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第7話 ねーちゃんは治せない
しおりを挟む病院内が騒がしくなってきた
聞いてみると5つ上の隣の家の春日井遥、はるねーちゃんも病気らしい
行ってみると伯父さんよりも更に死の空気が漂っていた
「どう?治せる?」
僕は病気も治してたけど基本的に病気よりも怪我や欠損ばかり治してたんだよなぁ
はるねーちゃんは久しぶりに見るとびっくりするぐらい別の人になってた
髪は無いし、骨と皮みたいに痩せてる
「えーっと・・どうですか神様?」
<らくしょーですぅ>
「治せるそうです」
<あ、でもでも、信徒にしましょーよ>
「ほんとに!!?」
神様はねーちゃんの胸の上に立ったと思ったらすぐに僕の持ってる杖の上に戻ってきた
「あ、おばさんちょっと待ってね、神様、寝てますけど」
<この子は見るからに成人してます、なら自分で決められるですぅ>
「そうですね」
「神様?そこにいるの?どうか私の娘を助けてください!!」
全く見えてないんだろう天井に向かって手を組んで頭を下げたおばさん、そこにはいないんだけど
「えっと治すのには条件があります」
「なに?お金?」
「治すのにはある程度の条件があるんです」
向こうの世界ではどんな人でもうちの神様に寄進してた
怪我や病気を治すのに支払う対価にうちの神殿は厳格だった
「まず簡単なのはうちの神様を信仰してることです」
「それは信仰してないわね次は?」
「色々あるんですけど、?起こせますか?」
「麻酔で寝てて、もう時間がないの」
目はくぼんでるし、明らかに病気の進行が進んでるのだろう
いつ亡くなってもおかしくない見た目をしている
「じゃあ・・」
指を折って数える
信仰はしていない、寄進もしていない、神様との関わりもない
「方法はないです」
伝えるとおばさんはすごい形相で掴みかかってきた
「そんな!?お願いよ・・お金なら払うから」
「僕も治したいんですけど決まりがあって」
「やれやれ、他に手は無いのかい?どんな方法でも良い」
いつの間にか伯父さんが廊下から入ってきてた、肉付きもよく見えるし髪まで黒くなってる
多分テンション上がって逃げてきたんだろうなぁ、なんか上裸になってるし
「うちの神を信仰していない場合、小さな子供だったり、その神の役に立つことをしたり、神を喜ばせたり、神の気まぐれだったりします、神の従属神を助けたりしても・・・」
考えて思いつく条件を話していく、なんか方法あるかな?僕は神殿のルールの細かい部分までしっているわけじゃない
そういうことはお付きの人に任せてた
「そのあたりは難しそうだね、普通はどうするんだ?」
「信徒であること、それか寄進するのが当たり前ですね」
「じゃあこの子は信徒にするわ!それでどう?」
信徒が増えるのは嬉しい、だけどそれも起きれないなら無理
「自分が一番祈る神を決めるのは12歳までですね、信徒になるのも寄進するのも、どちらにせよ自分の意志でしないといけません」
「じゃあ無理じゃない!お願いよ!私が信徒になるから!」
「それはだめです」
「洋介、どんなルールでもいい、他にはどんなのがある?」
神殿には様々なルールがあった
神の力にも神官の数にも限界はある
助けたくても助けてはいけない、明確なルールがある
無償で誰でも助けていれば魔力が足りないし神殿自体の弱体化を招く、存続を危ぶまれたことがこれまでにあったそうだ
どこかで区切る必要がある
「子供だったり、緊急時だったりです・・僕も治したいんですが僕たちがルールを破るとそもそも治癒が使えません」
「・・他には?」
「あとは婚姻ですね、うちの神を信仰する人との結婚によって結婚相手が敵対している神を信仰していなければ可能です、この方法は基本的に行われません、うちの神を信仰していなくてもお布施をする人は多いですし、遠くの国から来た人がごくごく稀に使う程度しかないです」
寄進にしてもルールがある
その人の給料の数割をずっと寄進続けることやそれまでの寄進がない場合には所有している財産の半分を支払った上で信徒になる、ならない、神殿の仕事をするなどなど
嫌なら来るなと言わんばかりのやり方をしていた
だけど向こうでは怪我人・病人・患者は喜々として上限いっぱいまで支払ってくれていた
神官は深夜だろうと早朝だろうと倒れるまで働き続ける
そんな神官や神の贅沢に使われるのは喜ばしい
それに使われる金の目的はそれだけではない、神殿の存続のためのみならず、街の発展や砦の建設、道路の整備、魔物の駆逐、公共事業に惜しみなく使われていた
ねーちゃんが起きれないならならねーちゃんは自分の意志でこれからの人生を神に捧げると誓うことができないし、一定以上の金額であり財産の半分を自らの意思で支払うこともできない
これは神官を戒めるルールでもあり、神の定めたルールでもある
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