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#208 寒い日のお祭りには温かいおしるこを
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「おお、こんなに立派な場所を良いんですか?」
「ああ、ぜひ使ってくれ!」
新年を迎えてから数日が経ち、今日は蒼天の風があるヤタサの街で、新年を祝うお祭りが開かれる日となっていた。
そんなお祭りで、シュージも屋台をやろうかと手続きをしていたのだが、それを見たこの街の代表であるダダンが、ある場所を用意してくれた。
「シュージ君の屋台は人気が出るだろうからね! それならいっそ、よく人が集まる場所を使って欲しい!」
そこは街の中心部の広場にある、祭りの実行委員会が使う仮設テントの近くで、その横にはかなりの人数が座れそうな椅子やテーブルなんかも置かれていた。
もし必要だったら手伝いの人員も寄越してくれるそうで、至れり尽くせりだった。
「それで、今回は何を出してくれるんだい?」
「今回は軽食を種類多めで用意してきました」
広い場所を用意してくれると予め聞いてはいたので、ある程度料理の仕込みは済ませてきた。
まず一つ目は、定番の唐揚げだ。
今回は塩唐揚げと醤油唐揚げの2つのフレーバーを用意した。
そして、二つ目はこちらも定番のフライドポテト。
唐揚げもそうだが、シュージが屋台をやる時はそれだけでお腹がいっぱいにならないようなものを作る事にしている。
理由としては、シュージはちゃんと自分が出す料理の需要を理解しているので、そんなシュージがガッツリしたメニューを作ってしまうと、他の屋台に人が行かなくなってしまいかねないのだ。
なので、ついでに食べれるような軽食系統を毎回作る事にしている。
ただ、もちろんシュージの屋台ならではの工夫もあって、今回は唐揚げとフライドポテトにかけれるものを大量に用意した。
シンプルなところだと、塩、ケチャップ、マヨネーズから、香辛料と塩を混ぜたスパイスソルトに、いつも使っているコンソメ顆粒をさらに細かく砕いたコンソメパウダーや、同じような製法でチーズを砕いたチーズパウダーなどを、振りかけやすい容器に入れてセルフでかけてもらう形式にするつもりだ。
お客さんからすれば、どれをかけようか悩むこと間違いなしというぐらいの種類なので、十分楽しんでくれるだろう。
「なるほど、面白い工夫だな! その二つかい?」
「いえ、もう一つおしるこという料理を出します」
そして、今回の屋台の目玉として、温かいおしるこを出すことにした。
当然ながら今日もかなり外は寒いので、温かくて食べやすいおしるこなら、この世界ではまだあまり浸透していない甘味としての需要もあり、きっと喜ばれるだろう。
「どんなものなんだい?」
「見てもらった方が早いですね。 ……よっと。 こちらです」
そう言ってシュージは、収納袋からおしるこが入った大鍋を取り出した。
「折角なので、お一つどうぞ」
「おお、ありがとう! ……ほう! かなり甘いな! ただ、優しい甘さで飲みやすいし、この中に入ったもちもちしたものもとても合っている! 美味い!」
「体も温められると思って、今回はこちらを用意しました」
「やはり流石だな! これなら人気が出ること間違い無しだろう!」
やはり新年という事もあり、何か新年に関連するものを出したいなと思ったので、今回はおしるこにしたのだ。
まぁ、前世の縁起物ではあるが、ちょっとしたご利益もあったらいいなとシュージは思ったり思わなかったり。
そんなこんなで、ダダンへの説明も程々にして、商品の準備をその場にいた人達にも手伝ってもらいつつ、祭りが始まるのを楽しみに待った。
そして、街の広場に用意された大きな鐘の音が響き渡り、祭りがスタートした。
同時に広場の中央付近では曲芸や歌などを披露する芸人達がパフォーマンスを始め、屋台にも沢山の人が流れ始めた。
「すみませーん! 唐揚げとフライドポテトください!」
「はーい! ありがとうございますー! こちらで味付けできますので、お好きなものをどうぞー!」
「えー、凄いいっぱいある!」
「悩んじゃうねー?」
当然、シュージの屋台にもどんどん人が集まってきて、まずは皆んな唐揚げやフライドポテトを頼むのだが、その豊富な味付け手段に驚いていた。
「あのー、こっちのおしるこってなんですか?」
「そちらは温かくて甘いとろとろした液体に、餅という食べ応えのある物が入った商品になります。 美味しいですよ」
「へぇー、じゃあ、寒いし一つもらいます」
「ありがとうございます!」
それから、何人かの人がおしるこを手に取ってくれた。
「わっ、これ美味しい!」
「めちゃくちゃ体温まるな…… 甘さもしつこくなくて美味い」
結果、飲んだ人全員から絶賛の声が上がった。
やはり、寒い中飲む自然な甘さの温かいおしるこは、美味しさはもちろん、じんわりと体を内側から温めてくれるので、まさに今の季節にピッタリな商品だった。
あと、ちゃんとおしるこの鍋の前に「餅は喉に詰まる恐れがあるので、特に子供やお年寄りの方は良く噛んで食べましょう」と注意書きもしておいた。
まぁ、今回のおしるこに入れている餅はコインサイズなので、喉に詰まる事はほぼほぼ無いと思うが、用心するに越した事はないだろう。
「おしるこくださーい!」
「私もー!」
「はーい! ありがとうございますー!」
