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第393話 私達も愛している
しおりを挟む差し出された小さな小箱、入っているのは指輪だ
「卑怯よ、こういうのは個別にしなさい・・・・・でも嬉しい、本当にありがとう」
実は洋介がやっていることは気が付いていた
関羽がいる工房でなにか作っていたし私が近づくと焼けた金属を神官服に隠してたから流石に危ない、気が付かないふりをして立ち去ったけど
悪さでもしているのかとこっそりヨーコと見てみると作っていたのは指輪だった
金属の加熱中に洋介はスマホを見ていたが大衆の面前でプロポーズするような動画だった
きっと洋介的には素晴らしいプロポーズだと思ったのだろう
私達に迫られ、消極的に愛を口にすることはあったけど今回はやる気のようだ
社会人になった先輩から「彼からプロポーズされそうなのよー」なんて聞いたことがある
相手をいつも見ているからこそ相手の微細な変化にも気が付くものなのかもしれない
なんかコソコソしてたもんね
だけど私もこうやって気付くなんて思いもしなかった、だって洋介からサプライズを企画するなんてこれまでにはなかったから
それにしても嬉しいな
私から迫ることはあっても、逆はなかった
それにヨウスケ殴っていいか?ヨウスケ殴るぞ!とかなり脳筋なシーダリア、そしてすぐに服を回収するせーはこの場に呼ばれていない
性格は悪いかもしれないが関羽たちのような魔法的な意味合いでの結婚した人よりも、洋介のことをを好きなシーダリアたちよりも・・・私達を選んでくれたのだ
今後増える可能性はあるがきっと洋介なりにしっかり考えてくれたからこうやってサプライズを企画してくれたのだろう
奈美は真っ赤になって今にも倒れそうだし、ヨーコはちょっとよくわかっていなさそうだ
はるねーちゃんと刻印された小箱を受け取る
箱を開けてリングを手に取る
白っぽい金属のリング、名前も刻印されていない、魔力は感じるし赤い小粒の宝石がはめ込まれている
人からこんなにも高価な装飾品を、こんなにも真心のこもったアクセをもらったことがなくてつばを飲み込んでしまった
固まってしまったが、いけない、ここは会場の中央、注目の的だ
「プロポーズ、お受けします」
「わ、私も!!す、末永っくっ!よろしくお願いしまっす!!」
「こういうのって指を床につけるのでしたっけ?ねぇ遥」
「今良いところだから後でね」
私の口から出たしっかりした言葉に少し驚く、私も思ったよりも緊張しているようだ
泣いてしまって声がどもっているのかつっかえている奈美、それと空気が読めていないヨーコも小箱を受け取って中身を見ている
一歩前に出て、指輪を手渡す
「なんで大人モードなのよ?」
「一番良い服がこれだったし三つの小箱持つのに」
「服なんてどうでもいいわよ、どうせならいつもの洋介に指輪をつけてほしい」
「わかった、はるねーちゃん」
小さくなって、豪華な服がぶかぶかになった洋介
私よりも背があるなんて洋介らしくないのよ、悪くはないけどね
袖をまくって指輪を持ち直し、私の左手の薬指にはめてくれる洋介
冷たさは殆ど感じず、薄く薬指にピッタリと合う指輪
「これは護りの指輪の良いやつで、凄い効果があ「今はもっとロマンチックなこと言いなさい」
大好きだよ、はるねーちゃん、これからもよろしくおねがいします」
「私も大好きよ、ずっとよろしくね」
心臓がどこかに飛んでいったのかもしれない
洋介のくせに生意気だ
私をこうやってドキドキさせるなんて
次は奈美が前に出てきて、ヨーコも一緒に前に出てきたがすぐにヨーコは一歩下がった、空気を読んでくれたようだ
「もどすぎしんがん」
「黒葉、本当に僕でいい?」
「は”い”ぃ」
「これからもよろしく、大好きだよ」
「わ”た”し”もて”す”ぅ”う”」
服の袖で奈美の顔を拭った洋介、もうボロボロと泣いている奈美
指輪をつけてもらった奈美、感極まってしまったのだろう
奈美は本当に大切なものにはなりふりかまわないところがある
私が病気になって私が理不尽に当たってしまった時、どうしても仲直りしたくてヤクザの本邸にまで行ったのだから向こう見ずなところもある
コミュ障で、大事なものには一途で、余計なことを口に出してしまって、後で後悔して沈む奈美
きっと号泣している以上に内面は凄いことになっているだろう
感極まってしまったのはわかるけど後で撮られている動画を見て凹むことになるのだから今からちょっと心配である
本番の結婚式で倒れないかな?
倒れてしまいそうで後ろから支える、普段何もしてない時はキリッとしてかっこいいのにね
「ヨーコ、あ「元杉、これ、えっとどういう感じですの」
・・・プロポーズだよ」
「・・・・え、あの、愛の告白ですの?」
「そ、そうだね、愛の・・結婚してくださいっていう意思表示、かな?」
「まぁっ!!」
あ、洋介の態度が崩れた
私達には胸を張ってかっこよかったのにヨーコに聞かれて自分の言葉にして恥ずかしかったのか堂々した態度が少し崩れた
「いえ、わたくしから言わせてくださいませ!」
「え、あ、うん」
「わたくし!ヨーコルノリア・メレニ・フォプセ・ケメヌ・セセ・マリュニャロ ・ ガムボルト・マルディは!洋介・元杉を心から愛し!貴方との生活のために狩りをし、貴方のためなら竜の肝をとりに行くこともためらわないと誓いますわ!」
武器を取り出して両手を後ろに広げて頭を下げたヨーコ
堂々としたなにかの所作は立派だけど洋介は少し固まった
う、うん、洋介、洋介は頑張ったよ
洋介も緊張して、かっこよくしようと思ったんだろうけど先にやられてしまったみたいだ
「・・・・・・・・・・・・うん、僕も大好きだよ、指輪つけ無くて良い?」
「よろしくお願いしますわ!」
指輪をつけてもらったヨーコは洋介に抱きついて洋介は勢いを殺しきれずに尻餅をついてしまった
とても頑張った洋介だけど、ヨーコの天然には負けてしまった
勝ち負けってわけでもないけど・・ある意味ヨーコは最強だな
洋介は大きな服にもたついているし私達も手助けに向かった
周りからパシャパシャとシャッター音やカメラの音が鳴り響く・・・・・もうスマホ向け無くていいからっ!さっさとあんたたちもパートナー探しなっ!
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