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第457話 不穏な影と消えた軍
しおりを挟むなかなかに首都の抵抗は激しい
分厚い壁に高い壁、強い防御魔法
兵の練度も高く、なかなかに強い
流石にザウスキア覇王国の我が精鋭共
・・・・本当にくそったれだ
「我こそはアダバンタス・レーダ・レス・ザウスキア!王は魔王によって傀儡になっている!首を落とされたくなくば我が軍門に降るが良い!!!!」
返答は火炎球だった
盾で弾いて全力で城門にぶち当たる
ガァァァァン!!
「ちっ」
失敗した、門は破れなかった
すぐに後ろに逃げる
既に壁の上の防衛魔道具は破壊して脅威はないが上からの魔法が少し厄介だ
「さっさと来い!ぶん殴るぞ!!」
「助かる!!」
シーダリアが来て助かった
城門ぐらいぶち抜くつもりでぶつかったし引こうとして豪雨のように魔法が頭上から飛んできた
頭上にシーダリアが結界を張ってくれたおかげで大した被害もなく後退することが出来た
「頭のおかしいぶ厚さだな」
「俺が行こうか?」
「やめとけ、城の前は風が吹いてる、重みが足りんぞ」
「そーかデブ、頑張れよ」
「 巨 人 の 血 だ ! 」
ガンッ!!
「あんやんのか!?ぶ ん 殴 る ぞ 」
「殴ってから言うなチビジャリが!!!」
「止めろ阿呆共、それよりもまずいことが起きた」
「姉貴!どうかしたか?」
「うむ、それがな、中央を任せていたケッケスの軍が消えた」
「誰だそりゃ?」
だれだ?ではなくどこの軍かが問題だろう
今の連合軍はだめだ、肥え太って醜いくそだ
連合軍は魔王討伐を主たる目的として動いてきた
発足時は貴族のくそったれ共が率いたくそったれな軍で自分の利益ばかり求めたまごうことなきくそったればかりだった
まともに連携も取れていなかったが共通の敵があまりにも強くて・・・・・生存をかけた戦いだと皆本腰を入れた、入れるしかなかった
酷い戦場で、生き残って洋介さんと合流さえできれば格段に生存率は上がったがそれでも発足時の大半は死んだ
死なずに生き残って、新たな人員と戦っていくうちに身分も関係なく頭角を現して精鋭と言えるまで強い軍となった
皆、死にものぐるいでようやく魔王を倒せた、しかし、一度魔王を討伐したことで解散を提案された
当たり前だ、世界の脅威に対して皆が一致して戦うことを考えて作られたのが国際連合軍である
目的を果たした以上、連合軍なんて扱いにくいものを王や貴族共が好くわけがない
残りの魔王軍幹部を倒すことを目的に一応は続けられたがこちらも被害が多かった
国元に帰る軍もいたし、一度国元で再編されるものもいた
戻ってきた連合軍は発足時よりも悪くなっている
魔王との戦いに参加していないくそったれ貴族の長子共が箔をつけるためにも『魔王軍を討伐した実績を持つ』連合軍に入って幅を利かせている
実際に魔王と相対したのは洋介さんだけで、魔王幹部と戦ったのは勇者の仲間であった俺達である
軍の数は増えたが使い物にならないくそったればかりだ
何が「湯浴みをするから軍を停止する」だ、頭の中にはくそが詰まってるとしか思えん
・・・・・ふざけたこともあるが仕方ないことなのだろうな
だが、もっとふざけているのは『ケテスティアの予言』が終わっていないことだ
『洋介さんは召喚された最後の勇者で負ければ人の世は終わる』
未来予知・予測の出来る三神の加護を授かった巫女がザウスキアにはいる
ケテスティア・ミーゲスヴィ・ザウスキア
この予言を伝えた巫女はザウスキアでこの予言を伝えた後は神殿に籠もって姿が見えなくなった
どうせなので途中で引っ張り出した、妹だし
俺のように先祖返りで巨人の血を色濃く出てしまって辺境に飛ばされていたのと違って神殿の奥、誰もいない聖域に一人でいた
かわいそうに、神殿ごと土で埋められてしまっていて自らを石と化して飢えをしのいでいた
