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第435話 愛の”価値”

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どう思います?レアナー様

<よくいる勘違い貴族ですぅ>


こういう手合いは結構多い

この人は「自分は自分は」と言っていて将来自分の相手となる人のことを全く考えていない


自分を高く見せ、自分を大切にすることは良いことだ


良い服を着ることで身分を表し、旅行によって見識を得る

金銭があれば自分に降りかかる不利益に備えることができる

金の力ではどうにも出来ない相手も居るかもしれないが金で壁を築き、金で兵を雇い、金で食事にありつけるかもしれない

自分を大切にすることで、身を守り、愛を知り、幸せを知れるもしれない


<この人も良い相手が見つかるといいですねぇ、そういう幸せもあるかもしれないですぅ>

でも、よく失敗したって嘆いてくる貴族も多いですよね

<相手が全てを受け入れてくれて幸せになれることもありますぅ>

そうだよね、何に飢えているのかはわからないけどそれらの欲求の全てを受け入れてくれるかもしれない

<でもそんな相手は少ないですぅ、わがまま放題、まともに相手のために愛そうと行動できないならそっぽ向かれても当然ですぅ>

でも変わる可能性もありますよね?

<結婚は人を変えることもありますぅ、この人も変わるかも知れないですぅ>

ちょっと難しそうですけどね

<理想が高すぎるですぅ、この人は多分変われないですぅ>

「それはちょっと悲しいですね」

<ちょっとした縁もありますぅ、説教してやるですぅ>



「なにか言ったかしら?」

「少し助言をいいでしょうか?」

「なになに?おねーさん聞いてみたいわ」


この人、42歳だそうだけど亜人か長命種だったりするのだろうか?僕の倍は生きてるけど


「おそらくですが、このままでは貴女は幸せになれません」

「え?私は貴方がいれば幸せになれる、そう思うのだけど」


レアナー様が変われないと言っているのならきっと彼女にはこれまで理想の相手と出会って駄目だった経験があるのだ


「僕はもう人生の相手を見つけています」


赤くなった美智子さん

なんだろう?怒ったのかな?


「そんなまっすぐ言われると恥ずかしいわ」


・・・・・??え?僕のことだと思ってる?


「貴女のことではないです」

「そんな照れちゃってぇ」

「照れてないです」


何故かくねくねしている美智子さん

なにか嬉しそうなんだけど・・意味がわからない


「僕は既に人生を一緒に過ごしたい相手を見つけています「私のことでしょ?」違います、貴女ではない」

「えぇ・・期待させといて何言ってるの?」

「期待させた覚えはないです・・・あれ?歳三さん僕変なこと言ってました?」

「いや他の人にもしていた質問ばかりだったね」


歳三さんは僕のことが心配だったのかずっと近くにいてくれた

何人かは僕のことを気にしていたのがわかる

参加者の最低年齢よりも若いしレアナー教の人間がいること自体珍しいのかもしれない


「まぁいいわ、私と貴方の関係、ここから始めればいいのだから」

「貴女のことは恋愛という点で興味がありません」

「まぁ!照れちゃって!!」

「照れてないです」

「ふふ、わかってるわ」


話が通じてない


「貴女は間違っています」

「・・・・どこがか教えてくれるかしら?貴方のためなら私は直すわ」

「僕のためではないです、えっと、貴女は自分のことばかりで大切なことを間違っています」

「間違い?この私が?」

「結婚で自分が幸せになる、とても大事なことです」


これは間違っていないはずだ

この人に言葉が通じているかは分からないが伝えるだけ伝えてしまおう


「でも結婚とは一人では出来ない、相手のことを尊重するべきだ」

「私と結婚できるのだから、相手はそれで幸せでなくて?」

「そういう人を見つけるのもいいかも知れません、しかし、自分が相手を尊重しない以上、相手に心から尊重されることは殆どない、だから幸せになれることはめったにない」


政略結婚で相手に尽くすことはある

だけどそれは利益によってもたらされたものであってそこから正しく愛することは少ない


「そういう相手も居るかもしれないじゃない?」


勿論愛に発展することはあるがそれはとても少ない


「貴女はお金があるようだけどそれで付き合ってきた男性はお金目的の人も居て、最後には去っていったんでしょう?」


いかに自分が素晴らしい女性であるか、数々の男性と付き合ってきて自分は経験豊富なのと言っていたが、ではなぜここに居るのか

ひどい男に騙されて金を巻き上げられたこともあるとも言っていたが貢いで捨てられたのだろう


「こっちから振ってやったのよ!」


強がりだ


「利益あっての愛は利益無く行える愛に比べて脆弱なものなのだから、金銭ではなく他者を愛することのほうがもっと価値があるのです」


政略結婚も同じだ

領民のため、領地のため、誇りのため、金のためと結婚する

愛は芽生えるかもしれないが状況が変われば愛も終わってしまいかねない


「理解できないわ」

「愛はこの世の中で最も価値があるものだと僕は思います」

「・・・・・・はっ?」


レアナー教の価値観かもしれない

自分のことも大切にするが怪我をしている飢えている人がいれば助ける

愛こそが社会を作り、愛こそが人々を助けるものとなる

愛こそが最も価値のあるのだ

だから神官は倒れるまで人を助けようとするし、利益を考えない


「愛にも種類があると思いますが愛する人から差し伸べられる無償の愛、これはお金がいくらあっても手に入れられるものではありません」

「な、なによ貴方」

「例えば子供の世話、お金を払えば出来ます」

「・・・そうね」

「でもお金でどうにかできるのならお金によって愛を表現する、そういった意味で愛とはお金で買えるように見えるかもしれません」


考え方も違うかもしれない、しかもこれは彼女にとって押し付けである

彼女の心には届かないかもしれないが、それでもこれは必要なことだ


「・・・・・」

「でもお金がなくなれば?何もなしになって自分を本当に愛してくれるのかどうか、自信を持てますか?」

「金の無いような甲斐性無しには興味はないし、私は社長令嬢よ?金なんてあるんだからいいじゃない?」

「お金ありきの愛とお金がなくても愛されることは価値が全く違う、いざお金を失ってしまえば貴女は孤独になってしまう」

「でも、でも・・・・わ、私という女を手に入れられるんだからステータスになるでしょう!!?」


動揺している

であればこの人にも何かしら響いただろう

いい足りない部分もある、人を自然と見下すなとか・・・

いやこの人にはもうこれでいい、少しでも響いたのならこれからどうするかは彼女の自由だ


<ちゃんと神官しててえらいですぅ>


ありがとうございます


「少なくとも僕には全く響きません、ただこういう考えもあると知ってもらいたいです」

「・・・そう」



勿論、自分が尊重されなくても、利益がなくても愛してくれる人もいるかもしれない

だから余計なおせっかいかもしれない

だけど余計なおせっかいでその人が幸せに突き進めるのならそうする、そういう手伝いをするのも僕達の役割だと思う


帰り支度をする人も見え始めたしやることをやろう
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