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第441話 奴隷と商売と決意

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「こちらのボールペン、300本で金貨で17枚、銀板3枚、銅貨6枚で売れました」

「個別の品目ではなく売り切れ品目と入ってきた金額だけお願いできますか?」

「はい、コピー用紙15000枚、分度器62個、鉛筆50箱、消しゴム36箱・・・・」


領地に物品を売りに来たが現地で販売してる人に報告を受けた

戦争が起きているわけだし領地として僕達との付き合いを有益だと知ってもらいたい

こちらで作る軍用スープとダイドンの茎の量も半端じゃなくなってきている

ダイドンは雑草でどこにでも生えているし踏むととても痛い、指ほどの太さで固く真っ直ぐ伸びる茎だが枯れると粉っぽくなるか腐ってしまう

3年ほどすると確実に粉っぽく柔らかくなるので建材にも使えない

だけどどこにでも生えるし世話もいらないから栄養を取る目的なら・・・顎が弱くなければ大丈夫だ


「最終的に大陸強要金板18枚、ミスリル65キロ、翠貨22枚、蒼貨65枚、紅貨7枚、光板4枚、宝石は金貨550枚分となっております」

「ごめん、全部金貨でだと何枚分?」

「国ごとにも貨幣価値が異なりますし変動もありますのでピタリとは言い切れません」

「そっか、そっかぁ・・・・」


ムッスロンに言われて黒葉が難しそうにしている

パソコンで在庫管理しようってノートパソコンを開いていた黒葉と田辺だが固まってしまった

こちらの世界では国や地方で価値のあるものが違う

ジャラジャラと出された金貨は大きさも綺麗さも汚れも違う、パッと見どう見ても石のようなものも混じっている


それに価値が優先なので物々交換もしていて武具も多い


他国からの距離も考えるとミスリルや宝石、魔石や結晶体に核、魔物の素材も積み重ねられている、重くて価値のあるものは少なくてよかった

あと僕からの厳命ってことで名誉のあるものとかはできるだけえぬじー


数代前の王様の若い頃のありがたい軍服とか僕から見てただのゴミである


絵も美術品も駄目、真贋を見極めても管理できないし、正直いらない・・・捨て値でもいいから引き取ってくれっておいておく人のなんと多いことか

増えている倉庫で察したけどあそこを田辺たちに見せると大変だろうな


こっちの世界にはインターネットも電話もない

高額な魔道具を使って情報の伝達はできるけどそれでも日数がかかるし、そういうものの取引をできるだけ禁止してるように言ってもなかなか伝わらない

それでも賢い商人は嵩張らずに価値の高いものを持ってくることが多いのだけど・・やはりザウスキアの美術品は多いのだろうね


「異世界の商品はものすごい人気でして、いやぁ売るのが楽しいですな、ホッホッホ」


大きな鼻を赤くしていう小太りのムッスロン

行商や食料の仕入れを頼んでいたのだけど今は領地の商売を任せている

お客さんはいくらでもいるしね


「こっちで別の商売したいんだけど場所あるかな?」

「どんな商売でしょうか?勿論ここはお父さんの領地、お好きにしてもらって大丈夫ですが」

「料理店をしようと思ってね」

「とても助かります!」


少し嬉しそうなムッスロン、日本の料理はこちらに持ってきているが最近は日本のレアナー城の人数が増えたので減らし気味だ


「あれ?食料足りてない?」


かと言ってこちらにも結構な量は持ってきているしそもそも他の領地からも取り寄せているはず


「最近この領地は連合軍とレアナー教国からザウスキアに行く者たちの流通拠点となって物資が高騰していまして、それとザウスキアから解放された奴隷の数がものすごく多いのです・・・既に10万を超える奴隷がここを経由しています」

「なるほど?」

「多くの奴隷は解放されてその後の人生をかけてザウスキア内で戦っておりますがやはり戦闘に向かない女子供は多く・・・この領地からレアナー教国までは既に難民で溢れています」

