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第419話 親心、娘は・・・
しおりを挟む「奈美は・・奈美ちゃんはどう思ってるんだ?」
「嬉しい、心臓止まりそう」
心配になって杖を取り出したがすぐに黒葉に手で制された
大丈夫だと
「違う、感想じゃない、この男をどう思ってるのかって話だ」
「私は、本当に好き、人生でいちばん大切な親友を助けてもらって、それで一緒にいることになったんだ」
「・・・・・」
苦い顔をしているパパさん
僕と別れさせたいのなら良いことよりも悪いことのほうが聞きたかったよね
「子供みたいに常識がない元杉神官が心配で手助けしたいなって」
ある意味一番僕が迷惑をかけたのは黒葉かもしれない
僕の行動は色々とよくないかも知れないが色々教えてくれて本当に助かっている
「一緒にいるうちにどんどん惹かれて、気がついたら目で追っちゃってて・・・・もう別の人じゃ無理だなって」
パパさんを向いて前に出て伝えたと思ったら僕の方に顔を向けてきた
「本当に好きになってたんです」
「ふぐぅ」
「あ、ありがとう」
<まぁまぁまぁまぁまぁ>
パパさんからすごい声が聞こえたが僕もそれどころではない
こうやって真っ直ぐ来る好意は慣れていないのだ
僕には見えているが限界まで薄くなったレアナー様がニマニマしてこちらを見ていた
はるねーちゃんも直球で照れてしまうのだが・・・向こうでは、利益ありきの結婚を狙われることはあっても恋愛はなかった
せいぜいヨーコがなにか言ってくるぐらい
結婚すれば魔力が強化される、地位が権力が手に入る
国防に直結し、神様の覚えが良くなる、だったかな?・・・だから結婚に対して本当にしつこかった
初めて行く領地を歩いていると「勝手にやっている僕の結婚式」なんてこともあれば睡眠薬や媚薬を盛られるのはいつものことだし・・・貴族には人の心ってものがないのかもしれない
加護を授かっていたからそういう扱いは理解はできるが・・・奴ら子供を人質に結婚しろとか言ってきてレアナー様も怒ってたなぁ
とにかく黒葉のお父さんなら僕の義理の父になる
固まって動かなくなったパパさんを引き連れてフィンリーと信徒に謝りに行った
「ごめんなさい」
「や、止めてくださイ!?」
「フィンリー、怖い思いしたんだよね?」
「怖いっていうかキモかった」
「黒葉のお父さんで僕に用があったんだ、だから本当に、ごめんなさい」
ジャパニーズ土下座だ
子供に向かって本当に怖い思いをさせてしまったのかもしれない
「ナミ姉さんには世話になってるし、俺だってこいつの股蹴り上げちまったし・・・もういいよ」
「ほら、お父さんももっと頭下げる!」
「ごめんなさい」
信徒の人にも謝る
「あ、ああああ、あたまをあげてください!!???心臓が止まってしまいます!!!!??」
杖を取り出すと・・今度は黒葉も止めなかった
無事許してもらえたので年越し会場に向かった
パパさんも楽しんでいってくださいと言うとパパと呼ぶんじゃないと言われたがパーティ会場で元スパイの人達に任せた
パパさんとはまだ言いたいことも話さないといけないこともあったけどここの様子を見てもらおうと思う
驚くこともあっただろうし、信じられない気持ちも拭えないだろう
例えば僕の目の前にいきなり特撮ヒーローが出てきたら驚くと思うし偽物だと考えてしまうはずだ
・・・・・きっと、時間が必要なのだ
娘さんをくださいという挨拶について聞いてみた、こちらの世界では常識らしいので詳しく知りたい
「えっと、黒葉って貴族とかだったりする?」
「貴族ではないです、あれはよくある風習です」
親にも祝福されて幸せになる場合もある
日本では結婚で家族の挨拶は当たり前だったのは少し前の世代だけど今でもそういう文化は残っているらしい
まぁパパさんが拒否しても黒葉自身が嫌がらない限り奪い取るつもりだ
それでも皆が幸せになる方法があるのならできればそうしたいと思う
向こうでも家族が関係する国や地域、身分差に種族の差もあったから少しは分かる
「元杉神官?」
「なにか作法とかあるの?礼儀とか?」
「そうですね・・・菓子折りを持って行って挨拶して「お父さん、娘さんをください!」「娘はやらん!」ってのが定番かな?」
「なるほど?」
「あ、すいませんお父さんのことは気にしないでいいです」
「いや、僕も無理なら奪うつもりだけど出来たら祝福して欲しいなって」
「んん・・・?」
お義父さんとお義母さんが会場にいたので素直に聞いてみた
亮二おじさん、直子おばさんは結婚したらお義父さんお義母さんだ
「あのお義父さん、お義母さん」
「どうしたんだい洋介くん?」
「年越しそば食べる?」
会場では信徒たちが各々楽しんでいる
先程までの殺気だった状態はなんとかなってよかった、下手してたらパパさんもっと酷いことになってたかもしれない
蕎麦を食べたり、大型テレビを見ていたり、巨大なこたつでのんびりしていたり・・・麻雀ってのをやってたり・・
あ、レアナー様おそば食べてる
こっちのレアナー教はまだ年末だからと何をやるかとかあんまり決まってないしいいんだけどね
「その、さっき、黒葉のパパさんが来てて知ったんだけど結婚の挨拶ってした方がいい?」
「結婚の挨拶?」
「娘さんをください、娘はやらんってやつ」
「何言ってるんだ!?ま、まさか遥とうまくいっていないのか!?あれか、あのケーキが悪かったか!?」
「ようくん!!娘をもらってくれるんじゃないの!!?」
「あ、あれ?」
亮二お義父さんに肩を掴まれた
思ってた反応と違う
むしろ「貰ってくれないと困る!」「料理は私が作るから、お願い貰って!!?」と揺さぶられる
はるねーちゃん、僕からしたらいじめっ子は追い払うし、不器用だけど凄く優しいんだけど・・・僕がいない間になにかあったのかもしれないね
「何やってんのよ」
「面白そうですわね」
はるねーちゃんとヨーコとも話したが文化や家庭でこういうのは変わる
家によっては反対されるし、家によっては賛成される
けーすばいけーすというやつらしい
「むしろ加護を授かっていますし金品を積まれて子種だけでもって懇願されることもあると思うのですが?」
「それたまに言われてたよ・・よくわからなかったけど」
黒葉の・・小林パパはカウントダウンの前に家に帰るそうだ
「娘はやらんからな?」
「お気をつけて、あ、家まで送りましょうか?」
「いらん!」
ぷんすか怒って帰ったパパさんだったが黒葉の提案で黒葉の実家にはレアナー教印のおせちやお雑煮を先に空で飛んでいって配達する
ママさんは留守だったけどうちの人間が家の周りにはいたので食材は玄関の前にわかるように置いておき、うちの人間には温かいスープを・・・「コーヒーにしましょう、流石に無体です」コーヒーを差し入れた
年を越すだけだけど、こう、忙しいというか胸が騒ぐ日なんだね、年越しって
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