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であい
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【『言咲 花音の記憶』と引き換えに『言咲 花音と言咲 朱音が結ばれる世界』を叶えます。
『言咲 朱音の記憶』と引き換えに『引き換えた記憶を取り戻す力』を叶えます。
等価交換として成り立たない場合、引き換えた方が小さいと、叶えられる願いが完全ではなくなります。叶える願いの方が小さいと、余剰分はランダムで選ばれた能力として還元されます。
また、引き換えられた『記憶』は全てを交換材料として扱えないので、扱われなかった『記憶』の一部は残ります。
以上の条件がございますが、あなた方には拒否権はありません。
それでは、新しい人生をお楽しみください。】
***
立ち眩みが起きたみたいに、頭の中が真っ白になり、現実が遠くにあるような感覚に陥る。
声は出る。
手足も動く。
自分が何者であるかも分かる。
私の名はイブン・リリー。15歳。
昨日は確か、隣町までお母さんの付き添いで買い物に行って、行き先で偶然出会った友人の家で夜まで遊んで、ここ一週間の中では一二を争うほど楽しかった。
事の次第は詳細に覚えているのに、どこか遠く過去の出来事のような感覚がある。ついさっきまで考えていたことが急に頭から抜け落ちたみたいな違和感が抜けない。
しかし、いつまでもベッドの上で頭を悩ましていても仕方がない。
いつものように寝床から離れ、歯を磨いてリビングに向かい、お母さんが用意してくれた朝ご飯を口に運ぶ。
「ねぇお母さん」
お母さんことディグニティ・リリーは、真向かいの椅子に座り、大好物のフランスパンを食べていた。口をパンから離してから喋ればいいものを、何かもごもごしながらこちらに目線を送ってくる。ひとつも聞き取れない。
咀嚼し始めて一分後、ようやく会話が始まる。
「どうしたの?日頃の私への感謝?」
「違うから…私、普段と変わったことある?」
ディグ(ディグニティの愛称)は改めて私の顔をまじまじと見つめ、指を鳴らした。
「さすが私の娘。今日もかわいいわね」
「いや…はぁ。いいよもう、真剣に聞かないなら」
「あーごめんってば。う~ん、そうね。変わったところ…ちょっと手出しなさい。ちゃんと見てあげるから」
そう言うディグの顔は、さっきまでの腑抜けた表情は完全に抜け落ち、凛々しいものに変わっていた。この人は、こういうギャップが時々ズルいと思う。今までに何人をこれでオトシテきたのかと考えると、無意識に顔が引き攣る。
イブンは言われた通り、手をディグの目の前に差し出した。
ディグはその手を取ると、手の腹に人差し指を置き、目を瞑る。
彼女の本職は魔力鑑定士であり、この辺りではそこそこ名が知られている。
30秒ほど経ってから、ディグは目を開いてイブンの手から離れた。
「うん、今日もすごく綺麗な魔力の流れ。特に身体に大きな変化があるって感じはしないかな…でも、やっぱり少ないのよね。総量が」
「それいっつも言ってるけど、私は嫌だよ。あんなやつらと体重ねたりするの」
「…私もそんなに好きじゃないけど、彼らのおかげで助かってる国もあるわけだし。望んでも重ねられない、望まなくても重ねられる、っていう自主性をないがしろにするところもあるわけだからね。簡単に『あんなやつら』って言うのはダメ」
「そりゃまぁ…そうだけど。でもやっぱり、そういうのは………」
お母さんはいつも、私がこういうと、困ったように眉を寄せる。
「あんなやつら」と言うのは、自らの体液を他人に与えることで、与えられた人の魔力の総量を増やすことが出来る、特別な力を持った民族を指す。
一般的には「エリクサー」と呼ばれている。
