436 / 618
第427話 さまよう鎧
しおりを挟む春日井が迷宮に行こうと言い出したのは驚きましたわ
領地にいても拝まれたりして身動きが取れなくなるし元杉とミルミミスさえいればここは安全でしょう
春日井の武器は大きく目立ちますし処刑用の武器のような威圧感がありますから解放された奴隷の目には酷でしょう
戦況はとてもいいようですね
ザウスキアは数多くの勇者を召喚してきた善の国
これまで魔王との戦いに貢献してきた国だったのでしょうが昔からおかしな部分は見えていました
覇権国家ザウスキア、強欲国家ザウスキア、奴隷国家ザウスキア
奴隷制度は昔からある
敵国の人間というのは戦争が終わった後にすぐに仲良くなれるわけではない
攻め滅ぼされた国の人間は憎しみは果て無く続き、破壊工作を行うものだっている
だから奴隷にすることはよくあることだし区別でもある
善の神の多くは人に近い形をしている
故に人こそが至高の存在であり、尖った耳の私達や獣人はひれ伏して従うべきだと彼らは考えている
理解は出来ます、納得はできませんが
魔族が居て、魔王がいる
純粋な人から離れた存在ほどを敵として教え込まれるその思想は脆弱な人間が身を護るためなのかも知れません
そして人に近いほど人の結束は高まり、人から姿が離れるほど区別される
姿や寿命、性質が違うと関係は簡単に不和を産み、やがていがみ合って戦うこともある
連合軍は『どの種族も平等』というという建前を元杉が言ってくれて助かりました
似たような発案はこれまでにもありましたが発案者は神々が認めた『最後の勇者』
結局はどの種族も純粋に魔王を討伐するというのではなく魔王を倒した後の為の権力争いでしたが・・・『最後の勇者』が負ければ人の世は終わる
彼は親の復活のために命がけで何度も死にそうになっていたのは見ていて連合軍のギスギスした空気を変えさた
我が子を見るように、ハラハラしていたことでしょう
おかげで一度襲撃したわたくしは今でも認められておりませんが
ザウスキアはわたくしの国にも無茶苦茶言ってきたことが何度かありましたが善の陣営としておかしな点はありませんでした
せいぜい元杉が戦ったのだから世界各国の勇者領地はザウスキアのものだとかいつもの戯言や、領民はザウスキアに所有権があるなどと言って冷ややかな視線を送られた程度だ
決定的におかしかったのは魔王討伐の後だ
魔王は倒され、いつものように母国の力を使って強欲に資源を奪いに来た後
連合軍と勇者の一行が生き残った魔王幹部を討ち滅ぼそうと残党を討伐しようと各地を巡っていて、追いかけた先にザウスキアの迷宮があり・・・・・ザウスキアは協力を断った
なぜなら『魔王は斃された、これ以上の協力は不必要である』からだと
迷宮は神々が作ったもの
入り口とは遠く、別の国に抜けることもある
数体の魔王軍幹部の行き先がザウスキアだった
そしてザウスキアの国王は勇者の仲間たちを妨害し、更に勇者領地を狙った
亜人を物としか思っていないザウスキア、列強諸国の中でも純粋な人こそが世界を統べるにふさわしいという思想も腹立たしいがそれでも善の神を祀る
属国も多く、彼らを攻める理由もなければ攻めるだけの余力もなかった、無いはずだった
勇者領地に協力者がいて助かりました、全世界に情報を伝えてくれました
何も知らずに危機を迎えるなど危険すぎます
ザウスキアの属国、ゼルヴェゼ、プリケシュ、アレパンウェラも反旗を翻していますし、いくら大国であっても30を超える国々が相手ではザウスキアと言えどもただで済むことはないでしょう
どうせならこのまま滅んでしまえばいいのだ
わたくしはこの迷宮を裏から入りましたが表は普通の迷宮と同じようなものだ
ただ元杉の魔力を強く感じる
奥に行けば危険はないそうで通常の迷宮とは全く異なる作りだそうだ
「グゥオオオオオオオオオオオオ!!!」
「おらぁっ!!!」
洞穴や砂場、草原などとは違って石造りの迷宮
オーガがでてきましたが春日井ならいけそうですわね
獰猛に暴れ、木の棒を振り回していますが春日井も武器を合わせています
わたくしでもあんなことは出来ません
元杉に頂いた[守護の指輪]が発動していない以上、まだ問題はないでしょう
いつでも仕留められる位置で待機していましたがオーガの手足を切り裂き、落ちてくる頭に下からハルバードですくい上げるように頭を割りました
とんでもない膂力です
「はぁ・・はぁ・・・どうだった?」
「成長しましたね」
近付いてタオルを渡す
彼女にとっては強敵でしたでしょうし、きっと疲れたことでしょう
「ありがとう、改善点は?」
「硬い頭を狙うよりも首のほうが良かったのでしょうが・・悪くはなかったと思いますわ」
「むぅ」
訓練のためにも何体か倒して行く
春日井も安定して倒せるようになりましたが奥からカチャリカチャリと嫌な音がします
先行して見に行くと・・・全身鎧が数体いました
彷徨う鎧、強い戦士が死亡して生まれた存在
英雄の死後、迷宮から出れずに迷宮に取り込まれた霊
多くは大したことがないのですが迷宮の主よりも強いものも存在することもある、厄介な存在
とても希少な例ですが彼らは生前の力を持ったものも居る
下手をすればわたくしよりも強い可能性がある
問題なのは彼らが敵であるのか、ですが・・・
ひきましょう、春日井もいますし
「あ、久しぶり、もうこんな所まで来たのね」
「春日井・・・?」
「大丈夫、味方だから」
手を上げて彷徨う鎧に向かう春日井
ガシャ、ガシャ、ガシャ
彼らは春日井に向かって膝を折りました
敵対しなくてよかったですわ
彼らのような存在は稀に加護をそのまま使えますし魔法も使える知性が残ったものもいる
悪辣な手段を用いてくるか、それとも手助けしてくるかはわかりませんし迷宮で出会えばとても危険です
罠も人を癒やすものばかりで危険なものもないですし、とても希少な彼らが何十も集まって、更に知性が残ったまま、皆人の味方をする
なんて非常識な迷宮なのでしょうか
1
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー
不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました
今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った
まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います
ーーーー
間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします
アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です
読んでいただけると嬉しいです
23話で一時終了となります

血の魔法使いは仲間を求める
ロシキ
ファンタジー
そこは魔術師と魔術師よりも圧倒的に珍しく魔術師よりも強い魔法使いが居る世界。
そんな世界で前世を覚えている公爵家の青年は、婚約を破棄され人が一人も居ないような魔境に飛ばされる。
その青年は仲間に会いたかった。
それが叶わないならば、大切な仲間を新たに作りたかった。
これは、そんな青年が徐々に仲間を増やしながら、婚約を破棄し辺境に自分わ飛ばした者達に仕返ししたり、昔の大事な仲間と再会したりする物語。
主人公の一人が長いので、序盤の会話は少ないです。
視点は通常の話が主人公で、○.5話等になっている物は主人公以外の視点です。
一部が作り上がるごとに投稿しますので、一部が終了するまでは一日一話更新です。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる