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#186 風邪の人にはあったかパン粥
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「いやー…… すみません、シュージさん……」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
シュージは現在、ベッドで横になるシドの事を看病していた。
というのも、今朝も一番に起きて朝食を作り、皆んなに食べてもらっていたのだが、いつまで経ってもシドが食堂にこないので、部屋に様子を見に行ったところ、そこにはいなかった。
ではこっちだろうとシドがいつもこもっているアイテム製作室に向かったところ、床で寝ているシドが発見された。
本人曰く、昨日の夜から研究に熱中していて、一区切りついてふと気持ちが落ち着くと、急に体が重くなり、部屋に戻る気力が出ないまま床で眠ってしまったそう。
まぁ、最低限毛布のようなものを敷いて寝ており、本人の意思で眠りについたので体に重大な悪影響などは出なかったが、真冬の寒さの中、床で寝た影響か、しっかり風邪をひいて熱が出ており、シュージによって部屋まで運ばれて現在に至る。
「でもまぁ、床で寝るのはよろしく無かったですねぇ」
「研究が終わって一息ついたら倦怠感と眠気が凄くて……」
「研究に熱中するのはいいですけど、程々にしましょうね」
「はい、すみません……」
「ちなみに、キリカさんがそれはもうカンカンに怒ってましたよ」
「あー…… それは怖いなぁ……」
「とても心配したみたいですから、しっかり怒られて下さい」
「分かりました……」
「食欲はどうですか?」
「うーん…… 少しなら食べれそうです……」
「分かりました。 何か作ってきますね」
一旦シュージはシドの部屋を後にし、シドの食事を作るために厨房に向かった。
「あっ、シュージさん! シドさんどうでした?」
「ちょっと熱が出てますけど、普通に話せてましたし意識もはっきりしてるので、今日一日しっかり休めば大丈夫だと思いますよ」
「そうですか…… 全くもうっ。 この季節に床で寝るなんて……」
「まぁ、本人も反省してますから」
「……確かに、シュージさんが来てからシドさんは目に見えて健康になりましたし、ちゃんとご飯は食べるようになってますね」
「そうなんですか?」
「前はもっと酷くて、床で寝るなんて結構ありましたし、夏場に廊下で倒れてたりしたこともあったんですよ」
「それは怖いですねぇ」
「その時に比べれば改善されてるだけ良いと言えば良いのかもしれないですね……」
「キリカさんが毎回心配して叱ってくださってるのも効いてると思いますよ」
「なら良いんですけど…… それで、看病は任せちゃっても大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。 キリカさんは仕事もありますし。 僕は掃除とか料理の隙間時間に見に行けますので。 それに、移ると良くないですから」
「それはシュージさんも同じでは?」
「生憎僕、生まれてこの方、風邪を引いたこと無いので、少なくともキリカさんよりは移る心配ないですよ」
「ふふ、頼もしいですね。 じゃあ、よろしくお願いします」
シュージにそう言い残し、キリカは仕事をしにエントランスの方へ歩いていった。
それを見送りつつ、シュージは厨房に入って、まずは玉ねぎを薄く千切りにし、フライパンで軽く塩を振って炒めていく。
玉ねぎが半透明になってきたら、刻んだハムを加えて玉ねぎが透明になるまで更に炒める。
それが済んだら水とコンソメ顆粒を加えてしっかり煮込み、水が軽く沸騰してきたら食べやすいサイズに切った食パンとほうれん草を加えて5分ほど煮込めば、あったか洋風パン粥の完成だ。
早速、そのパン粥と水分補給用の水が入った水差しとコップをお盆に乗せ、シュージはシドの部屋に戻っていった。
「シドさーん、入りますよー」
シドの部屋の扉をノックしながら声をかけ、部屋に入ると、シドは何かの本を読んでいるところだった。
「おや、大丈夫ですか? 本なんて読んで」
「はは…… ちょっと暇で…… 難しい学術書とかじゃないですから大事ですよ……」
「そうですか。 何の本なんです?」
「とある冒険家が書いた旅行記ですね…… 世界の秘境の風景などが文字に起こされてる感じで……」
「面白そうですね」
「文字でも結構想像できますから面白いですよ…… 自分ではあまり行こうとはなりませんが……」
「秘境ともなると中々難しいでしょうねぇ。 あ、ご飯作ってきましたよ」
「ありがとうございます……」
シドはゆっくりと体を起こし、部屋の中にあった椅子に座ると、用意されたパン粥を口に運んで行った。
「ん…… 美味しいです……」
「お粥のパンバージョンですね。 ライスのお粥にするほど弱ってはなさそうだったので、こちらにしました」
パン粥も一応病人食ではあるが、普通の食事とライスのお粥の中間くらいの位置付けだとシュージは思っている。
今回シドは微熱くらいで症状は治っていて、食欲も無いわけではなさそうだったので、多少食べ応えのあるパン粥を作ったという次第だ。
「シュージさんの料理は元気が出ますね……」
「それなら良かったです。 あとはしっかり寝て休めば明日には治ってるんじゃないですかね」
「そうですね…… しっかり休みます……」
その後、食事を摂ったシドは言葉通りしっかりとベッドで眠りにつき、翌日にはいつもと変わらない元気な姿を見せてくれた。
