上 下
255 / 618

第251話 荒野の黒葉

しおりを挟む

口の悪い少女と話をしていく

現在地はザウスキアとの国境近くの荒野であり、レアナー神聖教国内、このあたりにはなにもないそうだ

うん、赤茶けた荒野しか見えないね


「そんな事も知らないのかよ馬鹿だなー」

「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥・・・なんてね」

「なんだそれ?」

「ことわざよ」


今は元杉神官を助けたい、それは恥なんてよりもっと大切なことだ

本当はミルミミスさんに乗せてもらって移動したほうが速い

だけどこちらのレアナー様が敵であるのならレアナー教国内のこの子が敵に回る可能性だってあるし情報が欲しい


治癒魔法はただ傷が治るだけではない


怪我や病気の治る過程でレアナー様の力の一端に触れる

だから信仰心なんて欠片もない「こんな怪しい宗教の信徒になんざなるか!金を払うから治してくれ!!」なんて言っていた患者が治癒後に熱心な信徒に変わるんだと思う

治療後の意味不明な行動は怪我や病気が長期に渡って身体に害を及ぼし続けたものほど起こしやすい

骨折してすぐの治癒ならばあんなことにはならない

魔力という謎のエネルギーが身体になにか作用している可能性もある

レアナー様の治癒魔法は肉体の再生を行う上でレアナー様の力に体の芯から触れることになる

その結果、過激派のような狂信者達が生まれる、のかもしれない

ケーリーリュさんいわく信仰する神の違いによっては冷静になったり、眠ったり、戦意が高揚するなどもあるそうな


治癒の副産物として生まれてしまう狂信者たち


あの人達全財産を捧げていく人とか、毎朝ビルの前で土下座の形で礼拝していたり、勝手に駅前で勧誘していたりしていて怖い

一度偶然街の中で出くわしたんだけど私に向かって五体投地して祈る信徒がいてビビった、怖かった

なんか私に関する本まで出してる信徒まで居る

普段は「治ってから毎日が楽しいです」とか「人に優しくできるようになってきました、ありがとうございます」とかとても好印象な人なのになんなんだ


レアナー教は体の一部とでも言わんばかりの人達

だけどそれだけにテレビやマスコミで叩かれると攻撃的になる人もいる


テレビでレアナー教を叩く人がいるのは仕方ない


新たな宗教が大きな活動をしているなんてそれだけでも危険視されて当然だ

それに段々とレアナー教内にも危険な集団も増えている

問題を起こすものも多い


そしてもちろん問題はテレビや新聞、SNSでもすぐに広がる

それを見た信徒達は、特に狂信的な人なら親の敵かと言わんばかりにマスコミに激怒する

負の連鎖、悪循環である


だから抑えるのが大変だ

何度も何度も何度も何度も「そのまま突撃すればレアナー教に迷惑がかかる」と言っているのに聞かない

そんな人たちは拘束するしかないし、反省したかと思えば私の知らないところで謎の集会をしていることもあったらしい


今頃陸斗さん達大変だろうな・・・


検察だった人ですら信徒になった途端にテレビ局に向かって「燃やしましょう」って本気で言っていた


・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・




ほんとどうしたら良いんですかね

火薬庫みたいな地球のレアナー教


外国からうちに来てほしいってお誘いも多いし内部の調査をさせてほしいって人も多い

怪しげな訪問も多いけどそれよりも



今頃、国会議事堂や政府機関、テレビ局、新聞、その全てが燃えてないと良いんだけど・・・・・・



徳田さんや陸斗さん康介おじさんの胃が心配だ

今であればレアナー教のトップである元杉神官はいないし、ビルのまとめ役である私、そして城を纏めている遥とヨーコがいない


帰ったら日本国内にレアナー教国ができているかも・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・ありえるな


とにかく地球のレアナー教ですらこうなのだ


こちらのレアナー教は更に危険な可能性だってある

目立たずに行動するべきだろう

この小さな女の子だっていきなりナイフを向けてきた


歩いているだけなのに胃が痛くなってきた

小声で詠唱して胃に少し治癒魔法をかける


「ふーん、あんた本当に神官様なのな」

「そうよ」

「・・・・・襲って悪かったよ、だけどあんたらも悪いんだからな?」

「なんで?」

「あんたどこの田舎の神官なんだよ?修行の旅の最中か?」

「まぁ遠くから来たけど」


こちらを見て目を開く少女、少女だよね?

胸はないけど声も高いし、線は細い

名前もエシャロットって女の子っぽい気がする


「ちっ、今この辺は大変なんだよ、」

「戦争でもしてるの?」

「ザウスキアってどんな国か知ってるか?」


ほとんど知らない

けど少し知ってる部分でごまかす


「勇者様を召喚した尊い国だって聞いてるわ、なんでも勇者様が修業なさった国だとか」

「何だよそれ」

「聞いた話よ」

「・・・・・確かに召喚したのは合ってる、だけどいい国なんてことはまったくない」


このまま情報を引き出したい

少なくともこの子には敵に回して死に装束を着てビルの外のテレビスタッフに向かって突撃しようとするようなうちの過激派信徒みたいな凶悪な敵にはなってほしくない


「そうなの?」

「亜人を物扱いするやつも多いし戦争好きな国だよ、今にも戦争起こしそうな最低の国だよ」


差別どころか物扱いの国ね、それはレアナー教国とは仲が悪そうだ

戦争ね、魔王を倒せたらしいけどまだ敵は残ってるって聞いたのだけどそれよりも戦争って・・・

いや、こちらにはこちらの事情があるのだろう


「どこと?」

「はん、何も知らねーババアだな?・・・・ここだよ」

「は?」

「今ここ、あんたらみたいな少人数の斥候がよく来るんだよ」


それは襲われても仕方ないのかな

いきなり殺そうとしてきたことを許せるわけじゃないけど戦争直前にこんな場所にいるなんて怪しすぎる

いや、この少女も戦おうとしたってことはもう始まってるの?


