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第456話 お好み焼き

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たこ焼きパーティにしようとしたが残念ながらタコがなかった

代わりにお好み焼き

大学で遥たちと食べに行ったことはあったけど、一人暮らしを初めてから一度も食べてなかったな


「はい豚玉お待ち、海鮮ももうすぐ出来るよ」

「大阪風じゃなくて広島風も食べてくれ!!?」

「イカ焼きはイカの姿焼きじゃないよぉ!」


お好み焼き、小麦粉に出汁や卵、山芋、キャベツや紅生姜なんかをいれた生地を焼いて肉や卵焼き、焼きそばにイカやエビを載せて焼く料理だ

イカ焼きは名称は同じでも土地によってイカを焼くのか、イカ入りのお好み焼きかは別らしい


少し焼けたソースの香りに酸味のあるマヨネーズ、踊る鰹節に青のり

お好み焼きといえば大阪風と広島風が有名だがそれだけではない

関東とそれより北ならもんじゃ焼き、昆布のはいった富山のお好み焼きに、金時豆のはいった徳島県の豆焼き、沖縄のツナ缶とニラのはいったヒラヤーチー、市の名前のはいった各地のお好み焼きなんてものも有る

山芋や紅生姜、青ネギたっぷりに桜えびのはいった生地など、実は地方色に富んだ料理だ

もちろん家庭でも違うし、大阪風と広島風も実は具材や配合が違っていたりする

大阪はたこ焼き器やヘラは各家庭に存在し、お好み焼き用に使われる1.8リットルのソースが何十種類も棚いっぱいに置かれている店も有るのだから他とは需要も消費も異なることが伺えてしまう

地方や家庭で作り方も違うこの料理、大昔であれば駄菓子屋などでも食べられたお店もあるのだという・・・

人が集まって料理をすると地方色が違うからかこうやってお祭り騒ぎになることが有る

もう、正月のようなお餅は勘弁してほしいが


レアナー教も、レアナー様と元杉神官、私とヤクザの十数人しか居ないときと違ってもう大所帯だ

作り始めるとこだわりのある人がそれぞれやり始める

広島出身の神官さんは鉄板に薄い生地を伸ばし大量の千切りキャベツの上に薄くスライスした豚肉を載せてプレスして作っている

聖騎士部の山田さんは筋こんにゃくというものを載せて作り

聖騎士兼法務部の村田さんは何故か鉄板に顔を近づけて慎重に丸く作ろうと頑張っている、完璧主義なのかな?髪が焦げないか心配なんだけど

遥は直子お義母さんに鉄板から引っぺはがされた・・・・ヨーコもなんか作ってる


「あ、黒葉サん!」

「はい?」

「一緒に食べまセんか?!」

「・・・・・いえ?私は元杉神官と食べるので」

「そうですか・・そうですか」


内田さんがなんか笑顔で出来たお好み焼きを持ってきた

全身に黒い入れ墨が入っていて凄く怖い

なにげにこの人とんでもない力が出せるし銃弾が当たっても問題ない

あれかな?漏らしたこともあるから誰かに話してないか心配なんだろうか


まだあまり出来てないようだし今はお腹も空いていない

私が居なくても誰か食べるだろう


以前はヤクザばかりのビルで私ぐらいしかまともに料理できなかったから作っていたんだけどなんか寂しい


「ねぇ、六太さん、美味しい?」

「お、おう」

「やった、私、六太さんのために頑張って作ったんです!嬉しい!!」

「ぉ、おう」


神田姉妹も六太さんに猛烈にアピールしている

村田さんも丸く焼けたお好み焼きを康介さんに持っていっている


不思議なものだ


レアナー教が大所帯になったのは良いことなんだけどなんだか寂寥感がある

私は最近レアナー教での活動は最低限で大学のレポートに追われている

真面目に単位を多く取っていたのでうまく行けば3年で卒業に必要な単位を取り終えて後は卒論とゼミと就活だけだ

就活はもう出来てるんだけどね


私も忙しいけどレアナー教が忙しいのにその中に私が居ないからかなんとなく寂しい気がする


六太さんと神田さん

イタリアのピザ屋のお兄さんと信徒のお姉さん

他にも離婚したての康介さんも村田さんにアタックされている


愛の宗教であるレアナー教

信徒や神官、聖騎士の中にも多くの恋愛が始まっている


だから、こう、ヤキモキする


私はいつの間にか元杉神官を好きになった、それはたしかだ

ふとした仕草や、こんな便利なものがあるのかと驚いた表情、私の作ったものを「この世にこんな美味しいものが有るのか!?」ってレアナー様とびっくりしてるときなんて嬉しくてたまらなくなる

