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#171 コロと買い物
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「ママー、見てあれー」
「あら、可愛いわねぇ」
ヤタサの街の市場にて。
今日も今日とて食材の買い出しに来たシュージだったが、いつも以上に目立っていた。
元々2メートル近い高身長に常人の2倍くらいあろうかという肩幅を持つシュージなので、市場を歩けばとても目立つのだが、今日はその頭に小さな仔狼が乗っているのだ。
その姿は、シュージの見た目の厳つさと仔狼の可愛らしさのギャップによって、一周回ってなんだか微笑ましい光景になっていた。
もちろん、シュージも注目されてる理由を自覚しているので、ちょっとだけ恥ずかしさもあるが、元凶であるコロが非常に楽しそうなので、まぁいいかとそのまま市場を練り歩いていった。
「わふー」
「ここが僕達がいる街の市場だよ」
「わふ」
本当はいつも通り1人で行こうかなと思ってたシュージだったが、コロが行きたい! と言わんばかりに頭に飛び乗って来たので、こうして一緒に来たのだ。
「あ、おはようございます」
「おお、シュージか! ん? なんだ、可愛らしいの乗っけてんな?」
それからシュージはいつも世話になってる肉屋に立ち寄ったのだが、当然そこの店主にも今の見た目を突っ込まれた。
「先日からうちのギルドの一員になりました、コロって言います」
「わふ!」
「おお、賢いやつだな。 ほれ、ジャーキーの切れ端あるからやるよ」
「わふー♪」
「はは、ありがとうございます」
売り場の方からひょいっと放られたジャーキーをコロはパクッと口でキャッチし、もぐもぐ美味しそうに食べていった。
その後も立ち寄った店々でコロは大人気で、女性の店員さんに撫でられたり抱っこされたり、何か食べ物をもらったりと沢山構われるのであった。
「わふわふ!」
「大人気だったな、コロ。 良い人達ばかりだろう?」
「わふ!」
沢山構われ、可愛い可愛いと言ってもらえたコロも市場をとても気に入ったようだった。
そんな賑やかな買い物を終えたシュージは、折角ならと街の公園にやって来て、コロを降ろして少し散歩する事にした。
「わふわふ~♪」
すると、コロは勢いよく走り出し、芝生の上をころころと転がったりし始めた。
そうなると、普通なら草やら土やらが付きそうなものだが、コロの体はそういう汚れや水などを弾く不思議な性質があるようで、普通はこうして散歩をしたりしたら足や体を拭いたりしなきゃいけないだろうが、コロにはどうやら不要っぽい。
「コロー」
「わふ?」
「ゾラさんから貰ったおもちゃがあるんだ。 やってみるかい?」
「わふ!」
そう言ってシュージは、収納袋からまずは柔らかい素材で出来たボールを取り出した。
「そーれっ」
「わんわんわんっ!」
そして、シュージがぽーんっと結構な距離放ってみると、コロはぴゅーっと猛スピードで駆け出し、あっという間にボールに追いつくと、しっかり咥えて走って戻ってきた。
「はっはっはっ」
「もう一回か? それっ」
「わふわふー!」
どうやら楽しかったようで、シュージの前に咥えて持ってきたボールをポトリと落とすと、もう一回! とキラキラした瞳でシュージのことを見上げてきた。
なのでシュージも、もう一回ボールを投げてあげた。
「あっ、シュージさん、おはようございます!」
「おや、アンナさん。 おはようございます」
そんなボール遊びが10往復くらい繰り返されたタイミングで、シュージ行きつけの大衆食堂でウェイトレスをしているアンナが声をかけてきた。
手には食材が入った袋が握られており、どうやら先程のシュージ同様、市場で買い物をしていたようだ。
「何してるんですか?」
「少し遊んでました」
「遊んで?」
「あ、ほら、戻ってきましたよ」
「わふー!」
アンナと話していると、ドドドドッと凄まじい勢いでボールを咥えたコロが戻ってきた。
「えっ、可愛いー! 何ですか、この子!」
「先日出会ってウチのギルドの一員になった子です。 名前はコロって言います」
「コロちゃん! 可愛いね~!」
「わふ~」
一目見た瞬間にコロの愛らしさにノックアウトされたアンナは、しゃがんでコロの事をなでなでし始めた。
コロもそれが嬉しいようで、ぴょんぴょん跳ね回ったりころんと転がってお腹を見せたりと、楽しそうにしていた。
「良ければアンナさんもボール投げます?」
「えっ、いいんですか!?」
「もちろんもちろん」
「やった! よし、コロちゃんいくよー! それっ!」
「わふわふっ!」
