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第156話 夏の風物詩

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「海だぁ!!!」

「なんですのそれ?」

「海に来た時の様式美よ、海に来たらおっきく叫ぶのよ」


「そうですの?なら・・・ 海 で す わ ぁ っ !!!!!!!」


「声おっき!!?」

「う、うみだぁ・・うぅ、恥ずかしい」


・・・・・・海に来たんじゃないんだけどなぁ







品の良さそうな和服のおばあさんがレアナービルに来た

背筋もまっすぐしていてどこかが悪いようには見えないが老人が治してほしいと来ることは多い


「治療ですか?」

「いえ、大きな声ではいえないことですが」


・・・また宗教の勧誘や活動を辞めてほしいとかかな?


患者を動かせないって場合でも前は転移で対応してたんだけど行った先で変な集団が襲ってくることもあったし転移も魔力ごっそり減るからすぐにやめた

すぐに魔力は戻るんだけど行って帰ってだけでも時間をとられるし、その間にレアナービルに並んでる人達をもっと治せるからね

少し不安そうにキョロキョロしていたが顔を上げた


「いえ、怪しいものではありません、ご依頼があってまいりました」


六太をちらりと見て別室に案内してもらう

荒事にはなりそうにはないが話が通じなかったりすることは多い

そんなときは「お帰りはあちらです」って帰ってもらうことにしてるんだけど六太がいると凄く助かる


「洋介です、治す人もいるので手短にお願いします」

「雉子谷冴子と申します、旅館を経営しています、あの、ここでは見えないもの退治もやっているのでしょうか?」

「はい」


あれ?思ってたのと違う


「実は、私共の経営する旅館に、その、出るんですの」

「何が出るんです?」

「その、幽霊が・・・御願いです、私共をお助けできないでしょうか?」


聞いて見ると旅館という宿屋のオカミ、店主というのをやっていて最近幽霊が出ると困ってるそうだ、黒葉がよくわからない言葉は教えてくれる

そこで神社やお寺にお祓いをしてもらったんだけど効果もなく、今話題のレアナー教では以前にそういった仕事をしていると窓の外に書かれていたと聞いて相談しに来たと・・・

なるほど


というわけで準備してから来た、杖ですぐの距離だが車でお迎えがきた

海に近い旅館で海岸にぽつんと立っている、旅館に行くのにはマイクロバスで山の中を移動しないといけない

海岸沿いの山道から入ってこんなところ通れるの!?みたいな道を走った先にその建物はあった


こんなところに宿ってあるんだ・・・


宿屋は山の中を走った割には立派で大きい、シニセの旅館らしい

昔はこのあたりで有名な宿だったそうだ


「ようこそおいでくださいました!ささっこちらへどうぞ」

「よろしくお願いします」

<よろしくですぅ>


レアナー様にはるねーちゃん達も連れてきた

レアナービルには・・・・


「ほっほっほ」

「誰この爺さん?」
「知らない、聖下が連れてきたんだって」
「えーとどちらさまでしょうか?レアナービルになんの御用で?」

「バカモン!儂はレアナー教大神官じゃぞ!見てわからんのか小童ども!」

「「えー・・・」」

「聖下がこの神殿で働くように言ってくださったのできたんじゃ!キリキリ働くがいい!!」

「・・・どうする?」
「じゃあよろしくお願いします」

「うむ!」


神殿長を連れてきた

アオキチキューに来るのが夢だったらしいので条件付きで連れてきた

条件はビルの中にいること、殺さないこと、それと神殿の業務をやってもらうことだ

幸いにして高位神官だけあって言語の加護を授かっている、こちらの言葉もなんとか話せる

神殿長は各神殿に1人は存在するが年功序列ではない

神殿を運営することができること、様々な言語に対応できること、優れたレアナー教徒としての能力を兼ね備えていることなどが条件に上がる

辺境だったし多くの民族がいるあそこでは神殿長にも言語の神の加護は必要だ

幸いにしてあの神殿は周りの国が滅ぼされたことで流れてきた高位神官が他にもいるし戦争もほとんどなくなったから人手は余っている


「こちらには不思議なものが多いですね」

「・・・・・」


耳をピコピコ動かしながら物珍しそうにしている、だけどこっちではエルフ種なんていないから貴方が一番不思議だと思うんだけど

うん、ケーリーリュも連れてきた


2人の先生として優秀だと思う


もっといっぱい連れてこようとも思ったんだけどレアナービルと僕の近くの2箇所ぐらいしか安全が確保できない

城で山積みになってるスパイたちを見るに結構危ないからだ

聖騎士や神官達は来たがっていたけど人数を増やされると緊急の時に困るし何人殺すかわからない


ルールはお留守番、宿屋の壁引っ掻いて壊しちゃいそうだしね

城が気に入ったのか毎日楽しそうにしてる

元がミャーゴルの聖獣だからか巣や仲間を護るのが得意だし、城を巣と決めたのかもしれない

あの無駄に広い城を今日も走り回っているだろう


宿屋の部屋は窓からは海が見えていて、崖の下のビーチには階段を降りるとすぐにでも行けるそうだ


「いや泊まる予定はないんだけど」

「いえいえ!幽霊は夜に出ることもありますし!板前が腕によりをかけてお食事を用意しております!お忙しいとは重々承知しておりますがどうかどうか!!」


オカミ、女将というものらしいがお化粧で隠せないほど疲れているようだ

それよりも気になる点がある、宿の外にも中にも高そうなカメラが大量にある


「部屋や廊下にあるカメラは?」

「え?あ、これらは何でも幽霊調査をしている方がおられまして、3ヶ月ほど前からこの辺りを調査しています」

「幽霊調査、そんなお仕事があるんですね」

「何でも海外ではそれなりにあるお仕事のようで・・私共にはよくわかりませんが熱心に研究しているようです」


うーん、どうしよう

めんどくさくなってきたぞ


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