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第169話 お食事とお経
しおりを挟むいつの間にか配信が切れていたのでみんなでご飯を食べに行くことにした
同時視聴車が増えすぎるとこういうこともたまにあるらしい
来たのは吾郷おすすめのお店だ
宴会ができる大広間で食べたのだけどルールとレアナー様は一番奥でものすごく接待されていた
店員さんが「ありがたやありがたや」いいながら山のように用意されているお菓子を差し出されている
「これは変な味ですぅ」
「これは八ツ橋でたしかに癖がありますね、ではこちらはどうでしょうか?」
「おいしーですぅ!!」
「コルルルル!!」
「ムッホー」
「******!!!」
神殿長とケーリーリュは叫びながら料理を食べ始めた、よほど美味しいんだろう
向こうのお菓子とは段違いだもんな・・・
逆に向こうでよくある甘味だよって料理人や吾郷に阿部、登仙先生に渡すと死んだような目で齧っていた、阿部以外
阿部はガラスの容器と小刀を出してダイドンの茎をなにやらしている
楽しくご飯を食べていたのだけど酒を飲んで脱いだ神殿長が女性の店員さんに絡み始めてケーリーリュが絞め落としたのでこの辺でお開きにする
神殿長とケーリーリュを向こうに送ってからレアナー城に帰った
レアナービルはお休みである
お経を唱えている
いつもの元杉の家、クーラーが効いていて眠たくなりそうだがお経は続ける
この家では皆で読むお経は結構な大声となる
全員が熱心に唱えるし、何よりも人の数が多い
強でついている扇風機なんて物ともしない声量である
声を張ってる分、寺よりも音量はあるだろう
それはいい
それよりも住職として失敗しないようにいつも心がけていることがある
絶対に泣かず、笑わず、寝ずに粛々と進める
簡単なようで難しいのだと教わってきた
これまでずっと朝も夜もお経を唱え続けてきた
死者を祀ることは遺された者に出来る最後の供養である
寺に産まれて、感謝されて、お金をもらっている
幼い頃に泣いてお礼を言われる祖父を見てかくありたいと心底思ったものだ
だから私は失敗をしないように、生者も亡者も安らかに出来るように努力を続けてきた
たとえ雨が降ろうともが台風が来ようとも、私1人でだって物心ついてからずっとお経を唱え続けた
失敗したのは三度
1度は単純に修行不足で手順を間違えた時、2度目はインフルエンザで気がつけば1日寝込んでしまってお経を欠かした時、そして親友の弟が死んだときだ
康介と私は幼なじみだ
その弟が栄介、康介とは年齢が離れていたがとても可愛かった
とても悪戯好きで、でも憎めないやつだった
たまにバーベキューで一緒に食べて、栄介に生臭坊主なんて言われて康介がげんこつを落として寺の廊下を拭きに来たりして
自分は一人っ子だったけど栄介は自分の弟でもあった
歳が離れていたけど可愛がったものだ
栄介が詩乃さんと結婚して洋介が産まれ、最高に嬉しかったのを覚えている
なのにトラック事故で死んでしまって、変わり果てた2人に、涙が嗚咽が止められなかった
父さんも爺さんも来てくれて助かった、爺さんは康介と栄介の名前を考えた人でもあって涙が流れていた
聞けばトラック事故の会社は康介のお父さんと関わりがあって世話をしたこともあったが整備不良で事故は起き、整備会社は悪くともトラックの会社は悪くないのにこんな事になってしまったそうな
何たる諸行無常かなんて考えてしまったがそれは世の常である、のだろう
親戚も多い元杉家には月1で足を運んで念仏を唱えているが今日は一味違う
あれだけ世間を騒がせている魔法少女のことは知っていた
問題の人物は洋介であると言われたが信じられなかった
怪我を治す?いや、ありえないだろう、光る?宗教で光るようなことができればもっと熱心な人は多いだろうな
栄介や詩乃さんは本当にひどい状態だったし行方不明の洋介は徹底的に探してもいなかった
魚の餌になったんだろうと口には出さなくても心のなかで察していたしあの崖で念仏を唱えた
夏に天気の情報を見るのにとあるお宅で念仏の後にテレビを付けさせてもらったんだがそこで「怪しげな新興宗教」の「魔法少女のやっているレアナー教」のニュースが流れた
そこで最近のレアナー教のニュースが紹介され、忘れるはずもない弟の顔が写った
「ゲホッごふぉっ!?」
「大丈夫ですか?」
「すいませっ!んんっ!気管にお茶が、少し」
そんな後の念仏だ
だが家に入ってからもそんなことには誰もそのことにふれないし、3人は姿を見せない
置かれた遺影はそのままであった
元杉家先祖代々の方へのお経なんとか読み終え、振り返って説法をする
並べられた座布団の真ん中には来たときはいなかった3人がいた
やるかもとは思っていた
お経に3人の声が混じってすぐにわかった
お経を唱えてる最中はお経が終わり次第、袈裟を脱いでシャイニングウィザードをするか袈裟を着たままするかを考えていたのだが
「おかえり、また会えて嬉しいよ、栄介、詩乃さん、洋介」
私の口からでたのは自分でも思わなかったねぎらいのような言葉であった
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