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第35話 大福は偉大
しおりを挟むお屋敷につくと周りにボディガードっぽいのが何人も立っていた、警察官かな?
門をくぐって入り広間に案内された
外の人と違って門をくぐると頭を下げてる人たちがズラッと頭を下げていた
外からもわかったが寺のような和風建築だ、案内された部屋は畳が広々としているのが心地良い
ゴロゴロしたいが行儀よく足を組んであぐらで座っておく
神官服を突っ張るのでちょっと座りにくい
向こうだとそもそもこういう畳の文化自体がなかった
あってもそれは石畳、罪人向けである、同じように素足で歩いたり座ったり寝転んだりすれば嫌な目で見られることは間違いない
ビルの前にいた信徒候補の女性は真っ青な顔で僕の服の裾を持ったまま固まってる
こういうときは部屋の奥の方に招かれることが多い、神官は特別な存在であるからだ
だが今のここでは屋敷の主人に話を聞いてもらう立場だ
座って待ってるとさっき出迎えてくれた耳の欠けた真っ黒な服の人が入ってきた
「すまねぇな、早速話を聞きてぇ」
「はい、なんのおは」<それよりお菓子です!!>
女神様・・・いや、自由奔放で可愛らしいけどさ
「どうかしたかい?」
<先に美味しいお菓子をお願いします>
「先に美味しいお菓子をお願いします」
「・・わかった、おいっ!!」
「はい!!」
出てきたのは小さめの白いお饅頭と煎茶だ、竹串と・・タオルもついてる
3つ届いた
仕方ないが僕の分はないだろう
「ありがとうございます、さっどうぞ」
「何言って・・・は?」
切り分けて食べてもらう、あ、これ、あんことフルーツの入った大福だ!
僕から見たら女神様が食べてるだけだがきっとこの人からすると大福のかけらが消えていくように見えているんだろう
切り分けてる差し出しているとすぐになくなった
<とてもおいしかったですぅ!!>
「とても美味しかったそうです」
「あ?あぁそりゃよかった」
「僕は洋介です、レアナー教の神官をしてます、見えてるかわかんないですがこちらが女神レアナーです」
<けふ>
「俺にゃあ見えねぇが、いるのかい?その女神様が」
「はい」
「ふー・・この茂木錬、この度は勝手ながらお願いがあって足を運んでいただいた次第です」
おぉ、これが土下座、確か時代劇で見たときぐらいしか見たことがなかった
周りを見れば周りの人たちも僕に向かって土下座してる
横の信徒候補の女の人は「ぴっ」って声を出して固まってる
「話を聞きましょう・・あ、僕の分もお茶菓子あったら嬉しいです」
お茶菓子がすぐにもう机の上にずらーっと届いた
一口噛んだ瞬間よだれが飛び出るかと思った、雷撃を食らったときだってこんなに衝撃は感じなかっただろう、向こうでも小麦みたいな粉はあったから作ろうとしたんだけど全然上手くいかなかった、酷いものだった・・・
僕が2つ食べ、女神様にも3つ切り分けて食べてもらってるうちに話を聞いた
このいかついお兄さんはお父さんが病気らしい
「なるほど」
「わ、私の友達も病気で治してもらいたくて!」
「こっちのお嬢さんは洋介様の関係者じゃねぇんで?」
「「ちがいます」」
「そら、こんなところまで連れてきちまってすまなかったなぁ」
「まぁまぁ、同じ目的なら一緒に説明しますよ」
うちの教会のルールを教えるともとぎさんはともかく周りの目がギラついた
病院で何人も治してわかったのだが突発的な場合とはいえ「財産の半分以上をよこせはあまりに暴利だろ」と言われた
たしかにそうかもしれない、向こうではうちの女神様を信仰してるものは多かったし、信仰してないにしても敵対していなければずっと稼ぎから数割寄進していれば健康でいられる、危険な職業ではそれだけ怪我も多く、神殿への寄進も多かった
だがこっちにはそもそも神様はいない
信徒になると決めて神殿へ貢献しつづけるのなら金銭が問題ではない
だが信徒にならないのに「具合が悪くなったから治せ!」では人手不足の我々では治す人間の選択をしなければいけない場面がある
残念ながら片方しか選べない場面もあった
金を払ったから優先するのならそれ相応の代償がなければ信徒に申し訳が立たないのだ
故に信徒になるなら神殿への貢献が必要となる
信徒にならずに治癒を受けようとするのなら数割の寄付を続け、いざ大きな怪我や病気をすればそのたびにさらなる寄付を求める
もしくは財産の半分以上を支払って、その後一定以上を支払い続けなければならない
今回の場合、そのお父さん?と友達さんが信徒になるか財産の半分以上を払わなければならない
「他の魔法も少しでいい、見せちゃもらえませんかね?」
「はい」
【清浄化】で部屋の空気を少し綺麗にする、ちょっとタバコ臭かったしね、ここ
部屋全体が少し光り、匂いもスッキリする、あとここなんか恨みや怨霊っぽいのも結構いるし、ビルの時みたいに何もせずに僕から漏れてる魔力で動き出されるとこまる・・いやー内田さんには悪いことしちゃったなぁ
【悪霊消滅】も部屋にかけておいた
「ふー・・・・・・・ありがとうございます、ちょっと席を外してもいいでしょうか?」
「あ、はい」
モトギさんは行ってしまった、その間にもう一個大福食べよう、いちご、パインは美味しかった、次はぶどうを・・・
「てめぇ!ふざけんじゃねぇぞ!!あぁん!!!」
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