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第147話 私はやると決めた

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剣を振るい、槍を振るい、弓を使う


バシュンっ


「ふっぐっ!!!??」


胸の横に弓の弦があたった、めっちゃ痛い・・・・!!!??


「何をしてますの?」

「・・・っなんでも、ないわ」


弓は無理だ、今度は斧を振ってみる・・・・・まだ胸が痛い

とにかくその日はずっと武器を振るい続けた

レアナー神殿で貰った身体を清める魔道具で汚れを落として安全だとわかった部屋で寝た

食べ物はおいていってくれてるからまずいスープとパンを食べる、これで強くなれるかもしれない


「よくそんな物食べれますわね」

「いいじゃない」


洋介にもらった棒付きの飴を気に入ったのかいつも舐めてるヨーコが来た

なんでだろう

ヨーコには黒葉のように一緒にいて心地良くなるような気持ちがしない、理由はわからないけど嫌な気持ちになる

洋介が私よりも先に結婚していたから?それとも私には持っていないものを持っているから?

女の子らしい低身長で洋介よりも小さくて華奢で笑顔が愛らしい

その髪は日本人にはあり得ない金髪で緑色の艶が見れるときもある

真莉愛のよくかえていた髪の色を連想するから?いや、私にはできない上品な立ち振舞?


「な、なんですの?わたくしの顔になにかついてまして?」

「なんでもない」


わからない、だめだ、人を悪く思いたくないのに


武器を振ってるとルールが来た

何かあったのかと城の前に行くと信徒達がきていたので「神殿の役に立てるようにがんばりましょう」といって草を抜いたり少しぬかるんだ途中の道を固めたり、邪魔になりそうな枝を落としたりと作業をしていく

電気については詳しい人がいるようなので準備してくれるみたい

作業の休みを見つけては鍛える

自分で何が悪いのかわからないけどうまく剣を振れなくてもどかしい

他の信徒たちもいつの間にか武器を振っていた

あれ?ルールがなんか知らない人を連れて城に入っていってる?なんだろ?


「そこのあなた、振り方がなってませんわ」

「え、こうですか?」

「ちがいます、ちょっと借りますわね」


隣で男の人が振っていたのは片手持ちとはいえメイスだ

金属の棒の先端に更に金属が束ねられていてとても重い

男の人も重そうに持ち上げていたのにヨーコはそれをピュンピュンと軽そうに振る


「あなたの体格ならこう振るんですの」


右手にメイス、左手は何も持ってないはずなのに盾を使った動きだというのがわかる

盾がある前提での振り方


戦い慣れしているんだ


「ぉお~」
「凄いな!」
「もう一回おねがいします!」


あまりに凄くて信徒の人もぽかんとしていて、一緒に振っていた人から拍手が起きた

照れくさそうにしているヨーコはまんざらでもなさそうだ


「こ、これぐらい普通ですわ!?」

「・・・こっちじゃ武器なんて一生持つことなんてないから使い方なんてわからないのよ」

「元杉も言ってましたわね」


一瞬だけど胸が締め付けられた

私の知らない洋介をヨーコは知っている


「手合わせしてくれない?」

「わかりましたわ」


持ってる金属の剣ではなく木刀を取りに行く


「そのままで構いませんわ、どうせ当たりませんもの」

「あぶなくない?」

「魔力もおありのようですし、身体強化を使っても構いませんわ」

「・・そう」


思い切り魔力をこめて腕を狙った、怪我させても治せるし、一応寸止めのつもりで


「・・・・・えっ」


肩に短剣が鞘に入ったまま当てられた


「わたくしに手加減はいりませんわ」

「このっ!」


限界まで魔力をこめて斬りかかる、今度は当てるようにだ

だが全く当たらない、まるで霧を切るかのようにあたったと思ってもかすりもしていない

十、二十、百と斬りかかってもまるで子供のように優しく扱われる

洋介の魔力で体力も筋力も上がってるはずなのに、全然勝てない

足がガクついて言うことを聞かない、酸素がほしい


「はぁっ!はぁっ!!」

「もうおやめなさいな、見たところ魔力の使い方になれてないんでしょう?」

「もう一度お願いします!!」

「いくらでもお付き合いしますわ」



・・・・・・


「もう一度!」


・・・・・・・・・・・・・・


「もう一度!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・もう、一度ぉ!!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・もう、い」



何度やっても、素早く撹乱しても、思いついたフェイントをしても、全く太刀打ちできない

軽く笑顔を浮かべて余裕そうなヨーコ、大して私は何でも泥にまみれて息もできなかった

薄れていく意識の中で気付いた





私はこの子が羨ましかったんだ


詩乃おばさんを思い出させるふわふわした髪、洋介と並んでお似合いと思える見た目

なによりも洋介の横で洋介が頼るほどの強さを持っている

昔は私を洋介が頼ってたのに今じゃ足手まとい

ヨーコは私にないものを、髪も、体付きも、強さも、女らしさも、女品さもみんな持ってる

あの日、化け物に震えて何もできなかった私自身が嫌で、いつの間にか八つ当たりしてたんだ


「そうでしたの、実はわたくしも貴女が嫌いでしたからお互い様ですわ」

「そう」


いつの間にか寝かされたベッドで、横に座っているヨーコに全部打ち明けた

嫌いと言われて少し胸が痛む

けど、そうだよね、この子はなにも悪くないのに感情が表に出ていたかもしれない

悪くないどころか洋介を助けたのはこの子だ

恩と思ったとしても嫌な気持ちになるなんてお門違いだ


「向こうで元杉に聞いてましたわ、はるねーちゃんを守れるぐらいに強い人になるんだとか、ショボシという仕事をしたかったとか・・・・貴女のことばかり」

「え?」


あんな古いことを

自分が大変な中覚えていてくれたんだ・・・それだけで胸が高まって、泣きそうになった


「ですからわたくしも貴女に嫉妬して態度に出ていたかもしれません、すみませんでしたわ」


謝られる筋合いなんてない、重い体を必死に持ち上げて正面から言う


「私の方こそごめん、仲良くしてくれると嬉しいな」

「はい、よろしくお願いしますわ」

「それと、訓練付き合って!」

「まだやりますの!?」


心が軽くなった、まだ全身はビキビキと痛い
 

ヨーコと強くなれるように努力することに決めた


今はまだ弱いかも知れない、だけど明日も弱いままなんて嫌だ
 

もう二度とあんな足手まといになんてなりたくない


私にはヨーコみたいな可愛さはない


ふわふわした髪も、可愛らしい容姿も、洋介に釣り合う体型でもない


だけど、絶対に洋介のお荷物にだけはならない、そう決めた


だからやるんだ、やると決めた


私は、私がみんなを守れるぐらいに強くなるんだ!
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