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第277話 ゴブリン
しおりを挟む「ねぇ、この世界のゴブリンってどんなの?」
「子鬼ですか?」
「うん」
不思議そうな顔をしている子供達・・でいいのかな?慣れないなぁ
考えたこともなかったけど「夫がよそで子供作っていた」なんて事態が起きれば嫁はそのことを一生記憶してしまうような出来事だ
たった1人の子でも昼ドラでは刃傷沙汰になったりすることもある
それが12万人、眼の前に居るのはきっとみんな子供
視界の端にいる小太りのおじさんも、とんがった猫耳くんも、角と鱗で半裸の年上っぽい人も、二足歩行でツルハシ持ってる猫も、強面の威圧感バリバリで服脱いだらタトゥーまみれじゃないかって思える・・・ビーツさんも子供
領地の殆どは難民を洋介が子供にして連れてきた領民らしい
その家族やこちらに来てから結婚して増えた人もいるらしいがほぼ全員が私の、洋介の子供ということになるらしい
図面を見て何かをしているエキゾチックなおばあちゃんだってきっと子供・・
多分日本人的には「子供が出来る」って言うのは「子供に対する責任」がセットで重く受け入れないといけないものなんだと思う
もちろん私はまだ子供が出来たなんて実感は無い
無いのだけど胸の奥が重くのしかかってきている
だめだ、私の表情が曇っているのか目の前の子どもたちにも伝わってしまったようだ
「子鬼は・・ダンジョンには大抵居ますね」
「もっと教えて、向こうにはゴブリンっていないのよ」
「なるほど・・子鬼は一言で言えば害悪です、人を孕ませて増えますし人のみならず家畜や益獣も襲う魔物です」
「言葉を話すとか商売をするとか言うことはないの?」
「上位種なら言葉を話すぐらいはあるかも知れませんが、人と友好関係になったというような話は聞いたことがないですね」
「そう、なの?」
人と同じように手があり足があり頭がある
どうにか出来るものではないのか?いや、友好関係は全く築けないものと現地の人間が言うのだから間違いないのかもしれない
でもそれが本当かどうかはまだ私にはわからない・・下手をすれば命を奪うことに繋がる
お互いに顔を見合わせている子どもたち、そんなに私の言っていることがおかしいのか?
「あの、子鬼はあんな姿をしていますが人ではないのです、絶対に信じてはならず、耳を貸してはいけません」
「あいつら見たら殺さなきゃいけないのになんでお母さんは困ってるの?」
「お母さんはゴブリンやオークを知らないんだよ、アオキチキューにはいないのかな?」
「ごめんね、変なことを言ってるかもしれないけど私は異世界人だからね、常識が違うんだ」
「なるほど、では、そうですね、子鬼や豚鬼はと言った鬼種は人に害をなす邪神や悪神が創造したものであって、人にとって害をでしかありません」
そもそもの起源が違うの?でも生きることが尊いのなら彼らだって生きている以上・・・
「遊びで子供を殺し、遊びで人に火をつけ、遊びで女でも男でも犯してくる種族です・・・だから絶対に躊躇せずに殺してください」
「そういうものなの?」
「そういうものです」
そうなのだろうか?
<そうだな、奴らは害悪だ見かけたら殺せ>
「チーテック?」
<なんだ?迷ってるようだから助言したまでだ>
「あんたずっとついてるもんなの?」
<そういうもんだ>
チーテックが脳に直接語りかけてくる変な気分だ、慣れないなぁ
<慣れろ>
「ていうかお風呂とかトイレとか覗かないでよ」
<俺は今は女性の身体だ、気にすんな>
「気になるわよ、とにかく覗かないで」
<・・・・・>
「あのおかあさん、誰と話してるのでしょう?」
「あぁ、ごめん、チーテックって神にも加護を貰っててさ、急に話してきて」
「おぉあの守護戦神のチーテック様から!なんと心強い!!」
「・・・・・え?」
「なら入っても大丈夫でしょう!どうぞどうぞ!!」
「・・・・あれ?チーテックもしかして良いやつなの?」
<俺を一体何だと思ってるんだ?>
「クソムカつくオークに加護を渡した悪い神」
<あれは・・魔王幹部のオークキングを殺そうとしてだな・・>
「でもそのあと洋介に怪我させたよね?邪神じゃん」
<・・・・・ごめんな>
「あら素直、でも洋介や奈美に直接言ってよね」
<わかった、だからもう封印は勘弁してほしい>
ハルバードを出してダンジョンに近付いてみる
何かあったら助けてくれる?
<任せろ>
行けるのならこのまま洋介助けれるかな?
私はダンジョンに足を踏み入れた
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