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第245話 遥の夢、目覚めると目の前には
しおりを挟む悪夢が悪夢だとふと気付いた
「おとこおんなー」と上の学年の男の子達に言われた
洋介を振り回してたら転けて怪我をさせてしまった
川で泳ぎを教えていて溺れさせてしまった
洋介がせっかく作ってくれたケーキを足が滑って滑って壁に全部食べさせてしまった
山で取った虫をタンスに入れて育ててて母さんにぶん殴られた
授業の野球の場外ホームランで人に怪我をさせてしまった
タンスの角に足の小指をぶつけた
テニスで相手選手の顔に当ててしまった
テスト勉強で範囲外を出されて腹がたった
そして病気で体が言うことを聞かなかった
春樹たちと付き合っていた時間の全て
自分が体験した嫌な思い出
私が忘れていたものまで何度も同じシーンを体験し直した
何度もタンスの角に小指をぶつけてなんとか気が付けた
「なんなのこれ?」
<これはお前の痛みや絶望だ>
「えっとチーテックさんでしたっけ?」
目の前の私の色違いがいた
髪は赤、服はなにかの民族服でアクセサリーをジャラジャラとつけていてうちのリビングのソファーでどかりと座っている
すごく場違いな気もする
<そうだ、お前には俺の加護を授けた、これは試練みたいなものだ>
「試練?」
<何度も痛みを思い出し、その先で護りたいものを再確認するためのものだ・・・俺はそれで強くなれたんだが>
護るもの・・・?
そうだ、私は洋介を助けるために加護を得たんだった
<そうだな、で、何を護りたい?>
「私、私は・・・」
そんなのは決まってる
「洋介を、家族を、レアナー様を、私の居場所を守りたいです」
<良い答えだ、意識も戻ってきたし現状を教えよう、少し頭に流すからゆっくり考えるがいい>
何があったのだろうか?この神様は敵ではないのだろうか?
記憶が定かではない
小学校を卒業したばかりの気持ちと春樹と別れてすぐの気持ちなんかが混合してしまっている
<大丈夫、今は安全だ>
ソファーから立ち上がったチーテックが私の頭に触れた
ほんの少し前の私が見える
私は洋介が攫われて、異世界に来て・・・あの箱を開けてチーテックに加護を授かったんだった
そしてこの神様がくっついて、異常なまでに眠くて眠くて
頑張って気を保とうとしたんだけど何かの衝撃で落ちた?
洋介奪還のためにレアナー神聖教国から出ていってすぐだったはず
チーテックの視点で何があったのか教えてもらう
なんだか私が凄い男らしくここまでやってきて軟禁状態となっていた
今はベッドで寝ていてここは安全、後は加護をしっかり調べる人が来るのを待っているのが現状である
<ゆっくり休むと良い>
「休む?なんで?」
<加護で身体が作り変わっている・・まぁなんだ?休めると良いな?>
意識が戻ってきた
やばい、全身が痛い、肋骨の位置が痛みでわかるほどだ
腰や太ももなど、こむら返りが変な位置で起きたように、全身が居たい。体の芯までが痛む
声も出せないしそのまま寝た
いや、痛みで全然眠れない
「コルルルル」
心配そうなルールもすぐ横にいる、撫でてやりたいが動けないな
あまりの痛みに悶えることも出来ないが記憶は整理されてきた
チーテックの行動通り身分証を手に入れて洋介を助ける、奈美とヨーコとミルミミスさんと合流しないと
日本のレアナービルは大丈夫かな?
神像の中に引っ込んでしまったレアナー様は大丈夫かな?
数時間考えているうちにふっと寝てしまった
・・・ルルル」
ルールの唸り声で目が覚めた
薄っすらと目を開けてみてみる
ヤバい、どう見ても裏社会の住民
ハードボイルドで貫禄のあるイケオジがいる
懐から拳銃と取り出して笑いもせずに部下を撃ち殺しそうな、ヤバそうな香りがする
ダーティーでワイルドな、どう見ても暗黒街の住民
そんな男がベッドのすぐ横で私を見下ろしていた・・・
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