折角ならとアンナにもボールを渡して、コロのボール遊びに付き合ってもらった。
コロは神獣故かは分からないが、体力が無尽蔵のようで、先ほどシュージと遊んでいた時と変わらないスピードでボールを追いかけていった。
「わふっ!」
「あーん、可愛い~! もう一回ね!」
それから再びコロのボール遊びが再開され、何度も何度も公園を猛スピードで往復していった。
「あの、すみません」
「ん? はい、どうしましたか?」
そうしていると、1人の女性がシュージに声をかけてきた。
「もし良かったら、少しで良いのでこの子にもボール遊びさせてあげてくれませんか?」
そう言う女性の後ろには、隠れるようにしてシュージの事を窺っている男の子がいた。
「もちろん構いませんよ」
「ありがとうございます。 だって、良かったわね」
「はっ!? 気付けばすごい時間経ってる! シュージさん、私は店の準備があるのでこれで!」
「あ、はい。 お気をつけて」
「はーい! コロちゃんまた遊ぼうねー!」
「わふー!」
「コロ、次はこの子がボール投げてくれるって」
「わふっ!? わふ!」
「わっ、可愛い……! じ、じゃあいくねっ。 それっ!」
「わふぅっ!」
それから今度は男の子にボールで遊んでもらえ、嬉しそうに再びコロはボールを追いかけていった。
コロと男の子が遊んでいる間、シュージは男の子の母親とのんびりと話していたが、どうやらこの世界ではペットを飼うという習慣があまりないらしい。
というのも、平民は日々の生活を送るのが手一杯で、餌代などがかかるペットを飼うというのはしたくても出来ないし、飼う余裕がある貴族も、馬などの実用性のある動物を飼う事が多いそうで、中々愛でる目当てで動物を飼うことはないとの事。
なので、小さくてもふもふで、人懐っこく可愛いコロは、普通の人にとってはかなり物珍しいようで、その後も1組目の親子が声をかけた事をきっかけに、周りにいた何組かの親子も子供を遊ばせて欲しいとお願いしてきた。
シュージはもちろんそれを了承し、当のコロも沢山遊んでくれる人が来てくれて、大喜びでその後も公園を走り回っていくのであった。
結局、ちょっとお散歩のくらいのつもりが、午前中いっぱいシュージとコロはその公園で子供達と遊ぶ事となり、シュージもシュージで子供達を肩車したり抱え上げてぐるぐる回ってあげたりして、一躍街の人気者になるシュージとコロなのであった。
「あら、可愛いわねぇ」
ヤタサの街の市場にて。
今日も今日とて食材の買い出しに来たシュージだったが、いつも以上に目立っていた。
元々2メートル近い高身長に常人の2倍くらいあろうかという肩幅を持つシュージなので、市場を歩けばとても目立つのだが、今日はその頭に小さな仔狼が乗っているのだ。
その姿は、シュージの見た目の厳つさと仔狼の可愛らしさのギャップによって、一周回ってなんだか微笑ましい光景になっていた。
もちろん、シュージも注目されてる理由を自覚しているので、ちょっとだけ恥ずかしさもあるが、元凶であるコロが非常に楽しそうなので、まぁいいかとそのまま市場を練り歩いていった。
「わふー」
「ここが僕達がいる街の市場だよ」
「わふ」
本当はいつも通り1人で行こうかなと思ってたシュージだったが、コロが行きたい! と言わんばかりに頭に飛び乗って来たので、こうして一緒に来たのだ。
「あ、おはようございます」
「おお、シュージか! ん? なんだ、可愛らしいの乗っけてんな?」
それからシュージはいつも世話になってる肉屋に立ち寄ったのだが、当然そこの店主にも今の見た目を突っ込まれた。
「先日からうちのギルドの一員になりました、コロって言います」
「わふ!」
「おお、賢いやつだな。 ほれ、ジャーキーの切れ端あるからやるよ」
「わふー♪」
「はは、ありがとうございます」
売り場の方からひょいっと放られたジャーキーをコロはパクッと口でキャッチし、もぐもぐ美味しそうに食べていった。
その後も立ち寄った店々でコロは大人気で、女性の店員さんに撫でられたり抱っこされたり、何か食べ物をもらったりと沢山構われるのであった。
「わふわふ!」
「大人気だったな、コロ。 良い人達ばかりだろう?」
「わふ!」
沢山構われ、可愛い可愛いと言ってもらえたコロも市場をとても気に入ったようだった。
そんな賑やかな買い物を終えたシュージは、折角ならと街の公園にやって来て、コロを降ろして少し散歩する事にした。
「わふわふ~♪」
すると、コロは勢いよく走り出し、芝生の上をころころと転がったりし始めた。
