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第461話 ダートおじさん
しおりを挟む日米首脳会談が終わって会食も終わったのだが日本の同盟国であるにも関わらず日本の海の近くで軍事演習を行ったことは一切話さなかった
流石に一言あるとは思ったのだけど笑顔で何も言ってこないのは不気味だった
それでも笑顔で握手し、これでやっと騒動が終わったと思っていたのだけど・・・
「え?大統領の行き先、レアナー教?訪問予定になかっただろう?」
「それが、予約はキャンセルされまして・・・」
「私も行こう」
「ですが予定が」
「キャンセルだ!!」
結局キャンセルできる仕事はなく、予定通り夕食時に洋介くんのところに行くこととなった
レアナー教の価値は計り知れないものとなっている
それだけ人の命というのが尊ばれるからだろうがそれだけにとどまらない
多くの国はレアナー教の誘致に熱心だ
広大な土地、駅から近い好条件、免税や特権を提示している
国によっては雑居ビルへの誘致をしたりと意味がわからないがおそらくはレアナー教というよりも治癒魔法が出来る機関を誘致したいのだろうな
日本に現れたレアナー教だがそれだけで経済効果が恐ろしく上がっている
渡航目的に「レアナー教に行く」という項目が上がってきているほどだ
動けない身体が治ると「どうせこんなに遠くに来たのだから」と観光するものも多いし、レアナー教関連施設の近くに住み着くものも増えてきた
まだレアナー教が、レアナー様と洋介くんが日本に現れてから1年と経っていない
しかし調査会社によると海外からの移住者の数がまだ一年と経っていない途中経過であるにも関わらず前年比で300%も上がっている
とんでもない経済効果である
洋介くんも洋介くんで日本のいたるところで食料を買い漁っているし、世界中で同じようにしている
手続きや防疫に・・問題もあるだろうがレアナー教を快く思っていない機関も多いことから彼らは未だに反社会団体やテロリストに狙われている
仕方ないと言えるだろうな
一部指名手配をしている国もあるようだがレアナー教を攻撃する機関や個人は現地民から猛攻撃を受けている
わかるよ、うん、日本でもそういう事があったね
ダート大統領の目的は明らかに誘致だろう
流石に大統領本人が来たから対応しているのかと思ったら洋介くんは気が付いていないようだ
いつ気が付くかとニヤニヤしているダート大統領だが洋介くんは基本的に世間の有名人に無頓着だ
サッカーを知らない人でも知っている世界最高のサッカー選手が怪我をしてこちらに来たのだが全く特別扱いしていなかったしサッカー自体をわかっていなかった
「へー、サッカーってやつの選手なんですね」
「サッカーを・・・知らない?それは人生の大半を損をしている、どうだい?一緒にやってみないかい?」
「他の人の治療が終わったらやってみようかな」
「よっし、準備して待ってるよ!」
なんてやり取りを見たことがある
しかもサインボールの価値もわかっていなくてサインボールそのまま使っていた
「旨いな!!天ぷら!!!」
「牡蠣にこんな食べ方があったなんてな・・・」
「素晴らしい!!」
今日の食べ物は天ぷらだ
本来はとんかつだったのだが瀬戸内の牡蠣業者のご主人を治すと先程届いたとのことだ
寒い時期の牡蠣はやはり格別だ
だが政治家にとって牡蠣は結構危ない食べ物だ
牡蠣は当たると酷い目に合うがそれよりも「そんなものを食べて政務を休むなんて何を考えているんだ」という意見がガンガン来ることになるのだ
生食用海域で育てられた牡蠣を生食用に処理し、専門の業者が丁寧に処理していたとしても当たる人はなぜか当たる
だけど今日はこのまま泊まりの予定だし大丈夫だろう、当たっても対処してくれる魔法がここにはある
献立はとんかつのはずだったがこちらのほうが旬である
砕かれた氷の上に載った殻の上の生牡蠣
レモン、ポン酢、柚子、タバスコ、ウィスキーなどをかける
磯の香りに牡蠣の独特な風味、ちゅるりとレモンで食べてみる
牡蠣は当たる当たらないもあるがこの癖で食べられないという人もいるが素晴らしい味だな
生牡蠣だけではなく牡蠣づくしで牡蠣鍋に牡蠣ご飯、カキフライに牡蠣グラタンに焼き牡蠣
食べれない人のためか大葉にしいたけに舞茸、れんこん、海老、春菊の天ぷらも用意されていた、調理する職人ごと
牡蠣の佃煮?食べてみようじゃあないか
・・・・・純粋に食事を楽しみたいのに今日はダート大統領がいる
大統領はレアナー教に関しては推進派の立場を取っている
未だ猜疑心を持つ人間も世界には多いが彼は完全にレアナー教に傾倒している
この間のオークションの品を目の前に子供のように手にとって自分で鎧甲冑を身に着けていたほどである
牡蠣は好きらしく、うまそうに食べているが腹の中はどうなっているのやら・・・
「カキフライはステイツのとは違うな、こっちのほうがうめぇ」
「・・・・・・レンコンが美味しいですよ、大・・ダートさん」
「いいね!日本人は何でも改良するのが上手いな!」
トーマス外務副大臣、今大統領って言おうとしたが言い直したところを見るにお忍びで来てるのは確定か・・
「ところでダートさんは何やってる人なの?」
「ん、私か?・・・何やってると思う?」
「んー・・・」
洋介くんが皆の態度に疑問に思ったのか直接聞いた
全員が二人を見ている
わかってないのは洋介くんだけか・・ボブは笑ってるし黒葉くんはヒヤヒヤしているようだ
「アメフトの監督?」
「ふはっ!いいね!そういうこともしてみたかったんだが・・・私はアメリカ合衆国大統領だよ」
「大統領って偉い人だっけ?首相とどっちが偉いの?」
「「「「「ハハハハハハハハ」」」」
何人か腹を抱えて笑ってしまった
ダートもサプライズに失敗したのを悟ったのかポカンとしている
私も笑うのは立場上よろしくないのだがあまりにもドヤ顔のダートの顔に笑ってしまった
「ハハハ!気に入った!」
「え?どうかしたのダート・・おじさん」
「それでいい!そのままでいい!ダートおじさん!ダートおじさんでいい!!フク・・クハハ!!ハハハハヒー!」
まぁ空気が悪くなるよりは良いだろう
少し引き気味な洋介くんがダートおじさんといったことで身悶えている
機嫌が良さそうなダート大統領だが少し気持ちはわかる
偉くなると下に置かない扱いをされすぎてこういう「誰ですか?」という扱いが新鮮なのだ
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