333 / 618
第328話 『愛』を手に入れる
しおりを挟む彼が異世界に帰ってしまったときに私は決定的に壊れたと自覚した
胸が痛くて悲しくて酷い気持ちになった
勝手に嘆きが喉から出て、私の作られた意味である政務以外を自ら行うようになった
頑張って頑張って頑張って、異世界への扉を開ける魔法を覚えた
だけど何処にどう開くのかって難しい、水の中や土の中のほうが開きやすい
開ける範囲も狭いし桁違いに魔力を使う
異世界という一つの世界への扉を開けたとしてもその広い世界で唯一人を探り当てる方法を覚えないといけない
魔法には触媒が必要な場合もある
レアナー教では使うこともあまりないが今回は幸いにして御父様と御母様を神々が作った際に使われた材料、勇者の身体の一部が余っている
余った一部は防腐の魔法をかけられて保管されていたが自室のゆーしゃ人形の中に入れたものを使うことにした、神々に届く前にくすねておいてよかった
いざ魔法を使おうとして・・・これで良いのか?
そう考えて考えて考えてもっともっともっと考えることにして俺たちは話し合った
異世界の勇者と会って、それで・・・・・どうする?
以前、夜中にベッドに忍び込んだ時は清浄化をぶつけられて逃げられた
恐怖に歪んだ顔はとても愛らしかった、うむ、本気で怯えていたな
考えた結果レアナーに相談した
「<う、うーん、貴女はよーすけを愛してますぅ・・・でもよーすけに愛されるように行動しましたですぅ?>」
「愛されるために・・・?」
愛するのは自分から行えるけど、愛されるのは他者からの行いなのだから自分がどうこうできるものではない
ちょっと何をいっているのかわからない
僕たちには愛がよくわからない
レアナーが愛しているというのならこの気持ちこそが愛なのだろう
しかし愛とはどんなものなのだろうか?聖句を見ても人が求めあっているのが愛と思っていたが違うのだろうか?
そもそも私たちは人間じゃないし感情がわからない
ただただ役割を果たしていくだけ
「私は聖王です」
「それって名前じゃないよね?名前は?」
「無いです、つけられる前に世に生まれてしまったので」
「じゃあせーちゃんって呼んで良い?」
勇者にたった一言そう言われて、心に矢が刺さったように痛んで、もう何も抑えられなかった
彼の全てを知りたいし、彼の全てを手に入れたくて仕方がない
彼のことを思わない日はなく、彼とずっと触れ合っていたい
これが愛ではないのだろうか?
「<うーん、うーん、うーん・・・とにかくやってみるといいですぅ>」
「やってみます!」
ずっと考えて考えて考えて・・・決めた
そうだ、神具を使って彼を私達だけのものにしよう
そういう物があったはずだ
こちらの世界で練習に練習を重ね、足元に扉を開けることができるようになった
それで、実行に移した
突然足場がなくなって驚いたかな?
いや、驚く暇もなく足首をつかんで引き落とし、そのまま神具で意識を奪った
後は神具の効果で勇者の意識を変えるだけ
真っ白な日常に色がついて、心がふわふわと舞い踊る
世界がこんなにも綺麗なものだったなんて
愛とはここまで良いものだったなんて
後は楽しく待つだけ・・・想定していなかったのは私達の愛を邪魔する存在が居ることだ
愛は尊いものである
なのに何故邪魔をするのか・・・・
その邪魔も最近激しくなってきた
襲撃も増えてきたが勇者が盗られるなんて許さん
・・・ただ相手は勇者の子どもたちであり、将来の我が子だ、後で愛でよう
手も打ったし後は桃栗三年石の上にも八年・・・だったか?
ただ成果を待っていればいい
そう思っていたのだけど、緊急用の魔道具が作動した
「ここは任せました」
「はっ!」
すぐに部屋に戻ろうとすると教国を覆う結界が破壊された
空が歪んで結界が散って行ったのが見て取れた
すぐに戻って直さないと、いやだっ!!!もっと大切なことが私にはある!!!!
「聖王!お待ちを!緊急事態です!!」
「所用があります」
「国の大事よりも大きな用とは?」
「愛です」
武器を出してきた兵を殴り飛ばし走って部屋に戻る
次々と出てくる騎士や兵をなぎ倒して進む
これは愛のための行動?いいな、いいね、素晴らしい
完全に僕は壊れたようだ、なんて愉快で気持ちいいんだ
ドアを開けて神具を起動し私も中に入る
中には春日井遥と黒葉奈美が、勇者に触れていた
「その手を離せ!!」
1
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる