マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 強面、筋骨隆々、非常に強い。でもとっても優しい男が異世界でほのぼの暮らすお話

かむら

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#245 お客様第一号

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 本日の蒼天の風には、お客様が来る予定だ。

 そのお客様は、先日シュージが送ったカレンダーにいち早く名前を書いてくれて、その人以外にも、他の日にいくつか名前が書かれ始めていた。

 そんな今日来るお客様は訪問時間まで書いていてくれたので、お出迎えするためにシュージは蒼天の風のギルドハウスの前で来るのを待っていた。


「おっ、シュージ! 少し振りじゃな!」

「シュミット様、ご無沙汰してます」


 そうして、きっかりと時間通りにやって来たのは、蒼天の風があるこのヤタサの街を始め、この辺り一帯を領地としているセネルブルグ家の令嬢であるシュミットだった。


「シルビアさんもいらっしゃいませ」

「お世話になります」


 その隣には、シュミットの護衛騎士であるシルビアもいつも通りいた。


「まさかシュージがこんな面白い場を設けるとはの! あのカレンダーが届いて直ぐに空いてる日に名前を入れてしもうた」

「喜んでもらえたようで何よりです」

「父上と母上も来たがっとったが、今回は妾だけじゃ。 まぁ、母上も安定期に入ってきたから、予定が合えば軽い運動がてらそのうち来る事になると思うぞ」

「それは楽しみですねぇ」


 そんな挨拶も程々にして、早速シュミット達を食堂まで案内した。

 最も、2人は以前に冒険者体験に来た事があるので、どこに何の部屋があるかは分かっているのだが。


「それで、今日はどんなものが食べられるのじゃ? 楽しみで朝食はあまり食べて来なかったから、もう腹ペコじゃ」

「今日は軍艦巻きを色々と用意してみました」

「軍艦巻き?」

「お寿司の種類の一つと言えば良いですかね」

「お寿司とは確か、小さくまとめたライスの上に、海鮮を載せたものじゃったかの? お主のレシピの中にあった気がする」

「そうですね。 まぁ、普通は海鮮を使ったものなんですけど、今回は海鮮以外をメインにして作ってみました」


 既に使う食材の仕込みは済ませておいたので、シュージはそれを使って仕上げを行っていく。


「あら、シュミットじゃない。 シルビアも。 ごきげんよう」

「おお、アンネリーゼ」

「ご無沙汰しております」


 すると、ギルドメンバーであるアンネリーゼも昼食を食べに食堂へとやってきた。


「シュージの知り合いが来るとは聞いてたけど、シュミットとシルビアだったのね」

「うむ、お邪魔しとるよ」


 シュミットに関しては、以前の冒険者体験の際にギルドメンバーには敬語などは必要無いと自ら周知させていたので、アンネリーゼとのやり取りも気安いものだった。

 それに、この2人は同じ魔法使いで、アンネリーゼが先生のような事も前回していたので、特に距離が近くなっていた。


「あれからどう?」

「毎日研鑽に励んどるよ。 再来月には学園に通う事になるから、周りの者達に負けんようにせんと」

「今のシュミットなら大丈夫よ。 きっと学園でもトップクラス…… なんならトップを狙える力はあると思うわ」

「アンネリーゼにそう言ってもらえると励みになるのう」

「ま、私が学生の時は今のシュミットよりも少し強かったかしらね?」

「お主は規格外じゃからの…… まぁ、そんなお主と比較できるぐらいになれてる時点で喜ぶべきか」

「よし、出来ましたよー。 まずはこちらをどうぞ」


 シュミットとアンネリーゼが談笑していると、厨房にいたシュージが、まずは2種類の軍艦巻きが2貫ずつ載ったお皿をカウンターに並べていった。


「ほう、これが軍艦巻きか。 見た目は何だか可愛らしいの」

「前に手巻き寿司は食べたことあるけど、それの亜種みたいなものかしら?」

「そうですね。 甘酢をまとわせた酢飯に海苔を巻いたものになります」

「こっちの白いのはなんですか?」

「そちらはサラダ軍艦ですね。 タコとカニの身を細かく刻んだものを、甘めのマヨネーズで和えたものです」

「ほう、それは美味しいじゃろうな」

「こっちは…… ハンバーグね?」

「はい、ハンバーグ軍艦です」

「そんなのもあるのね?」

「これが意外と美味しいんですよね」


 まず用意させてもらったのは、海鮮以外の軍艦ネタではお馴染みのサラダ軍艦とハンバーグ軍艦だった。

 サラダ軍艦はともかく、ハンバーグ軍艦は結構食わず嫌いされる事も多いが、これが意外と美味しいのだ。

 まぁ、わざわざお寿司屋に行ってハンバーグ軍艦を食べようと思わない人がいるのも分かるが、今回はお寿司というより、軍艦巻きというコンセプトなので、こういう変わり種を用意させてもらった。

 極論、この世界ではその辺の区別がつく人もいないので、美味しさが保証されているならそれで良いんじゃないかと、シュージは思ったり思わなかったり。


「では早速…… ん! これは美味いの! 歯応えもあって、味もしっかりしとる」

「美味しいですよねぇ」

「でも、なんでサラダなんじゃ? 野菜は入っとらんが」

「元々これが生まれた時は野菜が入ってたらしいですよ。 でも、徐々にタコやイカ、カニを使ってサラダに見立てるようにして盛り付けたのがサラダ軍艦になっていったって聞きました。 まぁ、諸説はありますが」

「確かにサラダに見えるは見えるの」

「普通に野菜を入れても美味しいと思いますよ」

「んっ、ハンバーグの方も美味しいわ。 甘酸っぱいライスと結構合うのね」

「そうなんですよ。 これも立派なお寿司のネタと言っても僕は良いと思ってます」


 その後も、シュージが用意した唐揚げ軍艦、海老天軍艦など、色々な軍艦巻きがテンポ良く提供され、その食べやすさからシュミット、シルビア、アンネリーゼは出されたものをぱくぱくと胃に収めていった。


「ふぅー、気付けばかなり満腹じゃ」

「食べやすいけど、意外とお腹に溜まるのね」

「まぁ、ライスですからね」


 結局、シュミットとアンネリーゼは12貫、シルビアは15貫ほど平らげ、満腹になったようだ。


「シルビアは結構食べたのう」

「あはは…… とっても美味しくてつい……」

「お主は前衛職じゃしの。 妾ももう少し胃が大きくなりたいのう。 そうすれば、もっとシュージの料理を食べられる」

「沢山食べて運動をしてよく寝れば、まだまだ成長すると思いますよ」

「そうじゃな。 冒険者になるんじゃから、体も鍛えんと」


 それからシュミットは、腹ごなしの運動と言ってアンネリーゼに魔法を見てもらったりもして、とても満足度の高い時間を過ごしていった。


「あ、シュミットさん。 お土産にこちらを」

「お、これは何じゃ?」

「チョコをラングドシャというクッキー生地で挟んだスイーツになります。 セルゲイ様やミリア様、シルビアさんとお楽しみください。 一応、ミリア様は妊娠中ですので、1日に3、4枚くらいに留めてくださいね」

「それだけ食べられれば十分じゃろう。 ありがとの、シュージ。 そう遠くないうちにまた来る」

「はい。 いつでもお待ちしてます」


 とりあえず、お客様第一号のシュミット達には非常に満足してもらえ、ほっと一息つくシュージだった。

 そういえば、この時期はチョコを贈る文化があったなーと、今シュミットにチョコを使ったスイーツを渡して思い出したので、ギルドの女性陣のために、チョコを使ったデザートでも作ろうかなと、一人のんびりと思うシュージなのであった。
 


※※※



 あまりにも馴染みが無さすぎて、バレンタインの事をすっかり忘れていた今日この頃。

 独身貴族万歳!
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