なお、キリカにはこっぴどく今回も叱られ、もう床では寝ないと約束までさせられたとか。
「いえいえ、大丈夫ですよ」
シュージは現在、ベッドで横になるシドの事を看病していた。
というのも、今朝も一番に起きて朝食を作り、皆んなに食べてもらっていたのだが、いつまで経ってもシドが食堂にこないので、部屋に様子を見に行ったところ、そこにはいなかった。
ではこっちだろうとシドがいつもこもっているアイテム製作室に向かったところ、床で寝ているシドが発見された。
本人曰く、昨日の夜から研究に熱中していて、一区切りついてふと気持ちが落ち着くと、急に体が重くなり、部屋に戻る気力が出ないまま床で眠ってしまったそう。
まぁ、最低限毛布のようなものを敷いて寝ており、本人の意思で眠りについたので体に重大な悪影響などは出なかったが、真冬の寒さの中、床で寝た影響か、しっかり風邪をひいて熱が出ており、シュージによって部屋まで運ばれて現在に至る。
「でもまぁ、床で寝るのはよろしく無かったですねぇ」
「研究が終わって一息ついたら倦怠感と眠気が凄くて……」
「研究に熱中するのはいいですけど、程々にしましょうね」
「はい、すみません……」
「ちなみに、キリカさんがそれはもうカンカンに怒ってましたよ」
「あー…… それは怖いなぁ……」
「とても心配したみたいですから、しっかり怒られて下さい」
「分かりました……」
「食欲はどうですか?」
「うーん…… 少しなら食べれそうです……」
「分かりました。 何か作ってきますね」
一旦シュージはシドの部屋を後にし、シドの食事を作るために厨房に向かった。
「あっ、シュージさん! シドさんどうでした?」
「ちょっと熱が出てますけど、普通に話せてましたし意識もはっきりしてるので、今日一日しっかり休めば大丈夫だと思いますよ」
「そうですか…… 全くもうっ。 この季節に床で寝るなんて……」
「まぁ、本人も反省してますから」
「……確かに、シュージさんが来てからシドさんは目に見えて健康になりましたし、ちゃんとご飯は食べるようになってますね」
「そうなんですか?」
「前はもっと酷くて、床で寝るなんて結構ありましたし、夏場に廊下で倒れてたりしたこともあったんですよ」
「それは怖いですねぇ」
「その時に比べれば改善されてるだけ良いと言えば良いのかもしれないですね……」
「キリカさんが毎回心配して叱ってくださってるのも効いてると思いますよ」
「なら良いんですけど…… それで、看病は任せちゃっても大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。 キリカさんは仕事もありますし。 僕は掃除とか料理の隙間時間に見に行けますので。 それに、移ると良くないですから」
「それはシュージさんも同じでは?」
「生憎僕、生まれてこの方、風邪を引いたこと無いので、少なくともキリカさんよりは移る心配ないですよ」
「ふふ、頼もしいですね。 じゃあ、よろしくお願いします」
シュージにそう言い残し、キリカは仕事をしにエントランスの方へ歩いていった。
それを見送りつつ、シュージは厨房に入って、まずは玉ねぎを薄く千切りにし、フライパンで軽く塩を振って炒めていく。
玉ねぎが半透明になってきたら、刻んだハムを加えて玉ねぎが透明になるまで更に炒める。
それが済んだら水とコンソメ顆粒を加えてしっかり煮込み、水が軽く沸騰してきたら食べやすいサイズに切った食パンとほうれん草を加えて5分ほど煮込めば、あったか洋風パン粥の完成だ。
早速、そのパン粥と水分補給用の水が入った水差しとコップをお盆に乗せ、シュージはシドの部屋に戻っていった。
「シドさーん、入りますよー」
シドの部屋の扉をノックしながら声をかけ、部屋に入ると、シドは何かの本を読んでいるところだった。
「おや、大丈夫ですか? 本なんて読んで」
「はは…… ちょっと暇で…… 難しい学術書とかじゃないですから大事ですよ……」
「そうですか。 何の本なんです?」
「とある冒険家が書いた旅行記ですね…… 世界の秘境の風景などが文字に起こされてる感じで……」
「面白そうですね」
「文字でも結構想像できますから面白いですよ…… 自分ではあまり行こうとはなりませんが……」
「秘境ともなると中々難しいでしょうねぇ。 あ、ご飯作ってきましたよ」
「ありがとうございます……」
シドはゆっくりと体を起こし、部屋の中にあった椅子に座ると、用意されたパン粥を口に運んで行った。
「ん…… 美味しいです……」
「お粥のパンバージョンですね。 ライスのお粥にするほど弱ってはなさそうだったので、こちらにしました」
パン粥も一応病人食ではあるが、普通の食事とライスのお粥の中間くらいの位置付けだとシュージは思っている。
今回シドは微熱くらいで症状は治っていて、食欲も無いわけではなさそうだったので、多少食べ応えのあるパン粥を作ったという次第だ。
「シュージさんの料理は元気が出ますね……」
「それなら良かったです。 あとはしっかり寝て休めば明日には治ってるんじゃないですかね」
「そうですね…… しっかり休みます……」
その後、食事を摂ったシドは言葉通りしっかりとベッドで眠りにつき、翌日にはいつもと変わらない元気な姿を見せてくれた。
なお、キリカにはこっぴどく今回も叱られ、もう床では寝ないと約束までさせられたとか。
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