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第282話 異世界の「カレー」

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時間が出来て元杉神官の持ってきた食材について教えることになった

元杉神官はこちらに食材や物資を持ってくるが基本的に料理ができないしなんとなくで教わった調理法ではうまくいかないそうだ


元杉神官の食への関心の無さは日常生活でも現れる

レアナービルの周りにもチェーン店はあるのだけどすぐに行くのをめんどくさがる

あの、とても人が食べて良いのかわからないほど不味いスープで済ませようとする


もう少し健康に気を使ってほしい


こちらに持ってきた食材は私達に教えを乞う前によく洗われていた

精米をよく洗って待っていた

米は水を吸わせるとすぐに使わないといけない、遥と一緒にテレビで見たばかりだ

私も米ぐらいは炊ける、けど炊飯器じゃないのはうろ覚えだ

パエリアや中国粥式なら出来るかなと思ったのだけど「大丈夫私ご飯だけは自信があるから!」と胸を張る遥に任せることにした


遥の料理は正直恐ろしい


キャンプでカレーに魚を入れようとした印象が強いしそもそもキッチンに遥が居ること自体が珍しい

本当に大丈夫なのかと心配になる


私はと言うと普通に料理は出来る方だ

それに元杉神官の収納から出てきた食材を徳田さんたちに食べさせるのに色々と練習できた

失敗したら私も食べるがだいたいヤクザの人たちが率先して食べていたし練習には事欠かなかった

元杉神官がこちらの世界に貯蔵していた食材

醤油、塩、砂糖、味噌、焼肉のたれ、塩コショウ、カレールウ

その中でもカレールウだけは使い道がわからなかったらしい


どうやらチョコの派生として見られたらしい

業務用のフレークタイプもあるし、たしかにチョコみたいな見かけだよねこれ

こちらには日本式カレーの基本である玉ねぎもじゃがいもも人参すらもない

じゃがいもと人参もなくてもいいけど玉ねぎは欲しかったな

とにかくケヴの実やイガリの葉、謎の肉、を少量ずつ弱火で煮て確かめてみる

魚とかもうだけど野菜の旬もあるから油断しちゃいけない

不味いものでも美味しく出来るのがカレーって言うけどそれは「まともな材料」だからだ


庭に生えたスイカを食べたことがある

確か父さんが家でカクテルを実験で作っていてスイカの種が余ったから試しに植えてみたんだ

生えるかななんて期待したのはたった3日、後は忘れていた

いつの間にか出来ていた立派なスイカだったのだけど肥料を上げていたわけでも無いし収穫して切ってみると赤い部分が3割で緑の部分がほとんどだった

それでいて味もすごく薄くて貧弱だったのは今でも思い出せる

それに肉や野菜、魚は鮮度も大事だけどもちろん品種も大事になってくる

初めから苦い野菜だってあるし向き不向きがある


そんな食材でいちばん大事なのは下茹でや塩水処理などの下処理だ


真鯛の刺身を作るのにどうしても臭い場合があるが塩水に入れることで臭みが一気に減る

スーパーの処理済みの内蔵肉だって下茹でをするだけでぐっと臭みは減る


私はそこまで見極めができるわけではないけど料理できそうな人に食材について一つ一つ聞いて少量ずつ試してから超大型の鍋にいれていく

失敗の可能性のほうが高い

洗って用意されていた野菜の半分も知らないんだから無理も無いだろう


元杉神官がカレールゥを持ってきた理由もわかる


ルゥ自体は常温保存が可能で簡単に美味しいカレーが出来る

美味しいカレーを作ってカレーが認められればと自分でも謎のやる気が出てしまっている

現代日本ではもう灰汁は取らなくてもいい場合があるほどに野菜の質は上がってきているが今日はダメだ

灰汁は除去する、数人がかりで徹底的に


「何作ってるの?」

「ロムさん?カレーの予定ですけど」

「カレー・・お父様の好きなカレー?」

「そうですね、初めて使う肉や野菜が多いんで成功するかはわかりませんけど」

「ふーん」


なぜかにやっとしたロムさん

少しだけ悪意を感じる、姑・・・かな?娘だけど


「それってエビフリャーはつくの?」

「えびふ?なんです?」

「エビフリャー、お父様はカレーにあると美味しいって言ってたと思うんだけど」

「エビフライですね、材料がないので今日は普通のカレーです」

「そっか、残念。あーあ、食べたかったな―」


ロムさんがわざわざいらないことを言ってくる、嫌がらせかな?

エビフライとカレーは・・喫茶店をやっている直子お義母さんがたまにするのだ

直子お義母さんはお菓子作りも出来るし料理もできるのだけど昔は遥と一緒だったと亮二お義父さんと栄介お義父さんが言っていた

今ではお客にはレシピに従って美味しいものを出すのだけどスタッフやレアナー教徒への差し入れにはたまに凄いものが出てくる

例えば潰したゆで卵とミートソース半々にしたパスタソース

本人曰くこうすれば美味しいと思ったとのこと

ワンプレートでパスタとハンバーグとカレーはよくある組み合わせだけど天ぷらと焼きそばとハンバーグの組み合わせも良いのでは?と言っている辺り少し感性がかわっていると思う

きっと元杉神官がエビフライとカレーが好きだからと一緒に出したことがあるのだろう、相性はいいもので良かったけどね


「ロムさんは料理できないんですか?」

「別に食べれればそれで良くない?」

「お前が犯人か」

「えっ」

「なんでも無いです」


いけない、口に出てしまった

元杉神官が味はわかるのに何でも食べるのはお前が原因かと問い詰めたくなったけどやめておく

ロムさんは陽の光でブランデーのような色の髪がきらめいて少しチャラめの活動的な女子高生といったふうにも見えるがそれでいて少し気分が悪そうだ

他の子供達は「ロムは少し飲んだだけで寝ちゃうし2.3日は機嫌悪いよ、なのに自分からお酒のむんだ」なんて聞いていたしダメな酔っ払いだ

酔わせたのは私だしあまり追撃はしないでおこう

それにしても師匠がこれだから元杉神官も食に疎くなったのか?


・・・・・苦そうな野菜気持ち多めに入れとくかな


出来たカレーはかなり美味しく出来た

コンソメスープの素やお得用インスタントコーヒーがあったから短時間でも結構いい味になったと思う

カレーに隠し味って色々あるけどインスタントコーヒーをひとつかみと板チョコを一枚いれた

これは玉ねぎがなくて味に深みがなかったからで・・入れるとすごくいい塩梅になった

ミルミミスさんがチョコを出したときにこちらを見てほんの少し笑顔になったけどカレーに入れて口がほんの少しあいたのはちょっと面白かった

遥はご飯をおにぎりにして武装した人たちにおにぎりを一つずつ食べさせていた


ご飯もいっぱいあるもんね・・・


カレーはまだ「美味しいスープ」で済むかもしれないがご飯はこちらの人間には「未知の食べ物」だ

わかりやすく認めさせるのにはおにぎりならちょうどいいと思う


カレーライスを子どもたちに配っていく、福神漬けはないけどそれは流石に贅沢すぎる

流石に12万人分はないが元杉神官の好物と伝えると評判は良かった


「おいしー!これがカレーなのね!?」


いびりに来たしゅうとめ・・じゃなかったロムさんも満足したようで良かった

ミルミミスさんのおかわりは2回許した
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