問題なのはあの瘴気を撒き散らしていた魔王が死んだというのにまだ予言が終わっていないことだ
この国は元々きな臭い
ザウスキア現王である親父殿は相談役の言うことは何でも聞く
首都に住んでいた頃、人神神殿の神官の説法では『人こそ、この世の正義である、他の亜人という混じりものは罪を受けた憐れな生き物である』『使って当然、罰して当然、世の穢れ』などと教わった
しかしザウスキアから戦闘の出来る王子ということで洋介さんの監視兼道案内をした道中、他国に伝わる人神の聖句が違っていた
『亜人とは人にそれぞれの力が影響して変わったもの、耳鼻手指の長い樹人とエルフは人から派生した近しい種であり、更に羽の生えた妖精種に近いものもいるが元は同じ人』『亜人は人である、であるのならば共に手を取り合い、共に慈しみ、共に進もうぞ』
なんて書かれていて唖然としたものだ
エルフといえばザウスキアでいえば価値の高い使い勝手の良い奴隷でしかない
人と亜人は明確に区別されていたし「亜人を人と同じ」なんてこの国で言えば頭のおかしいやつとみられることだろう
どこかの段階、いつからかこの国はおかしくなっている
そもそも王族にも亜人の血は流れている
俺は他国から嫁いできた母の巨人の血が流れていて先祖返りした
シーダリアたちの戦ったデデスガよりも小さいが、普通の人の2.3人分の大きさはある
妹も額に目があるし、姉は頭に鳥の羽が生えていた、兄は身体の何処かに鱗が生えているそうだ
であるのに俺達は王位継承権を持ったままだ
まぁ誰かが王の座を継いだ時に亜人である俺達を奴隷落ちさせて引き締めようとしたのかもしれないな、父の時はそうだったらしいし
それにしてもまずい、ケッケスの軍ということはレアナー教国から首都までの交通の要地セヴェルの辺りだ
彼らがいないということは裏切ってこちらに攻め込んできたのなら挟み撃ちにされることになる
もしくは瘴気の吹き荒れるこの国にいられなかった兵どもの避難所であるレアナー教国の国境に向かって進軍した?
いや高位アンデッドでも出てきて全員壊滅したのか?
・・・・いやいや、それらはおかしい
消えたという報告、軍そのものがどこかに移動したはずだが山に入れば目立つし、セヴェルの周りの道の先には別の軍がいるはず
軍が痕跡を残さずに居なくなるなんてありえない、戦闘が起きたなら起きたで別の軍に伝令が走るはずだ
続く道の彼らのうち誰かが裏切っている可能性・・ないな
単純にこちらへの伝令が遅れているだけという可能性もあるが・・・向こうが当たりかもしれんな
この巨大な城壁、堅牢な門の向こう側にある首都、そこの迷宮に魔王軍幹部の生き残りがいると俺達は考えた
迷宮を辿って魔王幹部を追っていくうちにこの国に出たし、途中の怪しい施設ではこの国の迷宮の誰かに送る書類もあった
しかし、軍一つ、痕跡もなく消えたのならその地に首魁がいるのかもしれない
魔族か魔王幹部がそのあたりにいるはずだ
可能性はこちらよりも低いが一度動かざるをえない
何もせずにここにいれば下手をすれば挟み撃ち、あの門自体の厚みと防御力をすぐに打ち破ることはできない
略奪する気満々のくそったれ貴族だが被害は被りたくないとなかなか前に出ない
数だけはいても役に立たん
むしろ足を引っ張るためにくそな行動をしてるのかと理解が出来ないことばかりしてくる
しかしここも無視することはできん、なにせ敵軍の主力だ
軍がまとまっているうちは空からの攻撃はないが散ってしまえば良い的にされるだろう
どこからか現れるゾンビ共も厄介だし・・ここで腰を据えて戦うしか無いか
「よし、チビジャリ、お前らは・・殴んな!?」
「うっせぇさっさと言え!オルァ!!!」
仲間もこんなのばっかり・・飼い主である洋介さん、こっち来ちゃ駄目だけどシーダリアだけでいいから、いやこの3人だけでいいからどうにかして欲しいものだ
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