上 下
205 / 618

第203話 牢獄に戻った日

しおりを挟む

起きるといつもの部屋だ

コンコンとノックされているので外に出るとAがいた


「どうだった!!?」

「最高の1日だった」

「は?」


部屋に招き入れてアンケートの内容や娘たちにちゃんと会えたことや体験した超豪華な食事に遊園地、プールにトロッコなどなど夢のような一日のことを話した

娘たちに会えたことを喜んでくれるのかと思ったのだがヒゲを撫でながらうつむいたA


「どうかしたのか?」

「あぁ、お前の話で考えたいことがあってな、もっと話してくれ」

「?あぁ」


しばらく話すと難しい顔をして下を向いていたAが顔を上げた

渋い顔をしている


「そうか、とにかく娘さん達が元気そうで良かったな」

「あぁ」

「これで確定した、この牢獄の時間は狂っている」

「どういうことだ?」

「まぁ聞け」


ここに入ってくる人間は基本的に入る前の人生を詳しくは話さない

とはいえ出る方法もなく、絶望を叩きつけてくる日常の生活

希望もない生活での共同生活だ、いつの間にかポロポロと過去のことも聞ける


その中で不思議なことがある

牢獄に入れられた日がおかしい、新しく来た人間と長くいる人間の体感時間が間違いなくスレているのだ

俺たちはもう2年ぐらいはこの牢獄に囚われている気になっている


この牢獄は外の時間が全くわからない、外を知る方法が全くない

太陽も、月も、空も見えず、雨の湿度や風もない

季節すら感じることはないし外部の振動などもわからないことから時間の経過が全くわからないのだ

刑務所で独房に居たとしても食事の時間や朝か昼か夜かぐらいはわかるかもしれないがここはまるで異世界だ

入ったらそれまでの地獄だ、管理者側にとって我々の時間の感覚など必要もないのかもしれない

感じられるものといえば腹が減ることまずい飯を食わなきゃならないことくらいだ


この牢獄のサイクルは寝るか仕事を終えるか一定時間でリセットされる


数年はここにいると思っているのだが外では時間が全然過ぎていない

育ち盛りの娘もさぞ大きくなっているかと思えばそうじゃなかったし「小学校のお祝いできなくてゴメンな」と謝ったら「小学校はまだ行ってないよ?」と笑って言っていた


小学校に行って彼氏でも出来ていないかと心配だったのだが・・・


時間の進みがおかしい、そういう疑問はあった

だけど「時間が正しく進まない」なんてありえないし時間の感覚の狂った新入りだって同じぐらいの日付で捕まって石化し、別の場所に保管されていたという可能性もあった

石化も全てが完璧というわけではない

睡眠中の石化はおぼえていなければ一瞬で時が過ぎたように感じることもあるが暴力後などの懲罰の石化はずっと見えているし聞こえている、が一定のサイクルで場面が自室に切り替わることもあった


会った娘たちが偽物である可能性や幻を見ていたなんて可能性もある

低予算映画なんかでよくあるように俺たちは別の惑星の内部に閉じ込められている可能性だってある


俺が1日を過ごしている間にAは10日ほど過ごしていたそうだ

お陰で俺の生存確認のために部屋に何度もきていたそうだがドアには名前もなく曲がり角から何番目でしか判断できないために隣人には迷惑をかけまくっていたらしい

もしかしたら部屋が減るなんてこともあるし両隣にも毎日確認したそうだ

この牢獄内では死亡した人間はいない

もしも死んだ人間がいるのならそいつの部屋が残るのかは不明だ


色々話していると時間が経ってしまった


アンケートの結果も知りたいし牢獄内の何かかわってないかといつもの日課をこなすことにした

相変わらずトイレは劣悪、スープは吐きそうなほど不味い

だけどいつも通り、ではないな

いつもなら古参の俺には水をいれてくれるのは速いのだが今日はムスッとしている


「おらよ」

「あ、あぁ」

「ちっ」


ストレスでも溜まっているのかと不思議に思いつつも作業スペースに行く

前は何を作っていたんだっけ?あぁ、大きめの神像だった

木工スペースの中でも熟練した人間に与えられる個人スペース、彫刻刀やノミやカンナが揃っている

この場所には俺しか入れないし、たった1日なのに娘たちとの体験が濃いかったせいか懐かしく感じる

自作の椅子にAの手製のザブトンをうまく敷いて座る、きちんと並べられた彫刻刀を取り出す



「「「「「えええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!???????」」」」」


長く付き合ってきた木工スペースの仲間たちが目玉が飛び出るほど驚いてこちらを見ている、絶叫で少し鼓膜が痛い

「え?」

「あんたGか!?何があったんだ!!!??」
「新人じゃねぇのか!??」
「その髪とヒゲどうやってんだ?!」
「別人だろ!?かわれその場しょグガっ!!?」
「絶対別人だ!ふざけやがって」
「死んだかと思ってたぞ!テメー!!」


あっ・・・
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。 十分以上に勝算がある。と思っていたが、 「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」 と完膚なきまでに振られた俺。 失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。 彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。 そして、 「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」 と、告白をされ、抱きしめられる。 突然の出来事に困惑する俺。 そんな俺を追撃するように、 「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」 「………………凛音、なんでここに」 その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...