民族の中でも、増やせる魔力量には個人差があり、増やせる上限値、増え幅などはそれぞれ微妙に異なる。秀でている者は、すぐさま国の重要機関に召集され、生涯を肉奴隷として過ごすと言う噂は度々耳にする。
民族の中で力の優劣は生まれてからすぐに決定され、細かくグループ化、最も良い状態で家畜のように、求めている機関に出荷される。
私は一度だけ、その民族の暮らす村に行ってみたことがあったが、案外綺麗で、設備も整っていて、しかし、どこからどう見ても『施設』としか思えなかった。
別に、エリクサーと体を重ねることを推奨している国自体は少ない。
国の『外』へ出て、魔物と戦った方が圧倒的に魔力が増えるから。
エリクサーはあくまでも、外での戦いに参加しない国の防衛機関などが用いることが多く、比較的非効率的ではあるが、気持ちよく空き時間に戦力を増強できると言った意味で、どちらかと言えば『娯楽』としての目的が強い。
そして、私のような『外での戦いに参加せず、生まれつき魔力の総量が少ない』者からも、エリクサーは必要とされている。
余程一芸に秀でていない限り、魔力量が就ける仕事のランクと比例するからである。
なので、私のように拒否していても、結局成長してからエリクサーを利用する人は多い。
頭では分かっていても、子供みたいな考えが頭をよぎってしまう。
「私は好きな人と……そういうことしたい」
ディグはおでこ辺りを押さえて返答に困っていたが、どうにか言葉を捻り出した。
「……エリクサーの中から…好きな人を探してみるのはどう?」
***
後日、写真が届いていた。
定型文のお仕事構文が綴られた手紙と、同封されていたエリクサーたちの顔写真合わせて十枚。写真の下部には、それぞれ各パラメーターの評価が書かれている。
お母さんと一緒に、写真を一枚一枚じっくり見ていく。
「どう?いい感じの男はいる?」
「…ごめんなさい。やっぱり無理。見てるだけでも、嫌悪感しか湧かない」
頭では、これは単なる「人種差別」であることは理解している。
それでも、この気持ちのままこの人たちと体を重ねて、私は平静でいられる自信はとてもなかった。きっと、拒否反応で吐くか、傷つけるか、最悪の場合、殺してしまうか。
「そっか。なら今の内に勉強するしかないわね。厳しい事言うようだけど、今程度の知識量だと、一日一食分の稼ぎで御の字。最低限の生活もままならないわ。最期に笑いたきゃ頑張りなさい。分からないところがあったらすぐに教えてあげるから」
そういうディグの表情は、言葉とは裏腹にひどく優しかった。
分かっていることを改めて言われるのは少々苛つくが、そんな顔で言われたら素直に納得するしか道はなかった。
「…ん。わかった。部屋戻るね」
手紙と写真をゴミ箱に捨てて、部屋に戻ろうとした。
リビングから自室までの廊下を歩いていると、窓際を通りがかったところで何となく違和感を感じて立ち止まる。
「なんかここだけ……」
徐に窓を開き、窓枠に体を乗り出した。
目先には、見慣れた薄い土色の地面、壁際に生える背の低い雑草。
そして見慣れない、傷だらけの白い布とプラチナブロンドの少女が横たわっていた。
一瞬、頭の中が真っ白になる。
何故か他の人には知られてはいけないと言う思考になり、窓枠から落っこちるギリギリまで身体を乗り出し、少女の華奢な腕を掴んで思い切り引っ張り上げる。少女の腕が細すぎて折れそうで、途中から脇や腰辺りを掴んで抱き上げる。
何とか家の中に入れ、お姫様抱っこをして自分の部屋まで運び入れた。
少女をベッドの上に寝かせて、顔を近付ける。
この地域では見ない、腰まで伸びた銀髪のロングヘア。服もそうだが、全体的に傷だらけ、息はしているので死んではいないものの、顔色は悪く、身体は必要以上に痩せ細っていた。
しかし、そこまで衰弱して汚い身なりをしていても、それがアクセントとして見えてしまうほど、その少女は端正な人形のように美しかった。
