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第331話 起こされる元杉洋介

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戦況はよろしくありません

もしかしたらヴァンなら倒しきれる可能性もあるかもしれません

けれど相手は人の器とは言えほぼ神、通常であれば絶対に手を出してはいけない相手


<闇の神ヴェーヴァよ、深く眠りし我が伴侶を深き眠りから起こしてくださいまし>




わたくしは選択肢を間違えたかも知れません



結界の破壊を察知し、わたくしは魔法を使いました

闇に溶けて移動する術は夜によく使いますが昼も使えます


ただ消費はとても激しいですし、引き寄せたものも無事で済む訳ではありません


術の1つに特定の位置のものを引き寄せることができるものがあります

騒ぎに乗じて聖王の影に入り、ここまで来ました



「はっはー!此処から先には行かせねぇよ!!」



影を通じて少し聞こえてきましたが聖王の部屋の前にシーダリアをおいていきました


彼女は勇者の旅の仲間の1人、狂犬3姉妹の1人、数々の敵を屠ってきた真の強者


彼女の能力からしてもこれで聖騎士がなだれ込んでくる可能性は低くなりました

春日井に治療を任せていますが黒葉は意識がありませんし倒れている味方と思われる方ももはや戦闘不能状態です


あの狂犬とヴァン、そしてわたくしであれば聖王を制圧できるかもしれない

初撃で片足を切り落としたはずが腱を切っただけ、それも動き回っていることから既に治っています

彼女をこちらに連れてきたほうが・・・いえ、わたくしがこのまま元杉を起こして解決させましょう

元杉さえ起こすことができれば全て解決するはずです

彼女のことを怖がっていましたし起きれば彼女を説得、もしくはこちら側について戦闘に参加してくれることでしょう


・・・・・しかし、本当にこれが元杉なのでしょうか?


筋骨隆々、人族の中でも大きくなっている

あどけない少年の様相は何処にもない


なかなかに起きてくれません


ヴェーヴァ様を通しての魔法ですし通常ならすぐに起きてもおかしくないのですがよほど深く眠らされているのでしょう、魔力を湯水のごとく使って魔法に集中します

震える指先、ただでさえ消費しているのにこれ以上は・・・!

わたくしも薬を飲んで耐える


「・・・・・」


唐突に、元杉が起きた

ムクリと立ち上がったが様子がおかしい


「元杉?」


ペタリペタリとヴァンと聖王に向かって歩いて行く


「洋介!良かった、奈美を・・・洋介?」


そのまま歩いていき


「ぐっ!?父上?!!」

「どいてよぉ!!!」

「がぁっっ!!!??」


フラフラと歩いていった元杉

戦闘のさなかに無防備に歩いていき聖王の攻撃が元杉に当たりそうになり、ヴァンが割り込んで胸の中央にハルバードが直撃してしまいました


扉の向こう側まで吹っ飛んでいったヴァン、聖王が手を差し向けると扉は閉ざされてしまいました

カクつく膝、しかし強い回復薬を飲んですぐなので動けません

辺境から狂犬を連れてくるのに魔力をごっそり使ったのもよくありません、せめて今が夜だったらここまで消耗しなかったでしょう


・・・・わたくしは選択肢を間違えたのかも知れません
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