「食料は持ってくるからうちの領民にして、良いですよね神様?」

<もちろんですぅ>

「レアナー様もいいって」


いつも通りのレアナー様、助けられる人は助けるべきだ


「お父さん、どうせなら全奴隷を一度ここに集めるのはいかがでしょうか?」

「ムッスロン!それはお父様への負担が多すぎる!わかっているだろう?!話し合ったはずだ」

「エシャロット、ここにいる皆は元は似たようなもの、手を差し伸べるべきではないか?」

「それは思う、だけど今の俺達は立場がある!御父様の利益を一番に考えるべきだ!」

「それも一理あるかもしれません、しかし・・奴隷の奪い合いが水面下で行われています、止められるのはお父さんだけでしょう」

「まって、事情をもっと詳しく」


奴隷は国によって制度が違うが基本的に市民よりも下の身分である

犯罪を犯してなるものもいれば生まれながらの奴隷も居る

彼らは貴族にとって資産や価値のある物である

連合軍は彼らを解放しているが奴隷の中にも加護を授かったものは居るし技能を持ったものもいる

ザウスキアは覇権国家として戦争大好きだし技能や知識を持つ奴隷は多い

彼らを連れて帰ることで利益となるのならこっそり連れて帰ろうとする貴族も居るだろう

ザウスキアの不審な魔族とのつながりから始まったこの戦争、蓋を開ければ明らかにザウスキアと魔族のつながりが明らかになってきているそうだ

ザウスキアの中にはアンデッドも多くいるそうだが目的に突き進むだけが人間ではない

欲の塊のようなゴミクズ貴族も参加しているのだから『打倒ザウスキアと打倒魔王幹部』という目的から逸れて奴隷の1人や2人、連れて帰っていても不思議ではない


「今なら彼らをまるごと助けることが出来ます・・・が、お父さんの金銭的負担があることも確かです」

「・・・わかった、やろう」

「お父様!?」

「エシャロット、僕の心配ありがとうね」


エシャロットの頭を撫でる、最近大きくなったり小さくなったり練習してて距離感がつかめず少しグリグリと撫でてしまったがまぁ良いだろう

強く犬耳を潰してしまったがエシャロットも嬉しそうだ


「僕はお金に興味がある訳じゃないし、向こうの世界でも結構稼いでるんだ、僕が助けることができるなら助けられるだけ助けたい」

「わかりました・・・しかし大丈夫でしょうか?」

「た、多分?・・・・・・田辺?」


地球では物凄く稼いでるはずだがどれだけこちらで使えるのかよくわからない


「大丈夫です、交易はうまく行っていますし聖下の治癒魔法だけでもきっとお釣りが来ることと思います、ただインフラ整備はしたほうが良いでしょうね」

「いんふら?」

「元杉神官、任せてくれれば私たちはできると思います、必要なのはレアナー様と元杉神官の承認だけです」

「<わたしはよーすけに任せますぅ>」


レアナー様が肩から降りて僕の魔力で人の大きさになった

真後ろに立ったレアナー様が椅子に座ってる僕の上から覗き込んできた

子供状態の僕よりも魔力を捧げたレアナー様のほうが大きい


よく考える


今の僕は魔物との最前線で仲間に向かって治癒魔法をぶっ放しながら前線で戦う存在ではない、地球でレアナー教を率いている元杉洋介だ

収支のバランスも聞いているが問題ないはずだ、ただザウスキアの解放される奴隷の人数はわからない

安請け合いは問題かもしれないが・・・


「僕はやれるだけやりたい、どれだけ居るかわからないし途中でやめることになるかもしれない・・だけどやれるだけやろうと思う、良いかな?」

「勿論です!」

「<よくいったですぅ>」


レアナー様に抱きかかえられて・・・振り回された

人を助けること、人を愛することをレアナー様はとても喜ばれる

振り回されない大人モードのほうが良かったかな・・?
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