部屋にあった魔力回復ポーションを口に含ませて、濡れタオルを用意して顔の汚れたところを丁寧に拭いた。
身体も拭くために、傷んだワンピースを脱がすと、その下はすぐ裸体だった。少しでも力を込めれば壊れてしまいそうなほど細い身体、しかし、胸部は確かな膨らみを持っている。
その美麗さに思わず唾を飲み込んでしまう。
雪のように白く、自分よりも一回りほど小さな身体。
濡れタオルを持ち、ほんの少しの力で優しく、少女の小さな手を持ち上げて、撫でるようにタオルで湿らせた。
血色が悪いにも関わらずら霞を浴びた若葉みたいな輝きを持ち、希少な芸術品にでも触れているかのように、無性に緊張してしまう。
手から脇にかけてを丁寧に拭いていき、そのまま胸の膨らみへと手を伸ばした。
自分のとはまた違う、タオル越しにでも伝わる柔らかさと、寝ている少女の胸を無断で触るという行為に対して、心臓が痒くなるような背徳感を得た。
決して大きいと言うわけではないが、小さすぎず、形の良い山と、てっぺんにはあまり主張しない実り。
「…かわいい」
顔つきはもちろん、全てにおいてのパーツと言うパーツが、等しく華麗であるとともに、十分に子供らしさを含んでいるそれらを一言で表すには、それ以外の言葉が見つからなかった。
それから様々な欲望に打ちのめされそうになりながらも、何とか全身を拭き切った。
着替えを取りに行く前に、何となく彼女の隣で横になり、上体を少しだけ起こして、少女の綺麗な顔をもう一度見つめてみた。
さっき写真で見た、男エリクサーたちの機械のように整った顔立ち。そんなのと比較にならないくらい、私にとってこの少女は魅力的だった。
しかし、どういった意味でこの感情を捉えていいのか、まだ分からない。
散々耐えた欲望が再び頭を貫き、衝動のままに顔を少女の方へと近付ける。
お互いの唇が触れ合う寸前の距離。
少しでも背中を押されたら、もう後戻りは出来ないくらい近くに、白い艷やかな肌が見える。
下心に何とか蓋をし、名残惜しそうに彼女から目を逸らそうとした時、少女の口が小さく動き、何かを呟いた。
不意に伸びてきた二本の腕に首を捕まえられて、思いの外強い力で頭を引き寄せられる。
小さく開いた少女の唇は、無理やり近づけた私の唇へ一直線に向かい、重ね合わせた。
少女は起きているのか起きていないのか、目は閉じたまま、味わうように私の唇をゆっくりと舐め、いとも容易く舌を口中にねじ込んだ。
それは私の中で音を立てて動き回った。
舌尖同士を優しく擦れあわせ、舌背を激しく撫で回す。唇で舌先を引っ張ったり、私はその度に気持ちよさにはしたない声を出し、小刻みに腰を震えさせた。
少女の口からも、ほんの微かな喘ぎ声が漏れており、その甘い声が更に私の興奮を仰いだ。
驚きや戸惑いよりも先に出てきた感情、今まで経験したことがなかった幸福感によって、私は為す術もなく少女のされるがままだった。
しばらくして少女は満足したのか、糸を引きながら唇を離し、そのまま私の身体を抱き寄せた。
我に返ってから気が付いたが、体内の魔力が減っている。加えて、少しだけ魔力の最大値が増えている気がする。
減っているのは不可解だが、魔力の最大値を増やすのはエリクサーの特性。
つまり、今私の唇を無理やり奪い、恋人のような熱い抱擁をしてくるこの可憐な少女は、私の大嫌いな人種であった、エリクサーの中の一人である可能性が高いと言うことだ。
改めて理解してみたものの、嫌悪感、吐き気、鳥肌、いずれも一切起きない。
それどころか、もっと熱いキスを交わしたい。
めちゃくちゃに犯したい。
いっぱい気持ちよくさせて、可愛い声で喘いで欲しい。
ありとあらゆる欲情を含む願望が湧き出てくる。
己を精一杯宥めながら、すぐ近くで静かに寝息を立てる裸体の少女の腕から惜しみながらも離れて、彼女の着替えを取りに部屋を出た。