「狙いは?」

「荒野に出来た新しい領地だよ」


なんとも嫌な場所に来てしまったらしい、遥たちが心配だな
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya
ファンタジー
戦争・紛争の収まらぬ戦乱の世で 平和への夜明けを導く者は誰だ? 其々の正義が織り成す長編ファンタジー。 〜本編あらすじ〜 広く豊かな海に囲まれ、大陸に属さず 島国として永きに渡り歴史を紡いできた 独立国家《プレジア》 此の国が、世界に其の名を馳せる事となった 背景には、世界で只一国のみ、そう此の プレジアのみが執り行った政策がある。 其れは《鎖国政策》 外界との繋がりを遮断し自国を守るべく 百年も昔に制定された国家政策である。 そんな国もかつて繋がりを育んで来た 近隣国《バルモア》との戦争は回避出来ず。 百年の間戦争によって生まれた傷跡は 近年の自国内紛争を呼ぶ事態へと発展。 その紛争の中心となったのは紛れも無く 新しく掲げられた双つの旗と王家守護の 象徴ともされる一つの旗であった。 鎖国政策を打ち破り外界との繋がりを 再度育み、此の国の衰退を止めるべく 立ち上がった《独立師団革命軍》 異国との戦争で生まれた傷跡を活力に 革命軍の考えを異と唱え、自国の文化や 歴史を護ると決めた《護国師団反乱軍》 三百年の歴史を誇るケーニッヒ王家に仕え 毅然と正義を掲げ、自国最高の防衛戦力と 評され此れを迎え討つ《国王直下帝国軍》 乱立した隊旗を起点に止まらぬ紛争。 今プレジアは変革の時を期せずして迎える。 此の歴史の中で起こる大きな戦いは後に 《日の出戦争》と呼ばれるが此の物語は 此のどれにも属さず、己の運命に翻弄され 巻き込まれて行く一人の流浪人の物語ーー。 

異世界とは他の星系ですか

ゆみすけ
ファンタジー
 ニートである、名前はまあいいか。 仕事をしていたが、首になった。 足が不自由になりセールスができなくなり自ら退職した。 未練はない。 働いていたときは、とりあえず給料はもらえた。 だから会社に不満はない。 すこし蓄えがあった。 それで食いつないでいる。 体が不自由なヒトの気持ちがすこしわかった。 アパートも引っ越した。 家賃が安いところをさがした。 贅沢はいえない。 今までの生活からダウンするのはつらかった。 一度覚えた贅沢は、なかなか制限できないものだ。 しかし、無い袖は触れない。 今日、昼なに食べようか、朝は無い、近所の安いスーパーでオニギリの安いやつでも、コンビニは高いから、スーパーのほうが安いから。  金が余分に無い、1日500円までだ。 足を引きずり歩く、すこしなら歩けるから。 声がする、 え、なに誰、聞えたのではなく、響いたから当然とまどった。 「聞えましたか、やっと聞えましたね。言葉理解できますか。」 だれ、頭に直接聞える声はだれだ。と思考した。 「まあ、だれでもいいでしょう。のちほど会ってからでも、とりあえずアポだけでもと思いまして。」 どうしたら会えるんだ。と思考した。 「あなたの時間に合わせます、だれもいないところで。」 なら近くの川の土手で夜7時ころなら誰もいないから。 「わかりました、では今夜7時ころ、そこの川の土手で。」と頭に響いて、その声はやんだ。 

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

氷弾の魔術師

カタナヅキ
ファンタジー
――上級魔法なんか必要ない、下級魔法一つだけで魔導士を目指す少年の物語―― 平民でありながら魔法が扱う才能がある事が判明した少年「コオリ」は魔法学園に入学する事が決まった。彼の国では魔法の適性がある人間は魔法学園に入学する決まりがあり、急遽コオリは魔法学園が存在する王都へ向かう事になった。しかし、王都に辿り着く前に彼は自分と同世代の魔術師と比べて圧倒的に魔力量が少ない事が発覚した。 しかし、魔力が少ないからこそ利点がある事を知ったコオリは決意した。他の者は一日でも早く上級魔法の習得に励む中、コオリは自分が扱える下級魔法だけを極め、一流の魔術師の証である「魔導士」の称号を得る事を誓う。そして他の魔術師は少年が強くなる事で気づかされていく。魔力が少ないというのは欠点とは限らず、むしろ優れた才能になり得る事を―― ※旧作「下級魔導士と呼ばれた少年」のリメイクとなりますが、設定と物語の内容が大きく変わります。

処理中です...