少年神官系勇者―異世界から帰還する―

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第288話 人間不信の父親と母親

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昔の友達だった何かはスパムのように連絡を取ってくるが全カットだ

昔の恩師だって信用はできない、奴らは俺たちを売った

新しく持ち初めたスマホだったけど昔のデータは全消去、初期化した


今のままでも息子の稼ぎで生きて行ける

息子が使う治癒魔法はどんな病でも治すし高額なお布施もそれだけの価値のあるものだ

ぽんとお小遣いを1億円ぐらいはもらったと思う

だけどそれじゃ駄目なんだ

そもそもこれは息子の稼ぎであって俺たちの稼ぎじゃない

息子は毎日信じられないぐらいの金を稼ぐ、金だけで部屋はうまるし俺たちが稼ぐ必要なんて無いのかもしれない


でもこのまま幼い息子の世話になるのも良くない

信徒たちに隅にも置かない扱いもされるがそれも良くない


俺たちにとっては息子はまだ11歳のままで働くべきは俺たちである

息子になにかあった時に助けてあげられるだけの金銭や地位がほしい


昔の職場に電話した


職場の人達はアナログな人たちであった

世間の情報にも疎い家族経営の会社

レーザーを使ったマウスすらない

コロコロしたボール入りのマウスがずっと使われていて、たまにそれを分解清掃する

コードは何回も切れたがその度につなぎ直すか新しいコードに直して使う


「道具は大事に使ってやればいつまでだって使えるんだ」


そんなことを言っていた

机の上で未だ現役なのを見て懐かしさを感じた

作業効率なんてお構いなしの前時代的社長だ

だから経理と経営コンサルタントの出来る自分が重宝されて、給料も良かったのだ


まぁ基本的にやってることは雑用だったけどな・・・


もしかしたら世間から隔離されたような職場だったし俺たちのことも知らずに雇ってくれるんじゃないか?

そんな淡い期待は打ち砕かれた


「久しぶりだね、元気にしてたかい?」

「お久しぶりです!」


古臭い事務所

年老いた社長

変わってないデスク、積まれた書類、山盛りのタバコの吸い殻

庭師に空師、伐採や除伐に間伐などを行う人でできた造園業や林業を中心とした総合的な会社

「総合」とは言っても重機は少なく、人も少ない

良く言えば少数精鋭の専門的技術を持った人が集まった会社である

所属する彼らは後継者の少ない頑固な職人たちだ


それぞれに『師』とつくように仕事の職域は異なる


だけど一般人はそれをわからないしうちで働く彼らは木にかけてはプロだけど経営に関してはおそまつな点が多い

だからマネジメントは重宝されたし仕事の斡旋も仕事の内だ

彼らは危険な仕事で稼ぎも幅がある

で、あればその仕事を継ぐ人間も必然的に少なくなる

自分の子供は可愛いと思う人間は多いし、苦労もあり、危険のある仕事など継がせたくはないだろう


空師なんて特にそうだ


高い木に登ってその木の手入れをしたり切り落とすのが主な仕事だ

今でこそ重機でどうにかする場合も多いのだが重機の入らないような場所や重機では太刀打ちできない木を切る専門的な職である

はしごであれば4メートルもあれば家の2階まで届く

しかし巨木ともなれば15メートルのものだってある、全く届かない

じゃあクレーンを使えばいいじゃないか?足場さえあれば良い?根本で切り倒してしまえ?

それが出来るのならそうしたほうが良いだろう

例えば住宅街でクレーンや足場が使えずに、根本から切り倒せば周りに迷惑がかかる場合ならどうだろうか?

無理だ、だから空師という仕事がある

だから彼らは木に上り、その木の上でその木を切る

かつてビルのない時代、空に最も近いとされた仕事であるから空の師と書いてそのまま空師、専業で行う人も少なくなった危険な職業である

彼らを初めてとした林業のスペシャリストが所属している会社だ


とても美味しいお茶だ

会社の近況なんかも聞いて、また雇ってくれる流れだった・・・・・・・・はずだったのに


「ごめんね、不景気で金がなくって」

「すまん、すまんな・・・」

「モウ意識ないカもしレないネ、下ってクぅダサイ」


話の長い社長をウンウンと不動の体勢で聞いていただけなのに


奴らが部屋に入ってきた


普通に年寄りにありがちな長い話を聞いていただけなんだけどなんか寝てる判定を受けた? 一 服 盛 ら れ た ???