『言咲 朱音の記憶』と引き換えに『引き換えた記憶を取り戻す力』を叶えます。
等価交換として成り立たない場合、引き換えた方が小さいと、叶えられる願いが完全ではなくなります。叶える願いの方が小さいと、余剰分はランダムで選ばれた能力として還元されます。
また、引き換えられた『記憶』は全てを交換材料として扱えないので、扱われなかった『記憶』の一部は残ります。
以上の条件がございますが、あなた方には拒否権はありません。
それでは、新しい人生をお楽しみください。】
***
立ち眩みが起きたみたいに、頭の中が真っ白になり、現実が遠くにあるような感覚に陥る。
声は出る。
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自分が何者であるかも分かる。
私の名はイブン・リリー。15歳。
昨日は確か、隣町までお母さんの付き添いで買い物に行って、行き先で偶然出会った友人の家で夜まで遊んで、ここ一週間の中では一二を争うほど楽しかった。
事の次第は詳細に覚えているのに、どこか遠く過去の出来事のような感覚がある。ついさっきまで考えていたことが急に頭から抜け落ちたみたいな違和感が抜けない。
しかし、いつまでもベッドの上で頭を悩ましていても仕方がない。
いつものように寝床から離れ、歯を磨いてリビングに向かい、お母さんが用意してくれた朝ご飯を口に運ぶ。
「ねぇお母さん」
お母さんことディグニティ・リリーは、真向かいの椅子に座り、大好物のフランスパンを食べていた。口をパンから離してから喋ればいいものを、何かもごもごしながらこちらに目線を送ってくる。ひとつも聞き取れない。
咀嚼し始めて一分後、ようやく会話が始まる。
「どうしたの?日頃の私への感謝?」
「違うから…私、普段と変わったことある?」
ディグ(ディグニティの愛称)は改めて私の顔をまじまじと見つめ、指を鳴らした。
「さすが私の娘。今日もかわいいわね」
「いや…はぁ。いいよもう、真剣に聞かないなら」
「あーごめんってば。う~ん、そうね。変わったところ…ちょっと手出しなさい。ちゃんと見てあげるから」
そう言うディグの顔は、さっきまでの腑抜けた表情は完全に抜け落ち、凛々しいものに変わっていた。この人は、こういうギャップが時々ズルいと思う。今までに何人をこれでオトシテきたのかと考えると、無意識に顔が引き攣る。
イブンは言われた通り、手をディグの目の前に差し出した。
ディグはその手を取ると、手の腹に人差し指を置き、目を瞑る。
彼女の本職は魔力鑑定士であり、この辺りではそこそこ名が知られている。
30秒ほど経ってから、ディグは目を開いてイブンの手から離れた。
「うん、今日もすごく綺麗な魔力の流れ。特に身体に大きな変化があるって感じはしないかな…でも、やっぱり少ないのよね。総量が」
「それいっつも言ってるけど、私は嫌だよ。あんなやつらと体重ねたりするの」
「…私もそんなに好きじゃないけど、彼らのおかげで助かってる国もあるわけだし。望んでも重ねられない、望まなくても重ねられる、っていう自主性をないがしろにするところもあるわけだからね。簡単に『あんなやつら』って言うのはダメ」
「そりゃまぁ…そうだけど。でもやっぱり、そういうのは………」
お母さんはいつも、私がこういうと、困ったように眉を寄せる。
「あんなやつら」と言うのは、自らの体液を他人に与えることで、与えられた人の魔力の総量を増やすことが出来る、特別な力を持った民族を指す。
一般的には「エリクサー」と呼ばれている。
民族の中でも、増やせる魔力量には個人差があり、増やせる上限値、増え幅などはそれぞれ微妙に異なる。秀でている者は、すぐさま国の重要機関に召集され、生涯を肉奴隷として過ごすと言う噂は度々耳にする。
