マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 強面、筋骨隆々、非常に強い。でもとっても優しい男が異世界でほのぼの暮らすお話

かむら

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#168 不思議な出会い

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「いやー、結構掘り出し物がありましたね」

「そうだね。 思ったより賑わっていたよ」
 

 獣人国に来て2日目の夜。

 今シュージ達がいる王都の城下町には夜市という夜限定の市場があり、そこでは昼間売り出されていたものが安くなっていたり、逆に夜しか出てない店もあるという事で、ゾラと一緒に少し見て回っていた。

 
 ――――っ。


「うん?」

「シュージ、どうかしたかい?」

「今、何か聞こえませんでしたか?」

「いや、私には何も。 ナイル、ミニャ、何か聞こえたかい?」

「ガァ?」

「にゃ~?」

 
 そんな夜市での買い物も済ませた帰り道。

 シュージは何かに呼ばれたような気がして辺りを見渡したが、辺りは夜市の喧騒が響くのみだった。
 

「気のせいですかね……?」

 ――――っ!

「……! いや、やっぱり聞こえました。 今度は先程よりはっきりと」

「うーん、どうやらシュージだけにしか聞こえてないみたいだね」

「何となく、あっちから呼ばれた気がします。 ゾラさん、行ってみてもいいですか?」

「うん、分かった。 ナイル、一応空から辺りの警戒を。 ミニャはすぐ魔法使えるように準備して」

「ガァ」

「にゃっ!」


 それからシュージはゾラと共に、呼ばれた方へと足を進めていった。

 そして辿り着いたのは、大通りを外れ、住宅街も抜けた王都の端の方。

 夜だからか人気も全くないその場所は、少しひらけた公園のようになっていて、その真ん中に立派な狼のような動物の像が建てられていた。


「この辺りな気がするんですけど……」

「何もないね?」

「にゃ? にゃにゃっ」

「うん? どうしたんだいミニャ?」

「にゃー」


 すると、ミニャが突然走り出し、狼の像の後ろ側に向かった。

 それをシュージとゾラも追いかけていく。
 

「にゃ!」

「えっと…… おや?」


 するとそこには、全体的に白い体毛で、所々の毛先が淡い水色を帯びている、とても綺麗な小型犬サイズの狼が丸くなって眠っていた。


「この子は……?」

「ホワイトウルフ? いや、ちょっと違うな…… 見た感じ、誰かの従魔とかではなさそうだけど」

「……? わふ?」

「あ、目を覚ましましたよ」


 その仔狼は目を覚ますと、ひょこっと立ち上がり、真っ直ぐシュージの方に歩いてきた。


「はっはっはっ」

「おや?」

「何だかシュージに懐いてるね?」


 そのまま仔狼はシュージの足にスリスリと頭や体を擦り付けてきて、撫でて欲しそうに頭を差し出してきた。

 なのでシュージはそれに応え、仔狼の頭を優しく撫でてあげた。


「くぅん」

「可愛いですねぇ。 ゾラさん、この子どうしましょう?」

「うーん、誰かに飼われてる訳でも無さそうなんだよね。 ただ、魔物ともまた違う雰囲気を感じる…… シュージに懐いてるみたいだし、放置するのも可哀想だから、ひとまず連れて帰って保護しようか。 明日にでも衛兵の詰所とかに行って、この子を探してる人がいないか確認しよう」

「分かりました…… おっと!」

「わふっ!」


 そんな話をゾラとしていたら、ぴょーんと仔狼がジャンプしてシュージの体をよじよじ登ると、ポスっと頭の上に乗っかってきた。


「わふー」

「はは、そこがいいのか?」

「わふ!」

「ふふ、では一度帰ろうか」


 とても小さく軽い子なので、そのままの状態でシュージはゾラと共に宿へと帰っていった。



 *



「ただいま戻りましたー」

「おかえり、シュージ…… って、どういう状況、それ?」

「なんか乗ってる!」

「か、可愛いですっ」


 一応正体不明の狼ということで、人目につかないよう宿に戻ると、見習い組の3人が出迎えてくれた。


「ちょっと不思議な出会いをしましてね。 何故だかすごく懐かれたので、ひとまず連れて帰ってきました。 明日、衛兵の詰所で飼い主がいないか聞いてみるつもりです」

「お、シュージ…… って、な、なんだそいつ……?」

「おや、ガルさん」

「シュージ、その頭に乗ってるのは……?」

「さっき出会った仔狼ですね。 ゾラさん曰く、魔物とはちょっと違うそうですが」

「な、なんかそいつから、すげーオーラ感じる……!」

「えっ、そうなんですか?」

「よく分かんねぇけど、逆らえないような気がするっつーか…… 王様に出会ったみてーな感じがする……」

「ふむ? リック達はどうです?」

「いや、普通の狼の子供じゃね?」

「オイラもそう見えるかな?」

「とっても可愛いですっ」

「なんの騒ぎだ?」


 エントランスでわいわい仔狼について話していると、他のメンバーもやって来た。


「えっ、なにその子……?」

「な、なんか凄い存在感ー……!」


 すると、シャロとピュイもガルと同じように、仔狼から何か大きな存在感のようなものを感じ取ったようで、仔狼からちょっと距離を取っていく。


「お前、普通の狼の子供じゃないのかい?」

「わふ?」

「ジル、君は何かこの子について知ってるかい?」

「いや、分からんな。 そもそも、魔物や動物に詳しいゾラが分からないなら、うちのギルドでこいつの事が分かるかもしれないのは、イザベラぐらいだろう」

「それもそうだね」
 

 その後、ホテルの獣人の従業員さんを何人か呼んで、仔狼の事を見せてみたのだが、その人達も仔狼に驚き、ちょっと傅くような素振りを見せた人もいた。


「獣人さんに何か縁があるんですかね?」

「そのようだね。 うーん、この様子だと、普通に街には出れないかな。 騒ぎになっちゃいそうだ」

「誰かに飼われたりもしてないんじゃないか?」

「そ、そいつ飼うとか絶対無理だろ……」

「むしろ私達が飼われる側な気までしてくる……」


 それから色々検証したり、ホテルの支配人だという結構年配の物知りな獣人の人にも聞いてみたのだが、結局仔狼の正体は分からなかった。

 ただ、とりあえず直接見なければ獣人組の近くにいても大丈夫なようなので、一旦シュージの部屋で様子を見る事にした。

 それからホテルの食事を手早く食べて部屋に戻ったシュージは、一応仔狼の手足を濡れタオルで綺麗にし、その流れでシュージの収納袋から食べ物を色々出してみて与えてみたが、特に手作りのビーフジャーキーが気に入ったようで、嬉しそうにガジガジと齧っていた。


「わふ……」

「お、眠そうですねぇ。  僕もひとまず今日は寝ましょうか」


 腹を満たして眠くなった様子の仔狼を見て、シュージも寝ようかなと布団に入ると、モゾモゾとその仔狼もベッドに潜り込んできて、あっという間にシュージの横で眠りについていった。

 そんな仔狼のもふもふとした感触と温かさを感じながら、シュージも眠りにつくのであった。
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