そうなると、普通なら草やら土やらが付きそうなものだが、コロの体はそういう汚れや水などを弾く不思議な性質があるようで、普通はこうして散歩をしたりしたら足や体を拭いたりしなきゃいけないだろうが、コロにはどうやら不要っぽい。
「コロー」
「わふ?」
「ゾラさんから貰ったおもちゃがあるんだ。 やってみるかい?」
「わふ!」
そう言ってシュージは、収納袋からまずは柔らかい素材で出来たボールを取り出した。
「そーれっ」
「わんわんわんっ!」
そして、シュージがぽーんっと結構な距離放ってみると、コロはぴゅーっと猛スピードで駆け出し、あっという間にボールに追いつくと、しっかり咥えて走って戻ってきた。
「はっはっはっ」
「もう一回か? それっ」
「わふわふー!」
どうやら楽しかったようで、シュージの前に咥えて持ってきたボールをポトリと落とすと、もう一回! とキラキラした瞳でシュージのことを見上げてきた。
なのでシュージも、もう一回ボールを投げてあげた。
「あっ、シュージさん、おはようございます!」
「おや、アンナさん。 おはようございます」
そんなボール遊びが10往復くらい繰り返されたタイミングで、シュージ行きつけの大衆食堂でウェイトレスをしているアンナが声をかけてきた。
手には食材が入った袋が握られており、どうやら先程のシュージ同様、市場で買い物をしていたようだ。
「何してるんですか?」
「少し遊んでました」
「遊んで?」
「あ、ほら、戻ってきましたよ」
「わふー!」
アンナと話していると、ドドドドッと凄まじい勢いでボールを咥えたコロが戻ってきた。
「えっ、可愛いー! 何ですか、この子!」
「先日出会ってウチのギルドの一員になった子です。 名前はコロって言います」
「コロちゃん! 可愛いね~!」
「わふ~」
一目見た瞬間にコロの愛らしさにノックアウトされたアンナは、しゃがんでコロの事をなでなでし始めた。
コロもそれが嬉しいようで、ぴょんぴょん跳ね回ったりころんと転がってお腹を見せたりと、楽しそうにしていた。
「良ければアンナさんもボール投げます?」
「えっ、いいんですか!?」
「もちろんもちろん」
「やった! よし、コロちゃんいくよー! それっ!」
「わふわふっ!」
折角ならとアンナにもボールを渡して、コロのボール遊びに付き合ってもらった。
コロは神獣故かは分からないが、体力が無尽蔵のようで、先ほどシュージと遊んでいた時と変わらないスピードでボールを追いかけていった。
「わふっ!」
「あーん、可愛い~! もう一回ね!」
それから再びコロのボール遊びが再開され、何度も何度も公園を猛スピードで往復していった。
「あの、すみません」
「ん? はい、どうしましたか?」
そうしていると、1人の女性がシュージに声をかけてきた。
「もし良かったら、少しで良いのでこの子にもボール遊びさせてあげてくれませんか?」
そう言う女性の後ろには、隠れるようにしてシュージの事を窺っている男の子がいた。
「もちろん構いませんよ」
「ありがとうございます。 だって、良かったわね」
「はっ!? 気付けばすごい時間経ってる! シュージさん、私は店の準備があるのでこれで!」
「あ、はい。 お気をつけて」
「はーい! コロちゃんまた遊ぼうねー!」
「わふー!」
「コロ、次はこの子がボール投げてくれるって」
「わふっ!? わふ!」
「わっ、可愛い……! じ、じゃあいくねっ。 それっ!」
「わふぅっ!」
それから今度は男の子にボールで遊んでもらえ、嬉しそうに再びコロはボールを追いかけていった。
コロと男の子が遊んでいる間、シュージは男の子の母親とのんびりと話していたが、どうやらこの世界ではペットを飼うという習慣があまりないらしい。
というのも、平民は日々の生活を送るのが手一杯で、餌代などがかかるペットを飼うというのはしたくても出来ないし、飼う余裕がある貴族も、馬などの実用性のある動物を飼う事が多いそうで、中々愛でる目当てで動物を飼うことはないとの事。
なので、小さくてもふもふで、人懐っこく可愛いコロは、普通の人にとってはかなり物珍しいようで、その後も1組目の親子が声をかけた事をきっかけに、周りにいた何組かの親子も子供を遊ばせて欲しいとお願いしてきた。
シュージはもちろんそれを了承し、当のコロも沢山遊んでくれる人が来てくれて、大喜びでその後も公園を走り回っていくのであった。
結局、ちょっとお散歩のくらいのつもりが、午前中いっぱいシュージとコロはその公園で子供達と遊ぶ事となり、シュージもシュージで子供達を肩車したり抱え上げてぐるぐる回ってあげたりして、一躍街の人気者になるシュージとコロなのであった。
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