民族の中で力の優劣は生まれてからすぐに決定され、細かくグループ化、最も良い状態で家畜のように、求めている機関に出荷される。
私は一度だけ、その民族の暮らす村に行ってみたことがあったが、案外綺麗で、設備も整っていて、しかし、どこからどう見ても『施設』としか思えなかった。
別に、エリクサーと体を重ねることを推奨している国自体は少ない。
国の『外』へ出て、魔物と戦った方が圧倒的に魔力が増えるから。
エリクサーはあくまでも、外での戦いに参加しない国の防衛機関などが用いることが多く、比較的非効率的ではあるが、気持ちよく空き時間に戦力を増強できると言った意味で、どちらかと言えば『娯楽』としての目的が強い。
そして、私のような『外での戦いに参加せず、生まれつき魔力の総量が少ない』者からも、エリクサーは必要とされている。
余程一芸に秀でていない限り、魔力量が就ける仕事のランクと比例するからである。
なので、私のように拒否していても、結局成長してからエリクサーを利用する人は多い。
頭では分かっていても、子供みたいな考えが頭をよぎってしまう。
「私は好きな人と……そういうことしたい」
ディグはおでこ辺りを押さえて返答に困っていたが、どうにか言葉を捻り出した。
「……エリクサーの中から…好きな人を探してみるのはどう?」
***
後日、写真が届いていた。
定型文のお仕事構文が綴られた手紙と、同封されていたエリクサーたちの顔写真合わせて十枚。写真の下部には、それぞれ各パラメーターの評価が書かれている。
お母さんと一緒に、写真を一枚一枚じっくり見ていく。
「どう?いい感じの男はいる?」
「…ごめんなさい。やっぱり無理。見てるだけでも、嫌悪感しか湧かない」
頭では、これは単なる「人種差別」であることは理解している。
それでも、この気持ちのままこの人たちと体を重ねて、私は平静でいられる自信はとてもなかった。きっと、拒否反応で吐くか、傷つけるか、最悪の場合、殺してしまうか。
「そっか。なら今の内に勉強するしかないわね。厳しい事言うようだけど、今程度の知識量だと、一日一食分の稼ぎで御の字。最低限の生活もままならないわ。最期に笑いたきゃ頑張りなさい。分からないところがあったらすぐに教えてあげるから」
そういうディグの表情は、言葉とは裏腹にひどく優しかった。
分かっていることを改めて言われるのは少々苛つくが、そんな顔で言われたら素直に納得するしか道はなかった。
「…ん。わかった。部屋戻るね」
手紙と写真をゴミ箱に捨てて、部屋に戻ろうとした。
リビングから自室までの廊下を歩いていると、窓際を通りがかったところで何となく違和感を感じて立ち止まる。
「なんかここだけ……」
徐に窓を開き、窓枠に体を乗り出した。
目先には、見慣れた薄い土色の地面、壁際に生える背の低い雑草。
そして見慣れない、傷だらけの白い布とプラチナブロンドの少女が横たわっていた。
一瞬、頭の中が真っ白になる。
何故か他の人には知られてはいけないと言う思考になり、窓枠から落っこちるギリギリまで身体を乗り出し、少女の華奢な腕を掴んで思い切り引っ張り上げる。少女の腕が細すぎて折れそうで、途中から脇や腰辺りを掴んで抱き上げる。
何とか家の中に入れ、お姫様抱っこをして自分の部屋まで運び入れた。
少女をベッドの上に寝かせて、顔を近付ける。
この地域では見ない、腰まで伸びた銀髪のロングヘア。服もそうだが、全体的に傷だらけ、息はしているので死んではいないものの、顔色は悪く、身体は必要以上に痩せ細っていた。
しかし、そこまで衰弱して汚い身なりをしていても、それがアクセントとして見えてしまうほど、その少女は端正な人形のように美しかった。
部屋にあった魔力回復ポーションを口に含ませて、濡れタオルを用意して顔の汚れたところを丁寧に拭いた。
