上 下
249 / 618

第246話 黒葉とミルミミス

しおりを挟む

起きると私はミルミミスさんに膝枕されていた

周りは荒野、何もない

きれいな人だ、だけどこの人、表情があんまり変わらないんだ

舐められた手の感触を思い出してちょっとゾッとした

じっと動かずまっすぐこちらを見ている


「おはようございます」

「うん、おはよ」


起き上がると、見渡せる景色は全て荒野だ、サボテンとかありそう

赤茶けた地面が見えているがそこまで熱いわけではない、直射日光がきついわけでもない

周りを見ても枯れた空気しかない


「遥達は?」

「落ちた」


落ちた?落ちた??落ちた???


「落ちたの?」

「うん」

「あ、あの、ルール!ルール達は?」

「追いかけていった」

「ヨーコは!?」

「追いかけていった」


なんと言って良いのかわからない

あぁ太陽が眩しい

空をよく見てみると他の星も見える、地球じゃないことは明らかだ


「・・・・・」

「・・・・・」


ミルミミスさんに何を聞けば良いのかわからない

じっとこちらを見ているミルミミスさん、危機感がないのか?

ここは何もない荒野だ、地図もなければどちらに進めば良いのかわからない前人未到の土地だ

日本人では・・多分、私だけだ

いや自分でもパニックになってるね

ブローチをしっかり握りしめて深呼吸した


「黒葉を任せられた」

「なるほど」

「うん」

「・・・・・」

「・・・・・」


余裕そうなミルミミスさんを見てなんだか気が抜けた

余裕そう、なんじゃない

きっとミルミミスさんにとってはこの状況は全く脅威などではないのだ

よし、落ち着いた


「私は黒葉奈美です、地球のレアナー教の大神官をしていて、元杉神官の婚約者です」

「幼子の?」

「幼子とは元杉洋介のことですよね?」

「うん、幼子」

「そうです、2人きりになったので改めて自己紹介です、ミルミミスさんのことも聞かせてもらえますか?」


地球では名前を聞いた程度であまり話していなかった

レアナー様のことを話せないヨーコの指示で言われるがまま動いていたし、こちらで話せるという事も言われていたのだけど離れてしまったのなら仕方ない

このミルミミスさんのことを詳しく知っているわけではないしまずは仲良くなろう


「ミルミミス、とか呼ばれてる」

「・・・・・」

「・・・・・」


ヨーコは以前とにかくミルミミスさんに質問攻めにしていた

聞かれた質問には簡潔にだけど答えていた

元々竜であるらしいしルールのように話しにくいのかもしれない


「えっと、元杉神官を拐われたので助けるためにこちらの世界に来ました、ミルミミスさんは手伝ってくれますか?」

「うん」

「まずはヨーコたちと合流するべきだと思うんですがミルミミスさんはどうしたら良いと思いますか?」

「わからない」

「ヨーコさんは人を見つける魔法や技術はありますか?」

「ない」

「ヨーコと遥とルールはどこにいるかわかりますか?」

「わからない」

「・・・・・」

「・・・・・」


どうしよう

荷物をチェックする、飲み物や食べ物、衣類に武器、愛用のムチ、杖色々とある

そうだ、便利道具の中に陸斗さんがいれてくれた便利道具があったはず

スタンガン、取り出せそうな場所に持っておこう、地面に置いておく

始めて見るものも多い・・・あ、トランシーバー!・・・・・使い方がわからない

色々触ってみるが遥が持っていて更に気が付かないと意味がないんじゃないのかな?


・・・スマホは役に立たなさそうだなぁ


モバイルバッテリーはすごく明るいハンディライトの充電もできる、うん、充電はMAX


「スンスン・・・」

「ミルミミスさん?」

「良い匂いがする」


食料の中にもいろいろはいっている

収納袋の中のものは元杉神官の【収納】と違ってなんでもいくらでも時間停止していれられるわけではない

入っているのは日持ちする調味料や食べ物お菓子が中心で、後はミートパスタが入っている

ミートパスタは遥の母さん、直子お義母さんの喫茶店の人気メニューだ

緊急事態ということで直子お義母さんが大量に作ってビルでも城でも食べれるようにおいていってくれたものだ

ミートパスタと言うよりは密封容器に麺もソースも混ぜられて入ってるしボロネーゼなのかもしれない

・・・いや、混ぜて炒めて作っているわけじゃないしミートパスタ?

すぐに食べられる密封容器の分以外は真空パックされたソースがいくつも入っている

わけられたものもあったけど私はこっちのほうが好きなのでこっちの容器を持ってきていた


「食べたいですか?」

「うん、いいの?」

「はい、ミルミミスさんは食べれないものはありますか?」

「・・・・・瘴気や毒は食べれない」

「言い方が悪かったです、一般的に人間が食べれるもので食べれないものはありますか?」

「・・・・・・・・・・・・・ない」

「じゃあ一緒に食べましょうか?」

「うん!」


容器にゴムのベルトで止められたフォーク

ぬるいけど常温でも食べれる、濃い目に作られていてとても美味しい

ひとくち食べていたんでいないことが分かったし私はお腹が空いていない


「はい、あーん」

「?」

「口開けてください、食べさせるので・・・このフォークを口から出すまで口を開けていてください」

「うん」


口を開けて瞬きを全くせずにパスタを待っているミルミミスさん、お肉をたっぷり絡ませて口に入れた


「噛まずに唇をしめてもらえますか?」

「・・・」


全く身体を動かさないが

「おいしーな!!」


表情の動かない美人なミルミミスさんだがとても美味しかったのだろう

元気な声にほんの僅かにこぼれるような笑顔が見れた


・・・・・何も解決していないがミルミミスさんが一緒にいてくれて本当に良かった


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。 十分以上に勝算がある。と思っていたが、 「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」 と完膚なきまでに振られた俺。 失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。 彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。 そして、 「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」 と、告白をされ、抱きしめられる。 突然の出来事に困惑する俺。 そんな俺を追撃するように、 「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」 「………………凛音、なんでここに」 その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

女神に冷遇された不遇スキル、実は無限成長の鍵だった

昼から山猫
ファンタジー
女神の加護でスキルを与えられる世界。主人公ラゼルが得たのは“不遇スキル”と揶揄される地味な能力だった。女神自身も「ハズレね」と吐き捨てるほど。しかし、そのスキルを地道に磨くと、なぜかあらゆる魔法や武技を吸収し、無限成長する力に変化。期待されていなかったラゼルは、その才能を見抜いてくれた美女剣士や巫女に助けられ、どん底から成り上がりを果たす。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

処理中です...