その後、人伝も相まっておしるこを求める人が屋台に殺到し、お手伝いに来てくれた人達とも協力して、屋台を通じて祭りをどんどん盛り上げていくシュージなのであった。
「ああ、ぜひ使ってくれ!」
新年を迎えてから数日が経ち、今日は蒼天の風があるヤタサの街で、新年を祝うお祭りが開かれる日となっていた。
そんなお祭りで、シュージも屋台をやろうかと手続きをしていたのだが、それを見たこの街の代表であるダダンが、ある場所を用意してくれた。
「シュージ君の屋台は人気が出るだろうからね! それならいっそ、よく人が集まる場所を使って欲しい!」
そこは街の中心部の広場にある、祭りの実行委員会が使う仮設テントの近くで、その横にはかなりの人数が座れそうな椅子やテーブルなんかも置かれていた。
もし必要だったら手伝いの人員も寄越してくれるそうで、至れり尽くせりだった。
「それで、今回は何を出してくれるんだい?」
「今回は軽食を種類多めで用意してきました」
広い場所を用意してくれると予め聞いてはいたので、ある程度料理の仕込みは済ませてきた。
まず一つ目は、定番の唐揚げだ。
今回は塩唐揚げと醤油唐揚げの2つのフレーバーを用意した。
そして、二つ目はこちらも定番のフライドポテト。
唐揚げもそうだが、シュージが屋台をやる時はそれだけでお腹がいっぱいにならないようなものを作る事にしている。
理由としては、シュージはちゃんと自分が出す料理の需要を理解しているので、そんなシュージがガッツリしたメニューを作ってしまうと、他の屋台に人が行かなくなってしまいかねないのだ。
なので、ついでに食べれるような軽食系統を毎回作る事にしている。
ただ、もちろんシュージの屋台ならではの工夫もあって、今回は唐揚げとフライドポテトにかけれるものを大量に用意した。
シンプルなところだと、塩、ケチャップ、マヨネーズから、香辛料と塩を混ぜたスパイスソルトに、いつも使っているコンソメ顆粒をさらに細かく砕いたコンソメパウダーや、同じような製法でチーズを砕いたチーズパウダーなどを、振りかけやすい容器に入れてセルフでかけてもらう形式にするつもりだ。
お客さんからすれば、どれをかけようか悩むこと間違いなしというぐらいの種類なので、十分楽しんでくれるだろう。
「なるほど、面白い工夫だな! その二つかい?」
「いえ、もう一つおしるこという料理を出します」
そして、今回の屋台の目玉として、温かいおしるこを出すことにした。
当然ながら今日もかなり外は寒いので、温かくて食べやすいおしるこなら、この世界ではまだあまり浸透していない甘味としての需要もあり、きっと喜ばれるだろう。
「どんなものなんだい?」
「見てもらった方が早いですね。 ……よっと。 こちらです」
そう言ってシュージは、収納袋からおしるこが入った大鍋を取り出した。
「折角なので、お一つどうぞ」
「おお、ありがとう! ……ほう! かなり甘いな! ただ、優しい甘さで飲みやすいし、この中に入ったもちもちしたものもとても合っている! 美味い!」
「体も温められると思って、今回はこちらを用意しました」
「やはり流石だな! これなら人気が出ること間違い無しだろう!」
やはり新年という事もあり、何か新年に関連するものを出したいなと思ったので、今回はおしるこにしたのだ。
まぁ、前世の縁起物ではあるが、ちょっとしたご利益もあったらいいなとシュージは思ったり思わなかったり。
そんなこんなで、ダダンへの説明も程々にして、商品の準備をその場にいた人達にも手伝ってもらいつつ、祭りが始まるのを楽しみに待った。
そして、街の広場に用意された大きな鐘の音が響き渡り、祭りがスタートした。
同時に広場の中央付近では曲芸や歌などを披露する芸人達がパフォーマンスを始め、屋台にも沢山の人が流れ始めた。
「すみませーん! 唐揚げとフライドポテトください!」
「はーい! ありがとうございますー! こちらで味付けできますので、お好きなものをどうぞー!」
「えー、凄いいっぱいある!」
「悩んじゃうねー?」
当然、シュージの屋台にもどんどん人が集まってきて、まずは皆んな唐揚げやフライドポテトを頼むのだが、その豊富な味付け手段に驚いていた。
「あのー、こっちのおしるこってなんですか?」
「そちらは温かくて甘いとろとろした液体に、餅という食べ応えのある物が入った商品になります。 美味しいですよ」
「へぇー、じゃあ、寒いし一つもらいます」
「ありがとうございます!」
それから、何人かの人がおしるこを手に取ってくれた。
「わっ、これ美味しい!」
「めちゃくちゃ体温まるな…… 甘さもしつこくなくて美味い」
結果、飲んだ人全員から絶賛の声が上がった。
やはり、寒い中飲む自然な甘さの温かいおしるこは、美味しさはもちろん、じんわりと体を内側から温めてくれるので、まさに今の季節にピッタリな商品だった。
あと、ちゃんとおしるこの鍋の前に「餅は喉に詰まる恐れがあるので、特に子供やお年寄りの方は良く噛んで食べましょう」と注意書きもしておいた。
まぁ、今回のおしるこに入れている餅はコインサイズなので、喉に詰まる事はほぼほぼ無いと思うが、用心するに越した事はないだろう。
「おしるこくださーい!」
「私もー!」
「はーい! ありがとうございますー!」
その後、人伝も相まっておしるこを求める人が屋台に殺到し、お手伝いに来てくれた人達とも協力して、屋台を通じて祭りをどんどん盛り上げていくシュージなのであった。
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