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第470話 ジェームズくんの苦難
しおりを挟むアメリカ大統領が首脳会議で来日した
大統領はレアナー教かぶれと言われるほどにはレアナー教に傾倒している・・ように見える
日本ほどではないがレアナー教への容認発言は支持率を集められるのだから大統領の数々のレアナー教に寄り添った行動は大統領にとってプラスになっている
あの血のついた汗臭い鎧を着ることで7ポイントも支持が上がったというのだから驚きである
それが計算されたものなのか、それとも本心なのかは定かではないが数字としてプラスにはなっている
アメリカ人は『大きなもの』や『強いもの』、そして『進歩』が好きだ
夢のあるものならなおのこと良い
大きな山が巨大な鉱物資源に見えるように、宇宙に無限の可能性があるように
何かを開拓し、自分たちのものにするのが大好きだ
レアナー教のオークションで競り落としたものは大々的に報じられている
新たな資源、新たな夢、新たな可能性を示唆された
燃え上がるように希望が見えてくる
もしかしたらいつかその世界と繋がって、夢のような何かを手にできるのではないか?
まだ何もわかってないのに気が早い
だが大統領への記者の質問で「レアナー教をアメリカに招く気はあるか?」というものがあったが「ありとあらゆる援助や特権を与えてでも来てもらいたい、彼らによって負傷したアメリカ人の多くが助けられるだろう」と返していた
世界では「それよりもうちの国に来て欲しい」「これ以上戦争する気か?」「アメリカは世界の敵である」などという意見やネガティブキャンペーンが展開されたが国民の反応はとても良かった
人の命は尊いから?レアナー教に可能性を見出したから?いや両方かな?どちらにせよ数字が肯定的な反応を物語っている
―――だからここにも来るかもしれない
タワーマンションの最上階
優雅な暮らしのためではない、何十人も交代制で仕事している
ヘリポートもあって活動しやすい仮の事務所
レアナー教の対策本部はレアナー城の近くに建設中だが今はこのフロアで活動している
緊急事態にはヘリが来れるという建物
「洋介くんが来やすい立地にしたらどうですか?」と雑に言ってしまった申請が・・・・通ってしまった
通常なら優雅な暮らしをする人間が住むような場所だろうが、ここは何人もの分析官がコーヒーを飲みながらモニターと睨み合っているような優雅さとは程遠い生活をしている
この間まで一般人に近かった私にはありえない場所だ、しかも責任者としてここにいる
ここにも大統領が来る可能性は僅かながらにある
あまりにも光栄だが身震いしてしまう
一応来訪予定表には書かれていないし来ない可能性のほうが高い
ここはレアナー教の情報の集積や対策、それと現地での対応をする機関である
大統領が日本政府と対談する間、日本各地にいた過激派や武闘派と呼ばれる危険人物らのチェックをし続けなければならない
だから私から挨拶に行くことも出来ない
「局長、お客様です」
「だれだ?ここのことは一部の人間しか知らないはずだが?」
「トーマス・ホワイト外務副大臣です」
「職務上出迎えることは出来ない、丁寧に案内してくれたまえ」
「12分後に下に到着する予定です」
上司!上司が来た!!?
これまでの人のミスを探そうとする足を引っ張る上司じゃない上司!いやいや、聞いてないんですけど
大統領の位置と危険な信徒たちの位置情報をもう一度チェックする
信徒たちは問題ない、最近は落ち着いて城に集まっているし、このビルを見張るものも居ない
大統領は・・この近くの高速道路を通るはずで確認はしていたが・・・あれ?もしかしてハイウェイ降りて下の道走ってたりする?