よく考えればこのドケチ社長がうまいお茶なんて出すわけがない

渋いお茶こそ健康に良いとクソ不味いお茶愛好家だし、しかも倹約とか言って俺たちにはそのお茶すらくれない


入ってきた外国人さん達は人の入りそうな大きなスーツケースを持ってきた


「くそぉ!くそぉぉおおおお!!!」


俺たちが復活してかわったことといえばこの肉体だ

毒は効かない、今知った

ドアノブも握りつぶせる筋力

詩乃がゴキブリを見つけて壁を新聞紙でぶち抜いた

髪は黒なのに光が当たるとシルクのように、真珠のように艶めく

楽勝でオリンピック記録を超えることの出来る身体

超人の俺たちだ、よっぽど俺たちの身体を研究したいんだろうな


「なっ!?レストランの3倍の量だぞ!!?」

「この人数ダ!GO!GO!!GO!!!」


「ド ち く し ょ ぉ ぉ お お お お お !!!」  


俺はこのドブ川よりも汚い人間社会から逃げ出した

レストラン、生き返ってからは親友のやってる個人経営レストランにしかいってないんだけどなぁ

ここに戻ることを言ってきたのも親友、いやドぐされだったっけか・・・・



 に ん げ ん こ わ い 



そうして俺たち夫婦は城に引きこもった

息子にだけはこの心情を悟られぬように頑張ったつもりだ

もう俺達は外の世界コワイ、ニンゲンなんてケダモノのいる世界で俺たちがまともに生きれるわけがないじゃないか?


この城は洋介が作ってくれたもので好きに改造してもいいらしい

幸い俺たちの体は息子から出来ているしコアに触れれば操作できる

多忙な息子のためにもこの城は好き放題に改造していった

遊園地やプール、温泉に、宿泊スペース、結婚会場


理想の、いや、それ以上の住居が出来つつある


あまり危険なジェットコースターやフリーフォールはなしの方向で

絶叫系は得意じゃないしやるとしても何回も試験しないといけない

建物ごと組み換えできるからいつかやろうと思えば出来るんだけどね


かわりにレールを引いてトロッコを設置してみた


ジェットコースターは要望も多いしいつかは設置しないといけないかもしれないがこれでどうにか勘弁してほしい

いつもの「あらあらまぁまぁ」という詩乃に戻ってきてほしい

一緒に計画していくことで少しずつ笑顔は取り戻すことができてきたと思う


城の業務の1つで陸斗くんの牢獄計画もすごく面白かった

今まで追いかけてきたゴミを更生しさせて、追いかけてくるやつらをどうにかしてくれる

なんて素敵な再利用じゃないか

徳田さんの「人間を更生させるために真に必要な牢獄プラン」は素晴らしい

悪人でも厚生しなかったら出られずに労働力だけは得られる

人権?僕らにもないけど奴らゴミにだってそんなものはないのさ

なんか僕らや息子にも人権は戻ったそうだけどそんなの形だけだね、じゃないとこんな非人道的扱いを受けるわけがない

城での生活は息子に世話になるようでちょっとあれだけどこれは息子のためにもなる

せめて息子のためにと頑張って働いた



息子のやり方は問題もあるけど基本的に人を治してるし悪くはないと思う・・・のだけどずっとマスコミは息子を、レアナー教を、僕らを批判してくる

僕らが生き返ったことにも「嘘だ」「替え玉だ」ってレアナー教を叩く材料にしてくる



自称有識者がテレビで「本物かどうか調べれば良い」なんて言ってくるけどさ




それって切り刻まれてこいってことかな?





・・・・・ニンゲンコワイ

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