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第368話 トリガーは向こうにある

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これは私が考えた交渉だ


下手には出ない、騒動の原因は議員が悪いのはわかりきっているしそれを通せるだけの手段と力がこちらにはある

戦いを避けるためにもこちらが融通することは何ひとつとしてない

それに「一宗教団体」として世間が考えてしまえば今後またこうやって舐めた真似をする輩が出てくるかもしれない


地球における宗教といえば戦争がつきものだ


有名な宗教ほど昔はそうであったはずだし今では信徒も多く、そもそも彼らを敵に回そうと考える政治家はほとんど居ない

力を見せつける必要があるのだがこちらはできるだけ戦争はしたくはない


戦争は勝利しないといけない


だけど日本に、世界においてレアナー教は今まではもてはやされてはいるけど小さな宗教にすぎないし戦争が起きてしまえば世間様が第二第三の安藤が出てくるやもしれない

だからこんな、秘密裏に処理するのではなく回りくどい手段を取っている

もしも戦いになったならそれはもう避けられない


「僕に加護を与えた神様はレアナー様だけじゃない、10ヶ国以上が戦争に賛成してて、僕らの手助けをするって言ってくれて集まっててさ、もしも条件を受け入れてくれないと戦うことになるんだ、戦わないと、いけなくなるんだ」


悪いことをしてもごめんなさいで許されるだけが解決ではない

喧嘩して、警察が介入することもある

一方的に痛めつけられることもある

相手が謝らないのなら、身を護るためにも戦うしか無い


「そしたら何人も死人は出ると思う」

「僕の加護は軍神や戦神には授かって無くて、僕よりも強い人はいっぱい居てさ、一度始まったら止めることなんて出来ないんだ」


うん、見に行ってわかった

関羽さんみたいに馬鹿みたいな力を持ってる人は多くはないけど確かに居た

たった一撃、広大な荒野と比べてちっぽけな剣を振り下ろしただけで水の枯渇した川のようなへこみができた

あんな人達が居て、なお世界は滅びそうになったっていうんだから魔王っていうのは強かったのだろう

国や軍の考えはどうか知らないけど末端の彼らの元杉神官への恩義は本物で、命を捨てる覚悟も聞き取れた

私に加護を授けてくれたのは言語と旅の女神サシル様

少しではあるけど相手の真意や感情、嘘を感じ取れるようになってきた


「日本の代表の人は、僕たちを攻撃した人を偉くした人は責任を取って賠償してもらいたいです、それとレアナー様への心からの謝罪を」


そんな私の耳に、元杉神官の感情の高ぶりを感じる


「もしもそれが出来ないのなら僕も・・僕も覚悟を決めて、先頭に立って戦うしか無いよ」

「だって、僕が未熟だから、こうやってレアナー教は攻撃されたんだ」

「僕がもっと上手く出来てたらこんなことにはならなかった」

「レアナー様には許されたよ、それでも僕は責任をとって戦わないといけない、じゃないと僕は僕を許せない」


元杉神官は幼い身体で、常識も皆無だったけど一生懸命にレアナー教を盛り上げようとしていた

書けもしない日本語で看板を作って、客引きのようにみっともなく布教した

それは本人に恥じらいと常識がないからだったけど純粋な行動だった


「なんで、人を治すのがそんなにダメなんだよ」

「向こうの世界じゃ食べ物もなくて、家も服もなくて、死んじゃう人は多かったけどさ」

「それでも人が死ぬのは悲しかったよ」

「こっちもそうじゃないの?」

「同じはずだろ?」


悲痛さも混じる表情の元杉神官

だけどこれまでと違って胸を張って堂々としている

見た目は大きくなっても感情は隠しきれてはいない

あらかじめ考えていた文を読ませようとしても不自然になった

だから何度も練習したけど最後は自分の言葉を語らせることにした


悲しみを知っているから、誰かのためになりたいから

何も自分がやらなくてもいいめんどくさい活動を本気でやっている小さな男の子

彼の常識の無さに、小柄な体つきに危うさを覚え

いつの間にか私の心の大部分を埋め尽くした大切な人


カンペを動かす手が止まってしまった

話がずれてるとカンペをめくって見せる


「今日この時間から三日以内に返事をください」

「それが過ぎれば、条件がのまれなければ、僕たちは戦わないといけなくなる」

「どうか、どんな判断でも、決意を持っておねがいします、これで配信を終わります」


配信は終わった、後はかなりきつめの条件を送るだけ


「お疲れ様でした」

「おつかれー、吾郷なんて言ってくるかな?」

「どうでしょう、ねっ!」


これでこの先どんな結末になっても、私は彼についていく


胸の中に飛び込んで、そう決めた



軽く抱き止め返されて、いつもの臭いに心が休まる




大きい元杉神官も悪くはないな
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