!」
「ありがとうございます!勇者様お父さん?・・・あれ?じゃあおじいちゃん?」
「ありがとう・・・ございます」
鎖で繋がれた女の子とそのお母さんの旦那さんも檻の中に居た
旦那さんは抵抗したのか結構な怪我をしていた
檻の中には僕に石を投げた子もいたし、すでに強く打たれて死にかけてる人もいる
捕まえた彼らに 丁 寧 に聞いたところ、彼らは本物の貴族であり、ここにはクラーケンとゲーガと海龍の素材を買い付けに来たそうだ
本来なら魔法に耐性のあるゲーガの幼体を連れて帰りたかったそうだがそれが無理でも素材が売りに出されているからそれの売買ができる
ついでに自領から逃げ出した領民を見つけたから捕らえて自領で処刑する予定だった
僕が治療しているのを見て、幸いなことに自分の領地の人間は纏まって動いていて、更に先に治療された
あれだけの人数なら治療されるのには数日かかるだろうし、目をつけていた領地の人間の住処は治療していた場所からも離れていた
ちょうどいいと連れて帰ろうとしていたそうだ
「どこにでも居る腐った貴族ですじゃ」
「うん、どこにでも居るよね」
「3種の魔物はどの素材も魔法に抵抗力がありますゆえ密猟をしようというものも多く居ましてのぉ・・どうしますかの?」
この領地での魔物の仮は基本禁止で、せーセルリーの許可がいる
なにせ魔物はいっぱいいるし、一匹だけ倒せたとしても一晩中うるさくなるし、大抵は海という戦いにくい場所で負けるか数で押しつぶされる
しかも密猟者は危なくなれば村になすりつけて逃げることができる
ゲーガであればうるさいだけだがそのゲーガの声を聞きつけてきた海龍とクラーケンは大きなものであれば崖の上のこの村にまで被害が及ぶ
獲物は減った方がいいし独占したいわけではない、ここで解体してここで売ればそれだけお金になるしね
だけど相手は物凄く強いし、村にとっては普通に迷惑すぎる
「ん、大人の対応してくるよ」
「といいますと?」
「この国のレアナー教と僕に加護をくれた神様たちの神殿に事の次第を通達、ここの王に貴族治療禁止とレアナー今日への出入り禁止ちらつかせてもらうよ、エッサイ神官長に伝えとく」
「それは・・さぞ肝が冷えることでしょうな」
「それと年金と関税だっけ?そっちも言っとくね」
国によって『勇者』や『加護』を授かった人の立場は変わる
敵対している宗教や加護でもない限り、伯爵以上の待遇は当たり前である
貴族も、王も、加護を授かった人の系譜であることが多いことから、加護を授かった人間は王や皇帝よりも偉いという風潮さえある
領民は彼ら貴族が自由にする権利があるかもしれない
しかし、放っておけばアンデッド化するような状態で見逃し、治ったと思えばこうやって連れて行こうとするなど非道に過ぎる
彼らには見せしめの意味も込めて大きな代償を払ってもらうことにしよう
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