けど恋愛なんてしたことのない私には何をどうアプローチすれば良いのかわからない

せいぜいが美味しい料理を作ってあげるぐらい


人並みには料理が作れてよかった


遥の料理と比べられるのは不本意だけどあれよりかは確実に美味しいはずだ

デートもしてみたりしてみたいけどそこまで具体的にどんなデートをしてみたいのかは考えもつかない

今は本当に忙しくてそういったことをする時間もないんだけどね


・・・・もしかしたら大学の勉強も意味は無いかもしれない


学長達なんて大学で私を見かけると手揉みして私のこと見てくるからね!?

ほんと止めて欲しい

せめて人の視線は気にして欲しい

タスクは考えてこなしているし予定通り順調に進んでいる、難題も残っているがそれもきっと問題はないはずだ

だから全部うまく行っているはず・・・けど、それでも人の喧騒から離れて一人でいると色々と考えてしまう

あー、ネガティブになってるなぁ


コンコン


ドアを二度ノックされた、位置が低い?


「はーい」

「黒葉、開けてー」

「元杉神官?今開けますね!ちょ、ちょっとまってくださいね!!?」


ヤバイ、部屋が散らかっている

参考書が散らばっているしパソコンにプリンターに、私の服にカメラ

アホスライムは部屋を荒らすし言うことを聞かない

ベッドの上のシャツ、元杉神官のやつだ!!?

収納袋に全部しまう、オマエモハイリナサイ!!!

魔力で全身強化し、あるもの全て!!!


「大きな音してるけど大丈夫?」

「は、はい!い、今開けますから!!!」


元杉神官は両手にお盆を持って、その上に埃が入らないように銀色のクローシュが被せられている

中身はきっとお好み焼き、両手に持ってたからドアを蹴ってノックしたのね


「一緒に食べよ」

「は、はい」


部屋にあるのは机とベッド、と衣装ケース、それとカメラだけ

元杉神官は思った通りお盆にお好み焼きをいくつか持ってきてくれた

いや、なんだこれ?


「これは?」

「ヨーコ作、変な形のお好み焼きと上の盛られたのはたこ焼き」


遥作じゃなくてよかった・・ボコボコとした形のお好み焼き、半球の塊がお好み焼きらしきものからせり上がっていてその上にたこ焼きが更に載っている

たこ焼きプレートでそのまま作ったんだろうな・・見た目はあれだけど、これ何いれたんだろう?

異世界の変なフルーツいれてないと良いなぁ・・

というかお好み焼きだけじゃなくてピザもある

あまりお腹が空いていなかったのだけど料理を見てお腹が空いてきた


豚玉、海鮮、ヨーコ作のよくわからないたこ焼き載せお好み焼き


「美味しいね」

「そうですね」


なんとなく、いや、元杉神官には美味しいものを食べてもらいたいなと思ってヨーコのものを食べてみたんだけど美味しい

上のたこ焼きはソースがかかっておらず、中身はサイコロステーキ、ホルモン、にんにく、チーズ、そぼろ、きんぴらごぼう、鮭フレーク

ま、まぁ美味しい

中身に強い味がしていて生地自体には出汁などは入っていない・・・にんにく一かけは明日が怖いな

下のお好み焼きとたこ焼きのミックスのような物、半球状のたこ焼きプレートの窪みの部分にはタネもはいっていた

中身はいちごと、プリンと、チョコ・・変わり種ばかりの中でも美味しいけどヨーコたこ焼きにハマりすぎでしょう・・・

元杉神官はいくつものお好み焼きを食べている

ここ最近フードファイターのように量を食べる、幸せそうに食べているのは私も見ていて嬉しい

頬についたソース、美味しいものを食べて嬉しそうな笑顔


「んっ」

「ソースがついてますよ」


ほっぺについたソースをウェットティッシュで拭ってあげる

大人の状態であればもっと格好がついたかもしれないが子供の状態の彼であれば完全に保護者だ

16歳にしては見かけが幼いと言ってもいい


・・・・・でもなんでか、本当に好きなんだよね


身長差や元杉神官の精神年齢を考えればかなりヤバイとはわかっている


「どうかした?」

「なんでもないです」


いつの間にか元杉神官のことを考えない日はない

だけどこうやって一緒に生きていけるんだから焦ることないかな

ただ一緒に食べてるだけなのにな

胸に満足感が広がってくる


明日からも頑張れそうだ


ドアの隙間からニヤついて覗いてるレアナー様、ドア蹴り閉めますよ?
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