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第72話 大丈夫、だからお願い取材させて
しおりを挟む「大丈夫ですか?」
そう聞かれて少年を見る
まだ若い、小学生ぐらいかな?
情けないところを見せてしまったなぁ
「・・いじょうぶ、そこのぼたんおして」
声もあまり出ない、これあかんやつだ
あまりの痛みで顔に寒けすら走るのは初めてだ
しゃがんで俺の顔を覗き込んできた少年の頭にどかっと140キロのストレートが刺さる
「いたっ」
大丈夫か!?いやフードになにか入れていたのか?たいして痛くなさそうだ
気合でこれだけは伝えないと・・!
「そこの、ボタン、押して」
「はい」
ボールはこれで止まったはずだ
この子どこかでみたことがある気がする、この体格、どこにでもいそうな体つきに服装・・・だがどこかで
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫、大人の人よんでくれない?」
「洋介、どうしたのその人」
あぁよかった、誰かいてくれた
ここのおじいちゃん店主だけじゃ心もとなかったし女性とは言えもう一人いればどうにか
ん?洋介?・・・・・?
「うえっ!?」
「取材・・」
もはや反射的だ
手が勝手に少年の足首をつかんでしまった
驚いてる少年だが逃さん、偶然とは言え千載一遇の好機だ
「取材させてくれ・・・・!!」
「なにを?」
「全部・・・!」
とにかく必死だった
管理人が来てこれは動かさないほうがいいって救急車を呼ぶか聞かれたが断る、少しここで寝かせてもらうことにした
隣の135キロのコーナーに入った少年に質問していく
スマホもペンもロッカーに入れたのが悔やまれる、一度自打球でスマホ壊したからな
手持ちであるのは置き忘れていた小型のボイスレコーダーだ
ジリジリと身体をよじってプレートを越えて隣にできるだけボイスレコーダーのマイクを向けて質問をする
一緒にいる女性は超弩級の美女でそちらも気になるがトップスクープが目の前にいるのにやめられるか
女性は「とにかくほっといてやってみましょう」とまさかの倒れた俺を無視してバッティングを教えてる
逃げないだけマシだ、これは取材のチャンス
有名人のゴルフ中の取材でもないのにとんでもないな
「登仙院長との関係は?」
「だれそれ?」
「光人間、内田との関係は?」
「内田、さん?ビルの、案内に、来てもらった、よ」
「登仙病院の患者さんを治したのは本当?」
「え?なに?」
カキーンカキーンと目にも留まらぬスイングスピードで打ち返していってる少年
残念ながらボールが飛んでいくのは滅茶苦茶だしこの少年、打ち方が手振りだ
「腰が入ってないぞー!ようすけ―!」
腰の痛みにも負けず、俺は出来得る限りの質問を続けた
収穫があったかは分からないがボイスレコーダー次第
二人が帰った後は救急車で運ばれ、その際やっとスマホで局に連絡できた
俺の腰は全治1~2ヶ月、どんなに早くても2週間は痛むそうだ
「先輩、治してもらえばよかったのに」
・・・・あっ
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