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
「全員!大統領が来る可能性がある!!ここは任せた!出迎えるぞ!!!」
「なんですって!?」
「神よっ?!」
「歯磨き!歯磨きするぞ!!?」
「急いでボディアーマーをつけて下に行くぞ!エレベーターに入り切らない人員は走れ!!」
「しかし歯磨きぐらい」
パニックになってやがる、とにかく命令しないといけない
来るのは構わないが車は停車時と降車時が最も危険だ、周辺のチェックすらしていない
「そんな時間はない!最低人員を残して降りるぞ!!!」
「「「「はい!!」」」」
「残ったものは銃器を出しておけ!なにもないと思うが最悪の場合はここが戦場になる!備えるんだ!!」
「「「「はい!!!」」」」
黒塗りのごつい車に警備の車にバイクを、厳重な警備体制
私のもとにはどういうことかという電話が入り続けているが、それは私が聞きたい
「やぁ、ジェームズくん、以前から会いたかったのだがこんな形になってしまって済まないね」
「いえ、何の御用でしょうか?」
降りてきたのは上司だけ
車のドアの向こうに大統領いたよね!!?
勘弁してくれ!
「君はレアナー城で必要な特別なバッグを常に携帯していると聞いてな、渡してもらってもいいかな?」
「わかりました」
「すまない、この埋め合わせはいつかすると約束しよう」
そう言ってバッグを持った上司は車に乗っていってしまった
やけに疲れた表情の上司だが何だったのだろうか・・?
渡したバッグは私がレアナー上に行くときに絶対に持ち歩いているバッグで、個人的なものだ
レアナー城には多くのセキュリティが存在する
山の上にあることからその道を進むのはレアナー教に関係のあるものばかりで森の中には何人もの人間が見張っている
中に入るにはレアナー教徒でもボディチェックがあるがレアナー城には持ち込みの制限がある
だから外来一般人の上限である100万円と胃薬、まずいスープ用の吐き気止め、緊急時用の衛星電話、モバイルバッテリー、ペンとメモ帳、レアナー様向けのご機嫌取り用の携帯できる菓子類、これらを小さくまとめたバッグを常に持ち運んでいる
最重要人物である元杉洋介は空を飛んでくることがあるし、ワープも可能
だから常に備える必要があるので携帯していたのだが・・・
え?ってことはレアナー城行くの?
過ぎ去った車を見送って、すぐに持ち場に戻る
階段を走って降りてきた部下には申し訳ないがすぐに上に戻る
なんで大統領がそっちに行ったんだという連絡が各機関から来て、電話が鳴りっぱなしだ
私もわからない
分からないが怒鳴り続けられている
「少し保留にして」
「で、ですが」
「いいから」
電話を保留にしてもらい、副大臣にかける
「ジェームズです、さっきのはどういうことでしょうか?電話が壊れそうなほど苦情が来ていますが」
「すまない、ダートがレアナー城に行くって無理やりなんだ、私には止められない」
「わかりました、関係各所にはどう説明しましょうか?」
「うまく説明しておいてくれ!たの
「もしもし?あ、城に入ったのか!?ちくしょう!!?」
すー、はー
「で?副大統領である儂の電話を止めるほどの緊急の要件だったのだろうね?」
怒鳴り声は鳴りを潜め、冷徹な声が響く
そうですよね
こんな緊急事態、こちらの16時ということはニューヨークの深夜2時頃になる
寝耳に水でこんな話聞かされたら怒って当然だろう、きっと秘書に起こされでもしたのだ
「はい、大統領はレアナー城に内密かつ緊急の要件で行かれました、今その裏取りが完了しました」
「・・・・・・・ダートのやつ!?何やってるんだ!!GPSも反応しない場所ってなんなんだよクソがっ!!○○×××!!△△△△△!!!!」
電話先で聞くに堪えない暴言とガンガンと物にあたる音がして・・そっと電話を切った
ペンタゴンへの連絡も同じように「機密なので」で押し通した
さーて、次はどの電話をとろうか?・・・電話の線を引っこ抜いてやりたい
いや、別の考え方をするんだ・・このタイミングで、予定を変更して大統領は動いたのだ
我々のチェックしている危険人物の多いレアナー城へ・・じゃない、世界を動かす「政治的に注目されるレアナー城」へ
我々にも何も言わずそうしたということはなにか重要な意味があるはずだ
バッグの胃薬を飲もう
・・・そうだ、バッグ渡したんだった
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