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第418話 結婚とは家とのつながり
しおりを挟む「それはお父さんの決めることじゃない」
「奈美?!」
「外で聞いてた」
「そうか・・」
部屋の外で聞いていた
これ以上、お父さんが何かしでかさないか心配だったのだ
心配しているお父さんなら最悪の場合、元杉神官を刺して私の目を覚まそうとしかねない
「嫌いって言ってごめん、だけど何も知らずに遥や元杉神官のことを悪く言われて本気で怒ってる、後で二人・・じゃない四人に謝って」
「四人?」
「遥と元杉神官とフィンリーちゃんと人質に取った信徒の四人」
「だが・・」
「おとうさん?」
「わかった・・・が、まだ話は終わってない」
まだ諦めていないのか
さっさと全員に謝って帰って欲しい
後で私も皆に謝らないといけない
「なに?」
「まず、絶対に、120%、交際自体を認めたくはないのだが・・・」
「まだ言うか胸毛大魔神が」
「酷いっ」
お父さんは胸毛が酷く見苦しい
いつも風呂上がりは下は穿いていても上は裸で上がってきて・・・胸毛の辺りから上る蒸気が凄く嫌なのだ
先ほどのはだけた服から見えた女装、あの胸毛が見えていたのは娘ながらに最悪な光景で、思わず現実逃避したくなった
もしもドアを開けてこの常人には理解できない行動力を発揮するお父さんがドレスを着ていたらと思うと開けるのは怖かった
「黒葉、聞いてみよう?」
「元杉神官・・わかりました」
元杉神官がいつもと違う
大人モードということも相まってか頼もしく思える
いつもならこういうことは他の人に任せるのに、今日は真剣だ
「結婚が魔法的契約というものであるということは聞いた、元杉の寿命のためにお前が結婚する必要はないだろう?もう12万とか言う訳のわからない人数がいるのだろう?」
そう言われればそうかもしれない
けど、そうじゃない
「婚約したと聞いたが私達に挨拶しにこないどころか一報もないのはどういうことだ?結婚はお互いの家の繋がりができるものでもある」
私が決めたことだし、向こうの世界では結婚までしちゃってる
だけどこちらではまだ婚約で、それは自分たちで決めた
私のタイミングで挨拶に来てもらおうと私なりに計画を立てていた
私の力量と、卒業単位、私の都合
・・だから、これは元杉神官の問題ではない
まぁ元杉神官は「日本における結婚の挨拶」というものを理解しているかはわからないけどね
「例えお互いを愛し合っているとしても家族のことを話し合っていないのはどういうことだ?男としての責任を果たす気はないのか?」
「そんな古臭い」
「古くても関係ない、道義の問題だ」
道義・・たしかにそういう親もいることは確かだ
今でも家の関係で結婚する人もいる、そういう風習は廃れつつあるのかもしれないが残っている
多分家どうしの挨拶程度って場合もあるだろうけど
「元杉にお前は必要なのか?」
少し胸が痛む、寿命のことを言われればそうなんだ
だけどもう、そうじゃない
「パパさん」
「パパと呼ぶんじゃない」
「いいえ、パパさん、僕は出来た人間じゃありません」
私がなにか言う前に元杉神官がなにかを言い始めた
「なんだ?」
「僕は掛け算も間違えるし漢字も間違えることがあります、たまにヒットマンも来るし日本の人間としてはダメ人間だと思います」
「・・・・・オイ」
ヒットマンのことは言わなくて良い
ダメ人間なんて、そんなことはない
誰にでもできることは誰にでもできたほうが良いのは間違いない
だけど、元杉神官には元杉神官にしか出来ない事がある
「黒葉との出会いはビルの前で、初めて行ったのはヤクザの家でした」
「おい」
それも話さなくていい
だけど誠実に話そうとしているんだと思う
元杉神官はほとんど嘘は言わない
「それでも僕は、僕のことで笑顔でいてくれている黒葉に少しずつ惹かれて、一緒にいたいと思いました」
不意を突かれた
私の半歩前で話す、その言葉に、一気に恥ずかしさと嬉しさがこみ上げてきた
「奈美、君はいつからこの男に惹かれたんだい?」
「ヤクザの本邸から出ていった時、かな?一緒に空を飛んだ時かも」
「吊り橋効果では?」
私も正直に話してしまった
うまく話を作れればよかったのだけどそんな余裕はない
それに誠実に話したかった
「それはわかりません、だけど一緒にご飯を食べる黒葉も、カメラを撮る黒葉も、僕のシャツの匂いを嗅ぐ黒葉も、病人を治すのに真剣な黒葉も、お酒を飲む黒葉も、僕はとても好きに思っています」
「好意的」
「好意的に思っています」
私が答えるよりも先に元杉神官が答えてしまった
吊り橋効果かもしれないというのは少し話したこともあった
まだまだお互い言わないといけないこともあるかもしれない
だけどここまでまっすぐ言われて、嬉しくないわけはない
これで納得してくれないかな?
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