身体も拭くために、傷んだワンピースを脱がすと、その下はすぐ裸体だった。少しでも力を込めれば壊れてしまいそうなほど細い身体、しかし、胸部は確かな膨らみを持っている。
その美麗さに思わず唾を飲み込んでしまう。
雪のように白く、自分よりも一回りほど小さな身体。
濡れタオルを持ち、ほんの少しの力で優しく、少女の小さな手を持ち上げて、撫でるようにタオルで湿らせた。
血色が悪いにも関わらずら霞を浴びた若葉みたいな輝きを持ち、希少な芸術品にでも触れているかのように、無性に緊張してしまう。
手から脇にかけてを丁寧に拭いていき、そのまま胸の膨らみへと手を伸ばした。
自分のとはまた違う、タオル越しにでも伝わる柔らかさと、寝ている少女の胸を無断で触るという行為に対して、心臓が痒くなるような背徳感を得た。
決して大きいと言うわけではないが、小さすぎず、形の良い山と、てっぺんにはあまり主張しない実り。
「…かわいい」
顔つきはもちろん、全てにおいてのパーツと言うパーツが、等しく華麗であるとともに、十分に子供らしさを含んでいるそれらを一言で表すには、それ以外の言葉が見つからなかった。
それから様々な欲望に打ちのめされそうになりながらも、何とか全身を拭き切った。
着替えを取りに行く前に、何となく彼女の隣で横になり、上体を少しだけ起こして、少女の綺麗な顔をもう一度見つめてみた。
さっき写真で見た、男エリクサーたちの機械のように整った顔立ち。そんなのと比較にならないくらい、私にとってこの少女は魅力的だった。
しかし、どういった意味でこの感情を捉えていいのか、まだ分からない。
散々耐えた欲望が再び頭を貫き、衝動のままに顔を少女の方へと近付ける。
お互いの唇が触れ合う寸前の距離。
少しでも背中を押されたら、もう後戻りは出来ないくらい近くに、白い艷やかな肌が見える。
下心に何とか蓋をし、名残惜しそうに彼女から目を逸らそうとした時、少女の口が小さく動き、何かを呟いた。
不意に伸びてきた二本の腕に首を捕まえられて、思いの外強い力で頭を引き寄せられる。
小さく開いた少女の唇は、無理やり近づけた私の唇へ一直線に向かい、重ね合わせた。
少女は起きているのか起きていないのか、目は閉じたまま、味わうように私の唇をゆっくりと舐め、いとも容易く舌を口中にねじ込んだ。
それは私の中で音を立てて動き回った。
舌尖同士を優しく擦れあわせ、舌背を激しく撫で回す。唇で舌先を引っ張ったり、私はその度に気持ちよさにはしたない声を出し、小刻みに腰を震えさせた。
少女の口からも、ほんの微かな喘ぎ声が漏れており、その甘い声が更に私の興奮を仰いだ。
驚きや戸惑いよりも先に出てきた感情、今まで経験したことがなかった幸福感によって、私は為す術もなく少女のされるがままだった。
しばらくして少女は満足したのか、糸を引きながら唇を離し、そのまま私の身体を抱き寄せた。
我に返ってから気が付いたが、体内の魔力が減っている。加えて、少しだけ魔力の最大値が増えている気がする。
減っているのは不可解だが、魔力の最大値を増やすのはエリクサーの特性。
つまり、今私の唇を無理やり奪い、恋人のような熱い抱擁をしてくるこの可憐な少女は、私の大嫌いな人種であった、エリクサーの中の一人である可能性が高いと言うことだ。
改めて理解してみたものの、嫌悪感、吐き気、鳥肌、いずれも一切起きない。
それどころか、もっと熱いキスを交わしたい。
めちゃくちゃに犯したい。
いっぱい気持ちよくさせて、可愛い声で喘いで欲しい。
ありとあらゆる欲情を含む願望が湧き出てくる。
己を精一杯宥めながら、すぐ近くで静かに寝息を立てる裸体の少女の腕から惜しみながらも離れて、彼女の着替えを取りに部屋を出た。
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