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第290話 安藤■■入り
しおりを挟む内田さんに腕を掴まれている間に外の戦闘音が聞こえなくなった
地面に倒れた人のうめき声に「しばれ!しばれ!!」とうちの信徒たちの声が聞こえる
いや、更に遠くで信徒の捕まった警察車両を襲撃している
銃撃音は聞こえない
林の中からも何人もこちらに連れてきている音がする
近くの信徒たちが倒れた警察を城の中に連れてこようとしているが門の内側には俺達がいる
俺と詩乃は後ろに下がって様子を見ることにする、姿を見られないようにしないと
「ひっ」
「だ、大丈夫だ詩乃、ここは任せてコアのところに人が入らないように見に行ってて」
「わ、わかったわ・・貴方気をつけてね」
「うん、君は僕が護るよ」
ドラゴン型ゴーレムai0139に乗った詩乃が奥に行った
僕のヒト型ゴーレム0083ちゃんは武装は少ないが情報収集向きの隠密タイプだ
後期ナンバーのゴーレムは攻撃的なタイプが多いし魔力の消費も激しい、人なんて普通に殺しかねないが隠密特化の0083ちゃんは特別だ
正門を開けて入ってくる信徒たちは大きな怪我はしていないようだ
魔道具で強化されているし戦闘訓練も受けている聖騎士部
自分の命の危険もかえりみない過激派の面々
肉弾戦であれば・・・きっと中国のクンフーの達人とか特殊部隊の人とか武術の達人じゃないと彼らを止めることは無理だろう
分厚い樫の木で出来た扉を体当たりでぶち破るようなフィジカルエリートだ
金属とは言え人に持てる厚みの盾なんて問題にならない
怪我を治す魔道具に魔力を込めて聖騎士に配る
うなだれている警察官と
「離せ!私を誰だと思っている!!」
首謀者の安藤が連行されてきた
他にもっと大物が出てくるとか無いよな?ゴキブリみたいに1匹見たら30人ぐらいそこらにいないよな・・・?!
少し耳の後ろがぞわぞわして床の端を見てしまう
それと安藤の連れてきた安藤の部下と日本人ではなさそうな連中もそこそこいる
警察官は怪我をしているが意識はしっかりしている
安藤の一党は安藤以外は意識がない、安藤だけは無傷で関節の数も増えてはいない
ただ屈強な信徒2人に腕を掴まれているだけ
「こんな詐欺集団!私が!国士安藤義隆が潰してやる!!私が騙された人々の目を覚まさせるんだ!」
こいつが、諸悪の根源か・・
吐き気がする
「役立たず共め!警察が一宗教団体の制圧すら出来ないとは!!?普段税金で食ってるのにまともに働けよ!!!さてはお前らもグルだな!!?私の輝かしい未来を邪魔するためにわざと失敗したんだろう!!!?吾郷の指示かァッ!!」
安藤は警察の人たちを顔を真っ赤にしてこき下ろしている
警察官は何を言われても顔を上げずにただじっとしている、そばに聖騎士が棍棒を持って立っているしもう抵抗はしないだろう
安藤はつばを飛ばして文句を言っているが警察たちの制圧は本気だったはずだ
皆、装備がボロボロになっている
銃は奪われ、金属製の盾は半分にちぎれ、透明なシールドはもう取手しかない
防弾チョッキに至っては中の白いケプラーが見えてしまっていた
とても怯えている警察だがそれも仕方ないだろう
次々運び込まれる警察官
おもちゃのように簡単に、数人まとめて運び込まれてくる
首の後ろに1人、両手に2人ずつ、口で大の大人を1人の計6人を苦もなく物凄い力で運んでくるものもいる
ヨーコちゃんやジョージとアビゲイルの夫婦、洋介に遥、それとルールの鍛えた聖騎士達
刃物にだって突っ込んでいくし魔道具無しであっても歯を剥き出しに好戦的に戦う過激派と武闘派の信徒たち
魔道具ありではレアナービルの5階にだって地上から飛び上がることが出来る
康介兄さんが病院でマッチョになったり遥ちゃんが壁をぶち破ったように、魔力によって身体能力が上がったものはもう手がつけられない
「さっさと私を解放しろ、下民が!!私が!政府が!!日本がこの危険団体をぶっ潰してやる!!刑務所行きだ!!!バリア兵器もさっさと出せ!!お前らが所有するのには勿体無い代物だ!!!」
ゴーレムの機能で透明になったまま奥から前に出る
ここで国会議員の威光が通じると本気で思っているんだろうか?
つばを吐き散らして叫んでいるがそれで俺たちが膝を屈して言うことを聞くと思っているのだろうか?
「元杉洋介!!出てこい!!!お前だけは本当に治せるか調べた後にできるなら我々の役に立ってもらう!!!どうせ嘘だろうがなモガッなんっ?!」
透明化したゴーレムで安藤の口を掴む
聞いていられない
「はななんだ!!?はな!!!むー!!だれか!!!助けろ!!!!」
もうこれ以上は聞いていられない
ゴーレムではうまく口をふさぎにくい
もしもここに詩乃がいたらこいつは消し炭になっていたかもしれないな
「あ、あのっ!」
政府から来た人だ
姿は見えていないだろう、けど何処にいるのかはわかってるのだろう
なにか言いたげである
殺さない、が、覚悟は決めた
「<警察諸君、政府の方々、君たちは何も見てない、聞いていない、文句があるのならもう手加減しない、反論のあるものは今声を上げろ>」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ごごっ!もぐっ!?ごほっ!!!?」
誰も声を上げない
安藤の声以外で聞こえるのは明らかに日本人じゃないグループの痛みによるうめき声だ
うなだれた警察達も政府職員も何も口にしない
「わたっ!!し!!国士あんどぐ!!だれ!だれか!!!」
「<やかましい>」
「くぇぴっ!!!???」
ゴーレムの手ではうまく口をふさぎきれないし元気だったので魔道具で寝かせた
「<いいね、俺は家族に、レアナー教に、洋介に、詩乃に、手を出す者には容赦しない・・・もう一度言う、諸君は何も見ていない、聞いていない>」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「<また、君たちから我々に関する不利な情報が出たとわかれば組織であろうと個人であろうと容赦しない、容赦できない、わかるよね?>」
安藤のぐったりした身体をさっさと持っていきたいが釘を差してからにしなければ
もう、宣戦布告だろう・・これは
だけど仕方ない、襲ってきたのは彼らだ
それにこの城には神様の居る祈りの間だってある
ここが攻め落とされるなんてあってはならない
俺たちではなく彼らこそが絶対にやってはいけない禁忌に手を出したのだ
譲歩はできない
「<君たちはこちらで身柄を預かることにする、政府から来た君たちもだ>」
誰も何も言わない、言わせない
安藤とその一行には『牢獄』の中でも更にキツく設定した一角に連れて行く
まずは石像にしたまま1000倍速にしておくか
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